絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻4 ~春日神社(2)


この度の大阪北部震源の地震により被災された皆様にお見舞い申し上げます。
これ以上大きな余震が無いことを、そして一日も早く平穏な日が戻る事を心よりお祈りいたします。


筑波山神社の境内社(厳島神社・日枝神社本殿・春日神社本殿・日枝春日両社拝殿)の装飾彫刻の意味の読み解きにトライするシリーズです。

今までの記事

第1回: 厳島神社(前編・後編)
  豆電球絵解きに挑戦! 筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(前編)
  豆電球絵解きに挑戦!筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(後編)

第2回: 春日神社日枝神社両社拝殿 
  豆電球絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻2 ~春日神社日枝神社両社拝殿

第3回:日枝神社(1)(2)(3)
  豆電球絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(1)
  豆電球絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(2)
  豆電球絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(3)

第4回:春日神社
  豆電球絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻4 ~春日神社(1)

春日神社の2回目。
今回は、春日神社母屋(もや)蟇股彫刻についてです。


(4)-2 春日神社 本殿の3つの蟇股の彫刻

こちらも日枝神社同様、ひさしのように張り出す向拝の奥にあって見えにくいのですが、 母屋の正面にも蟇股が3つあります。
カメラのズームで写真を撮って確認しました。

春日神社の母屋の蟇股の彫刻も、日枝神社同様、鳥の彫刻ですが、日枝神社とは違う種類と鳥と花であるのが確認出来ます。
やはり、向拝の彫刻と異なり、直接風雨や日光に晒されていないためか色鮮やかです。

彫られている鳥の彫刻には、

・冠羽(一重)がある。
・尾が長くで、先が細くなっている。尾羽は帯状で波打つ。
・体の色は、首から背中が緑色、翼(風切り羽)が青。腹と尾は茶色?


の特徴が見られます。

これらの特徴で彫られる鳥は、『山鵲(さんじゃく)』、『錦鶏(きんけい)』、そして『鸞(らん)
が考えられます(文献1,2)。いずれも瑞鳥、霊鳥とされています。

この中で3つ目の『鸞(らん)』は、『鳳凰』にかなり似いているそうで、非常に華やかな色彩と装飾的な尾羽などを持つようです。
が、こちらの春日神社のものは素人目に見てもそこまで華やかではないので、『鸞(らん)』は外して良いと思います。


また鳥の脇に彫られた花は、
・花弁が多弁。
・葉に深い切れ込みがある


という特徴で、前回の日枝神社(3)で見た、芙蓉か牡丹に似ています。

具体的に何の鳥と花が彫られているのか、具体的に写真を見ながら考えていきましょう。


①向かって左の蟇股:


鮮やかに色が残っていますね。
翼の風切り羽が一部青く彩色されているようです。
首~背と翼の大部分は、茶色か緑色のように見えますが、写真からでは判別ができません・・・。

長い尾は、ゆるくウェーブがかかっています。

候補の1つ『錦鶏』の尾は、まっすぐで剣のように表現されるとのことなので、
春日神社の鳥の彫刻は、どうも『錦鶏』ではなさそうです。

残るは『山鵲』ですが、
『山鵲』の尾の表現の特徴は、

・ウェーブがかかった長い尾
・他の数本よりも長い尾羽が2本ある
・尾羽の先にしずく型の模様があることが多い


とのこと(文献1、2)。


他のものよりやや長めの尾羽が2本あります。
※1本極端に短いものは、傷んで折れてしまったものようです。

ただし、『尾羽の先のしずく型の模様』は確認できず。




さて、一緒に彫られている花を見ていきましょう。


花のアップ。
花の蕊(しべ)が表現されていないのと、葉を正面から描いていないので、牡丹か芙蓉か、よくわからないですね・・・。







蕾(つぼみ)のアップ。
文献1によると、牡丹も芙蓉も蕾は丸いのですが、牡丹の場合は『広く短い萼(がく)が蕾を乗せている』のに対し、芙蓉の場合は『細く長い萼が1~3本ほど縦に蕾に張りついている』とのこと。
そうすると、この花は『牡丹』として良さそうです。
※ ちなみに前回紹介した、日枝神社の向拝手挟の彫刻は芙蓉ですが、写真右に見える 上を向いた咲きかけの花のガクは、確かに『細くて長く縦に張りついて』います。






②真ん中の蟇股:


この真ん中の像が一番色鮮やかです。
首から背中が緑色、翼(風切り羽)が青。腹と尾は茶色らしいのが分かります。
腹と尾の『茶色』は、元は『赤色』だった可能性もありますね。
尾は①よりはやや直線的な表現です。









違う角度から。
手前にある向拝の柱がややじゃまをしていますが、長い尾羽があるのが分かります。
翼と尾羽の造形が綺麗ですねハート
筑波山神社境内の彫刻の中で、私が一番好きな彫刻ですハート






③向かって右の蟇股:


建物に近づけず、決まった角度からのズームアップ写真しかとれないのが残念。
でも左の翼など、鮮やかな青色が目を引きます。

また、立体的な造形と、鳥の表情もよくわかります。
なんとなく少々緊迫した表情のような気も?・・・。

尾羽の先の模様は確認出来ませんが、他の特徴から、春日神社の母屋の蟇股の鳥は、やはり山鵲(さんじゃく)として良いのではないでしょうか。

また文献2によると、山鵲は牡丹の花の組み合わせが目立つそうなので、それからしても、鳥は山鵲として良さそうです。


それにしても、日枝神社・春日神社の両社殿の動物の彫刻の中で、現在の色彩が一番美しく、また造形が優美なのが、これら春日神社母屋の3つの蟇股の彫刻だと思います(*^^*)

鳥の翼と長い尾羽のラインと、フリル感たっぷりの多弁の牡丹の花の組み合わせも華やかで素敵ですキラキラ


さて、日枝神社、春日神社の蟇股の彫刻を見てきて気付いたのが、

・向かって左の像:中央(自分の左)を向く
・中央の像:大きく首や体を曲げて、自分の左を向く
・向かって右の像:中央(自分の右)を向く


のパターンでほぼ統一されていることです。
しかし唯一の例外が、日枝神社の向拝中央の蟇股の『三猿』

ここに『三猿』に特別の意味があるように思えてなりません(←つい 深読み^^;)
・・・が、これについては、またの機会に考えてみたいです。


次回は、春日神社の脇障子と、水引虹梁の木鼻、そして向拝手鋏の彫刻についてです。



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【参考文献】

1. 『図説 社寺建築の彫刻 東照宮に彫られた動植物』  高藤晴俊 著 東京美術

2. 『日光東照宮の謎』 高藤晴俊 著 講談社現代新書





  

絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻4 ~春日神社(1)


筑波山神社の境内社(厳島神社・日枝神社本殿・春日神社本殿・日枝春日両社拝殿)の装飾彫刻の意味の読み解きにトライするシリーズ。

今までの記事

第1回: 厳島神社(前編・後編)
  豆電球絵解きに挑戦! 筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(前編)
  豆電球絵解きに挑戦!筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(後編)

第2回: 春日神社日枝神社両社拝殿 
  豆電球絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻2 ~春日神社日枝神社両社拝殿

第3回:日枝神社(1)(2)(3)
  豆電球絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(1)
  豆電球絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(2)
  豆電球 絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(3)



双子のように同じ形のお社がなかよく並んでいる、日枝神社と春日神社。

向かって右が日枝神社で、向かって左、筑波山神社拝殿に近い方が春日神社です。
春日神社本殿も日枝神社本殿同様に『三間社流造』 で、寛永十年(1633年)に建立されたもので、茨城県指定文化財です。

前回までの日枝神社同様、春日神社本殿の彫刻を、3回に分けて見ていきます。

今回は、春日神社本殿の向拝の蟇股彫刻についてです。


(4)-1 春日神社 向拝の3つの蟇股の彫刻

春日神社の向拝の3つの蟇股には、それぞれ『鹿』の彫刻があります。
『鹿』は、春日神社の神様の神使とされているため、選ばれたのでしょう。
これは、厳島神社の向拝蟇股の『蛇』や、お隣の日枝神社の向拝蟇股の『猿』と同じです。


① 向かって左の蟇股の『鹿』


紅葉(モミジ)=楓(カエデ)の葉と一緒に彫られています。

花札にもあるように、『鹿とモミジ(カエデ)』は定番の組み合わせ。
カエデの葉は赤いので、まさしく紅葉(もみじ)。

鹿は体ごと向かって右、中央の方を向いています。






ちなみにこちらの蟇股は、後ろ側からも見ることができます。
後ろ側は全面カエデの葉の彫刻。








② 中央の蟇股の『鹿』


こちらの鹿は体は向かって左の方を向いていますが、首を大きく曲げて、向かって右の方に向けています。
一緒に彫られているのは、やはりカエデ(モミジ)。
良く見ると、赤色以外にも、黄色や緑色だったらしい葉もあるように見えます。

彩色が残っていたら、赤・黄・緑と、あでやかな色遣いだったように思いますキラキラ






③ 向かって右の蟇股の『鹿』


こちらの鹿は体ごと向かって左を向いています。
飛び跳ねているようで、躍動感を感じますねグッド

こちらも楓(かえで)/紅葉(もみじ)が一緒に彫られています。
赤っぽい葉に交じり、こちらも黄色か、もしかしたら緑色だったらしい葉もあるように見えます。


さて文献1によると、鹿の彫刻は一般には『角が生えた雄鹿』を彫るそうです。

さらに春日神社の総本社の奈良の春日大社には、春日の神は白い鹿に乗って常陸国の鹿島神宮からやってきた・・・という伝説が伝わり、大きな角を持った白い鹿に乗った神様の図『鹿島立ち神影図』が所有されています(文献3)。
大きな角があるのですから、大人の雄の鹿です。

しかし、こちらの春日神社の鹿の彫刻は、3体とも角らしいものは見当たりません。
雌の鹿か、角がまだ生えていない子鹿ということですよね。

神使の動物の図像としては、雄鹿だけか、つがい(雄鹿&雌鹿)だったり、日光の猿の彫刻のように母子だとまだ納得できるのですが、こちらの春日神社の彫刻では雄鹿ではなく、雌鹿だけもしくは子鹿だけというのは、何か意図があったのでしょうか?(← つい、深読みしてしまう(^^;))

他の社寺彫刻(特に『鹿』が神使である春日神社や鹿島神社と名付けられたお社)でも、雌鹿のみ、子鹿のみの例があるのでしょうか?
追々調べてみたいと思います。

さて、この三体の鹿の構図は、先に見た日枝神社の本殿の方の蟇股の山鳥の構図に似ています。
山鳥の方は、『つがいに近づく別のオス』みたいな印象がありましたが(←勝手に私がそう見ている^^;)、こちらは、3体とも雌鹿か子鹿なので、ちょっと違うストーリーがありそうな?

①の鹿: 腰を高くし、体の前半分は低くして、これからジャンプしそうな姿勢。
②の鹿: 左の鹿に近づこうした時、後ろから(右から)近づいてきた鹿に気づいて見る。(“ん?何?”という表情)
③の鹿: 跳ねながら近づいてくる。(何か伝えたそう?)

・・・またまた妄想がいろいろ浮かびます♪グッド

次回は、春日神社の本殿の3体の鳥の蟇股彫刻を見ていきます。
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻4 ~春日神社(2)



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【参考文献】

1. 『図説 社寺建築の彫刻 東照宮に彫られた動植物』  高藤晴俊 著 東京美術

2. 『日光東照宮の謎』 高藤晴俊 著 講談社現代新書

3. 『国宝 大神社展』 図録 東京国立博物館・九州国立博物館 編集 NHK・NHKプロモーション発行






  

絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(3)


筑波山神社の境内社(厳島神社・日枝神社本殿・春日神社本殿・日枝春日両社拝殿)の装飾彫刻の意味の読み解きにトライするシリーズ。

今までの記事

第1回: 厳島神社(前編・後編)
  豆電球絵解きに挑戦! 筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(前編)
  豆電球絵解きに挑戦!筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(後編)

第2回: 春日神社日枝神社両社拝殿 
  豆電球絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻2 ~春日神社日枝神社両社拝殿

第3回:日枝神社
  豆電球絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(1)
  豆電球絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(2)


日枝神社の彫刻の3回目は、脇障子と、水引虹梁の木鼻、そして向拝殿鋏みの彫刻を見ていきます。


(3)-3 日枝神社 脇障子

●向かって左の脇障子
と、梅・竹の彫刻


岩のような?うねった場所に尾を立てて立ち、向かって左、お社の方を向いています。
静かに立っていますが、立てた尾と見開いた大きな目に緊張感が・・・と言いたいのですが、目には愛嬌がありますし、口元は笑っているよう?
立てた尾は、ネコの場合は『ゴキゲンな気分』を表すそうですが、同じネコ科のトラはどうなのでしょう?

さて、虎の顔の方にある竹は葉を茂られせていて、彩色も比較的鮮やかに残っています。
『虎と竹』は古来から好まれた組み合わせですね。









彩色が剥げかかっていますが、黄色に黒いラインの虎の模様が分かります。










虎の背後の花は、色が剥げて黒くなってしまっていますが、花の中心部(蕊(しべ))の黄色が鮮やかです。
五弁の丸い花びらの形、、葉は描かれていないころ、そして枝とそれに付く蕾(つぼみ)の様子から、ではないかと思います。

紅梅だったのか白梅だったのか不明ですが、
虎の黄色と竹の緑色ときたら、梅は紅色の紅梅だと、より色が映えて華やかでは思いますハート




●向かって右の脇障子
の彫刻



は緑色の体をしていて、向かって右、お社の方を向いています。
体はうねり、手足は力強く開いていて、躍動感を感じますグッド

この龍の彫刻には、他の彫刻と違って植物らしいものを見当たりません。












龍の頭や上半身の周りには、まるで黒い花(茨城県のマークのバラのような渦巻(^^))がたくさんあるように見えますが、よく見ると渦巻く雲ではないかと思います。

こちらも色が剥げ落ちてしまっているので、白い雲だったか黒い雲だったかは不明です。
黒い雲だと凄みはありますが、ちょっと禍々しいので、多分白い雲だったのではないかと、勝手に想像しています(^^)。








また龍の足元は、緑色ですが、その形から、逆立つ波のようです。
いずれも風雨を司ると考えられている龍にふさわしい背景です。

反対側の脇障子の虎を『静』とすると、こちらの躍動感あふれる龍は『動』
静動のコントラストも面白いですちょき





さて、虎と龍の像は寺社彫刻では一般的のようで、どちらも吉祥文様の上、力強く神仏を守る聖なる獣だからと推察します。


でも!
・・・ということで、ここからは私の妄想になります(笑)ちょき

本シリーズ第1回の「厳島神社」
 → 絵解きに挑戦! 筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(前編)
の例を見てみます。

厳島神社は、方一間のお社で四方にある蟇股の全てに彫刻が施されています。
そして、本殿の背面の蟇股彫刻は『猪』でした。
私はこれは厳島神社の神使『蛇』(正面にある向拝の蟇股の彫刻=『蛇』)を、干支の『巳』に見立てて、『巳=蛇』を守る『裏干支』の『亥=猪』を彫ったのだと思っています。

日枝神社の神使『猿』を干支に見立てると『申』で、その裏干支は、奇しくも『寅=虎』!
そこで脇障子の一方は虎にして、『龍虎』という言葉もあるので対としてもう一方は『龍』にしたのか??

・・・でも、そらならどうして、(厳島神社のように)本殿背面の蟇股を作って、そこ虎を彫らないのか?
(ちなみに、先に見た 春日神社日枝神社両社拝殿 では拝殿の前面と背面に蟇股彫刻があります)
もしくは、脇障子の2つとも虎にしないのか?・・・という疑問は残ります(^^;)

本殿背面の蟇股がないことについては、この後で見ていく、双子のようにそっくりな造りのお隣 春日神社の神使は『鹿』で、干支の動物ではありません。
従って裏干支に該当する動物はいないため、そちらとの兼ね合いもあって、背面の蟇股は作らなかったのか??・・・とも思えますが。

・・・まあ、私の妄想はこのあたりで止めておきましょう♪


(3)-4 日枝神社 水引紅梁の木鼻



本殿 向かって左は、口を閉じた『吽形』











本殿 向かって右は、口を開けた『阿形』



長い鼻が特徴的です。

社寺彫刻で、このような鼻を持つ動物は、
』か『漠(ばく)』があります(文献1,2)

『象』はエレファントの象ですが、『漠』は想像上の生き物で悪夢を食べるとされ、吉祥文様として登場します。
どちらも長い鼻と牙を持つ動物として表現されます。

さて、『象』と『獏』の区別ですが、文献1によると、
『獏』は巻き毛を持ち、目は大きく眼光するどく、前足は獣の足の形とのこと。

ですが、この木鼻の彫刻は、

・巻き毛はない(毛の表現がない)
・垂れた大きな耳
・毛がない
・目が三日月状


以上の特徴は、同じく文献1より『象』の表現に当てはまるので、『』だと考えます。

ただし、こちらの彫刻には、『象』も『獏』も持つはずの 『』は見当たりません。


木鼻の彫刻の口元を見ると、2体とも口元に『牙』の根元らしきものがあるのが分かります。

牙を小さく表現しているのでしょうか?








それとも、もしかすると2体とも牙が折れてしまったのでしょうか??
でも、折れてしまったとしても、1本位残っていても良さそうですが。








(3)-5 日枝神社 向拝手鋏

向拝の庇(ひさし)の下にある、向拝手鋏(たばさみ)という部分。
ここにも彫刻が施されています。


たくさんの花びらがある花の彫刻で、大変華やかです。

花は、牡丹か芙蓉か長春花(薔薇)のいづれかと思われます。

文献1より、葉の形と蕾の形から、長春花ではなさそうで、牡丹か芙蓉のようです。
同書では牡丹の葉は『深く三裂』、  
芙蓉の葉は『浅く五裂』となっています。

この日枝神社の手鋏みの彫刻では、葉は『深く三裂』にも『浅く五裂』にも見えます。
なので、葉だけでは牡丹か芙蓉か、もしくは両方ともあるのか、分りません。



そこで、花をもう一度よく観察すると・・・
蕊(しべ)が尖った円錐形をしています。

これは植物図鑑などで調べると良くわかりますが、芙蓉を含むムクゲ科の花の特徴です。
ボタン科の牡丹の花の蕊の形は全く異なります。

ということで、こちらの彫刻の花は、芙蓉だと考えます。
(豪華な八重咲きなので、酔芙蓉(スイフヨウ)かもしれません笑

でも、葉の形が芙蓉でないようなものも混ざっているのは、どうしてでしょう?

たまたま表現としてそうなったのか、彫師の人が混同していたのか?・・・なんて考えていたら、写真を見た家族から『葉が曲がって、五裂が三裂に見えているのでは?』と言われました。
よく見ると、確かそうかもしれません。
そうすると、葉の形も『浅く五裂』なので、やはり『芙蓉』だとして大丈夫でしょうちょき

3回に分けて日枝神社の装飾彫刻を見てきましたが、本シリーズの最初で見た厳島神社の装飾彫刻(前編後編)と比べると、かなり作風が違うのに気づきます。特に木鼻の彫刻など分かりやすい。

いろんな彫り師が関わっていたのが分かりますね豆電球

次回は、春日神社の彫刻を見ていきます。
 → 絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻4 ~春日神社(1)




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【参考文献】

1. 『図説 社寺建築の彫刻 東照宮に彫られた動植物』  高藤晴俊 著 東京美術

2. 『日光東照宮の謎』 高藤晴俊 著 講談社現代新書





  

絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(2)


筑波山神社の境内社(厳島神社・日枝神社本殿・春日神社本殿・日枝春日両社拝殿)の装飾彫刻の意味の読み解きにトライするシリーズ。

今までの記事

第1回: 厳島神社(前編・後編)
  豆電球絵解きに挑戦! 筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(前編)
  豆電球絵解きに挑戦!筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(後編)

第2回: 春日神社日枝神社両社拝殿 
  豆電球絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻2 ~春日神社日枝神社両社拝殿

第3回:日枝神社
  豆電球絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(1)


前回に引き続き、日枝神社の彫刻です。
今回は、日枝神社の 母屋(もや)の蟇股彫刻を見ていきます。


(3)-2 日枝神社 母屋正面にある3つの蟇股の彫刻

ひさしのように張り出す向拝の奥にあって見えにくいのですが、 母屋(もや)の正面にも蟇股が3つあります。

近づいて見られないので、遠くから、向拝の彫刻(透かし彫り)越しに見ることが出来ますが、私は目が悪いので、カメラのズームで写真を撮って確認しました。

母屋の3つの蟇股には、それぞれ一羽ずつ鳥と、その脇に花の彫刻が確認出来ます。
向拝の猿の彫刻と違って、直接風雨や日光に晒されていないためか色鮮やかで、遠目で見て傷みもあまりないように見えます。

鳥の彫刻は、体の表現の特徴として、

・冠羽はない。
・尾が長めで、先が細くなっている。
・体の色は、全体的に茶色~赤銅色

ということから、『山鳥』ではないかと思います(文献1)。

また鳥の脇に彫られた花は、

・花弁が五弁で、先が細くなっている
・ラッパ状の形
・濃い紅色の花
・花の中心の表現が2通り


という特徴があります。
何の花か後述していきます。


では、具体的に写真を見ていきましょう。

①向かって左の蟇股:


は体ごと、向かって右側(中央の方向)を向いています。
体の色は、茶色~赤銅色のほぼ一色。
これは後述する他の2つの蟇股の鳥と違っています。







この彫刻がある位置は、違う方向2か所から写真を撮ることが出来て、尾の羽の形は先がとがっているのが分かります。模様らしいものは見えません。








こう見ると、かなり立体的に彫られているのが分かります。
肢も、踏ん張るように力強く立っていますね。











足元の花は上記と同じ形状の五弁の花弁で濃い紅色。
花の中心は、小さく黄色っぽい点があります。
葉のエッジにギザギザはなく、楕円のような形で先が細くなるすっきりした形の葉。









同じ足元の花を、違う角度から撮った写真。









こちらは鳥の頭の近くにある花。


ラッパ状の形の花です。








②中央の蟇股:


中央の蟇股の鳥は、体は正面を向きながら、尾を少し広げて、首を大きく、向かって右の方向を向いています。

背や翼は茶色~赤銅色ですが、頭から首、胸にかけては濃紺から濃い紫色に見えます。





違う角度から撮った写真。
躍動感がある像ですね!











足元の花は、上記と同じラッパ状の花で五弁の濃い紅色の花弁。








花の中心にも同じく、小さく黄色っぽい(白っぽい)点があります。

 







③向かって右の蟇股:


こちらの鳥は、体全体を向かって左側(中央の方向)に向けています。

体は翼、背、尾は茶色。翼の先は白っぽい。
胸から腹にかけては②と同じく濃紺か濃い紫色に見えます。






さて花の彫刻ですが、こちらは尾の近くの花。
上記①②の2つの違って、花の中心には蕊(しべ)らしい表現がはっきり見えます。








こちらは頭の近くの花。
こうやってみると、この蟇股の花の彫刻は、他の2つよりも写実的なのが分かります。
明らかに作風というか表現が違います。

それとも違う花なのか、彫り師が違って表現が微妙に違うのか・・・どうなのでしょう?

3つの蟇股の花に共通の花の色、形状、葉の形、そして特にこの一番右の蟇股の花にある蕊(しべ)の表現から、作風は違いますが、どれもツツジではないかと思っています。

でも、どうして表現方法を統一しなかったのか?…妄想が勝手に膨らみます(^m^)


同様に鳥の形についても、色の表現や顔の表現を見ると、今度は一番左①の蟇股の鳥の作風が、色や顔の表情など、他の2つ②③とちょっと違うように感じます。

例えば分かりやすいのが、鳥の顔の比較で、


①向かって左の鳥
ピンぼけ写真で申し訳ありませんが、嘴は閉じているのが分かります。目の周りというか頭半分が白っぽいのは、彩色か、色が剥げ落ちているのかは不明。








②中央の鳥
目力が強いですね!
嘴はやや開き気味。








③向かって右の鳥
横顔で、写真はやや後方から撮ったものですが、こちらも目力は強い感じ。
嘴は開いています。





こう比較すると、①の鳥の顔つきは、②③よりも優しげな感じです。
①の鳥は色も地味で茶色~赤銅色の1色なのでで、②③は色も少なくとも2色で、顔も精悍な感じなので、なのかもしれません???。


なお文献1では、図像的な表現として、山鳥は『目の周りに「杏状」の隈取りがある』そう。この隈取りがどんなものなのか分からないのですが、上の3枚の顔写真では、目の周りの隈取りはよくわかりません。

また、よく似た鳥に雉(キジ)もいますが、同じく文献1によると、雉の場合、図像的には、特に雄は模様と彩色が鮮やかなのと、頭に『耳羽』があるので区別できるよう。

また山鳥の場合は、図像では『全体的に赤銅色で、背、胸、腹に白黒の斑点がある』とのことで、白黒の斑点らしいものも写真では確認出来ません。
しかし、体の形の特徴と、全体的に茶色〜赤銅色なので、私はこれらの鳥の彫刻は『山鳥』ではないかと考えます。


さて、上の写真でも分かるように、これらの3つの鳥の向きは

①向かって左の鳥()   ②中央の鳥()   ③向かって右の鳥(
(※矢印は顔の向き)

①メス・②オスの鳥は つがい で、近づいてきた③別のオス に対して、オス(2)が威嚇しているようにも見えせんか?
(だから、②と③の目力が強く、嘴も鳴いているように開いている?)

・・・妄想が膨らみます♪(^m^)


日枝神社の祭神は大山咋神(オオヤマクイノカミ)。山の神様です。
神使は『猿』で、それは向拝の蟇股に彫られていています(前回の記事参照)。

母屋の蟇股の『鳥』と『花』が、『山鳥』と『山つつじ』だとしたら、やはりご祭神が山の神様だから『山』繋がりの組み合わせなのかなぁ?
・・・と、素人考えで思うのですが、どうなのでしょう??

細かいことですが、考えると興味がつきません♪


さて次回は、日枝神社の蟇股以外の彫刻についてです。
 → 絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(3)



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【参考文献】

1. 『図説 社寺建築の彫刻 東照宮に彫られた動植物』  高藤晴俊 著 東京美術

2. 『日光東照宮の謎』 高藤晴俊 著 講談社現代新書








  

絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(1)


筑波山神社の境内社(厳島神社・日枝神社本殿・春日神社本殿・日枝春日両社拝殿)の装飾彫刻の意味の読み解きにトライするシリーズ。

今までの記事

第1回: 厳島神社(前編・後編)
 豆電球絵解きに挑戦! 筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(前編)
 豆電球絵解きに挑戦!筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(後編)

第2回: 春日神社日枝神社両社拝殿 
 豆電球絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻2 ~春日神社日枝神社両社拝殿


さて、いよいよ春日神社本殿日枝神社本殿です。

双子のように同じ形のお社がなかよく並んでいる、日枝神社と春日神社笑
どちらも『三間社流造』 で、前回紹介した両社拝殿とともに、寛永十年(1633年)に建立されたもので、茨城県指定文化財です


この両拝殿は特に正面側に装飾彫刻が多いので、それぞれ数回に分けて考えていきます。


まずは 向かって右側の日枝神社からです。











(3)-1 日枝神社 向拝の3つの蟇股の彫刻


本殿の正面に庇(ひさし)のように前に屋根が張り出す『向拝』があります。
この向拝の3つの『蟇股』には、それぞれ違う意匠の『猿』の彫刻が彫られています。

『猿』は古くから日枝神社の神様のお使いとされていますので、猿の彫刻があるのですね。
※このシリーズ最初のご紹介した厳島神社の神様のお使いが『蛇』ということで、やはり向拝の蟇股に蛇が彫られています。



① 向かって左の蟇股の『猿』

彫刻の劣化もありますが、加えてカメラの性能も私の腕も悪いので(透し彫りゆえ背後の木々にピントが合ってしまい)、画像が不鮮明なので汗分かりにくいのですが、
猿が一匹向かって左(中央の方向)を向いているようです。

お猿さんは、枝らしいものぶら下がっているようにも見え、躍動感が感じられる気も。

ただし、猿よりもその両側にある植物の方が目立ちますね(^^;)。

向かって右側(猿の左側)にあるのは、根元からウェーブがかった葉が何枚も繁っていて、そこから茎が一本すっと伸びた先に、黄色っぽい実らしいものが固まってついている様子から、『万年青(おもと)の花』(文献1)と思われます。

向かって左側(猿の右側)にある植物も実の様子が似ているので万年青のようにも見えますが、葉の付き方が根元から葉が繁っている右のものとは違って、枝らしいものに葉が付き、枝の先に実がなっています。
表現方法(文献1)から、枇杷(びわ)の実か、楊桃(やまもも)の実のように思うのですが。


-----(参考)-----

ちなみに、こちらは日光東照宮の神厩にある彫刻です。有名な三猿の彫刻の向かって左にある母子の猿の彫刻です(2015年12月撮影)。

背景は造形から唐松だと思いますが、猿の下に繁る実をつけた木は枇杷とのこと(文献2)。

枇杷の葉は、葉のエッジにギザギザ(鋸歯)が彫られるのだそうです(文献1)。
筑波山神社境内の日枝神社の方は、写真からは葉のエッジの形状はよくわかりません。
枝と葉と実の付き方は、日光東照宮・神厩の母子猿の像の植物とちょっと違うような?。

・・・専門家のご意見を伺いたいところです。
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②中央の蟇股の『猿』

猿が三匹、『見ざる、言わざる、聞かざる』の三猿の彫刻です。


向かって左の猿は、口を押さえている 『言わざる』。
中央の猿は、目を覆っている 『見ざる』。
向かって右の猿は、耳を覆っている 『聞かざる』。

左右の蟇股の彫刻と違って黒っぽいモノトーンなのは、もともとそうなのか、それとも退色が進んでいるせい?

植物らしいものは見当たりませんが、猿たちの後ろに二本、うねった枝のような彫刻が見えます。
何か木の枝のようにも見えますが、判別出来ないです・・・泣

雨風に日光に晒されやすいためか、向拝の蟇股の彫刻は傷みと退色が進んでいるのが素人目にも気になります泣
そして特にこの三猿は、この日枝神社の彫刻の代表にも関わらず、こうやってみると他の彫刻より傷みが進んでいるようで心配です汗


-----(参考)----

ちなみに、こちらは日光東照宮の神厩の三猿(2015年12月撮影)。
こうやってみると、三匹の猿の並びも違いますね。

建立された年は、こちらの日枝神社(そして、春日神社、厳島神社、神橋)の方が、日光東照宮より3年ほど早いものですが、どちらも江戸初期の建物。

日光東照宮は改修を何度もしているので、彫刻の色も鮮やかです。
やはり、手をかけないと、傷んでくるのですよね・・・。


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③向かって右の蟇股の『猿』


こちらはまた一匹の猿で、こちらは向かって左(中央の方向)を見ています。
向かって右の下の方には白っぽい丸い実が二つ見えます。








よく見ると実には縦の彫り線があるのが分かります。

実の特徴と、細長い葉の形から、実が成った桃の木だと思われます。
桃もまた、古来から吉祥の意味がある植物ですよね。

丸く湾曲した桃の枝を背に、猿が座っているようです。

また、枝の『丸い』湾曲にも、何か意味がありそうに思うのは、私の考えすぎでしょうかハート

日光東照宮の神厩の、『三猿』を含む8つある猿の彫刻は、それぞれ意味があり、8つそろって一つのストーリーがあるの読めるそうです(文献2)。
筑波山神社(明治以前は、筑波山知足院中禅寺)境内の日枝神社の3つの猿の彫刻も、何かストーリーがあるのでしょうか。
(個人的にはストーリーがあるように感じます・・・。いろいろ想像してみると面白いですね!)


次回は日枝神社の向拝の奥、本殿(正面)に彫られている3つの蟇股の彫刻についてです。
『猿』ではない動物が!
お楽しみに。

絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(2)



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【参考文献】

1. 『図説 社寺建築の彫刻 東照宮に彫られた動植物』  高藤晴俊 著 東京美術

2. 『日光東照宮の謎』 高藤晴俊 著 講談社現代新書















  

プロフィール
かるだ もん
かるだ もん
徒然なるままに、興味のあることを気ままに書いています。好きなことばは「中途半端も、たくさん集まればいっぱい!」(ドラマのセリフ)

地元つくばや茨城の話題を中心に、茨城の食材を使った家庭料理、民俗学もどき、国際交流、旅の話題など、趣味の記事を掲載中。

特に自分の勉強も兼ねて、
★民話・伝説紹介と、それにちなむ土地めぐり
★茨城を中心に、全国の郷土料理と食材(世界の料理も含む)の話題
の話題が多いです。

・ヒッポファミリークラブ(多言語自然習得活動と国際交流)
・観光ボランティア
・郷土食研究会うまかっぺ!茨城



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