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落語『紋三郎稲荷』 の舞台を訪ねて (一)


紋三郎稲荷とは、笠間稲荷の別名。

その笠間稲荷に絡んだ落語があります。
その名もスバリ 『紋三郎稲荷』。

以下、『古典落語大系 第五巻』(文献1)にある 『紋三郎稲荷』 を基に話を見ていきます。

この落語の主人公は、笠間藩牧野家の家臣 山崎平馬。

江戸勤番を命じられたが、風邪を引き寝込んだため、一行より3日遅れて出立するところから始まります。

寒い時期で体調も完全ではなかった平馬は、裏地に狐の毛皮(尻尾付き)を縫い付けた胴着を身につけ、更にその上に背割り羽織を着て、江戸に向かいました。

そして水戸街道に出て、途中、とって(取手:当時は『とって』と呼ばれた)で、渡しに乗って川を越えましたが、天気は時雨てきて北風も寒く、病み上がりには辛い状況。
そこで平馬は、松戸まで駕籠に乗ることにしました。

この駕籠を担ぐ二人の勘違いが第一の面白いところ。
平馬はその勘違いを利用していきます笑

松戸の陣屋に到着すると、駕籠かきから事情を聴いた陣屋当主の勘違い、そして近所を巻き込んでの騒動が第二の面白いところグッド

・・・しかしここで話のあらすじを細かく書くのは、野暮ってもの。

今はYoutubeなどで名人の話芸が聞けますので、是非そちらで、話をご堪能下さい笑

さて、この『紋三郎稲荷』は、紋三郎稲荷こと笠間稲荷のある笠間は、実はほとんど出てきません。
現在の茨城県・千葉県北東部辺りかが舞台の落語です。

落語『紋三郎稲荷』 の舞台を訪ねて (一)
写真は、笠間稲荷の参道から、笠間稲荷の楼門を望む(2021年2月撮影)。

狛犬ならぬ、お狐さまの石像があります。
お狐さまは、神社のご祭神 宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)の眷属でお使いです。

落語『紋三郎稲荷』の主人公 山崎平馬は、この笠間稲荷のある常陸国笠間藩(現在の茨城県笠間市)藩主 牧野氏の家来という設定。

今回、笠間は訪ねませんでしたが、この愉快な落語の聖地巡りということで、主人公の山崎平馬がたどった道に想いを巡らせて、車旅車ですが、回ってみました。

まず1回目の今回は、この話のメインが始まる、とって(取手)の渡しから、利根川を渡り、平馬が途中の茶屋に立ち寄るところまでです。


(1) とって(取手)の渡し

笠間を出て、どこの地点からから水戸街道に合流して歩いてきた山崎平馬は、当時『とって』と呼ばれてたという取手に到着。
そこから利根川で向こう岸まで渡ります。

落語の中では、取手についたのは 『八つ時を過きたあたり』 ということで、午後2時過ぎでしょうか。

江戸時代の頃、利根川を渡るため、街道筋にあたる取手にはいくつか渡し船があったようです(文献2)が、現在は、『小堀(おおほり)の渡し』 が残っています。

『小堀』と書いて『おおほり』と読みますびっくり
難読地名です!

小堀(おおほり) 地区は、大正時代に利根川の改修事業で、茨城県の川向こうの千葉県側に位置することとなり、取手市の飛び地となりました。

落語『紋三郎稲荷』 の舞台を訪ねて (一)
小堀(おおほり)の渡し』は、現在取手市が運営しており、取手市の中心付近の2カ所の乗り場と小堀地区をを繋いています。
(写真は2024年1月撮影)

 詳細:
 ● 取手市HP  小堀の渡し(おおほりのわたし) 
    https://www.city.toride.ibaraki.jp/mizutomidori/bunkakatsudo/kanko/kankomesho/ohorinowatashi.html

 ● 取手観光協会HP  小堀の渡し
   https://www.toride-kankou.net/page/page000009.html


ということで、まずは、 『小堀(おおほり)の渡し』 に乗ってみましたちょき

その体験については、先日書いた記事をご参照ください。
 → 豆電球 利根川の『小堀の渡し』に乗ってみた



(2)駕籠に乗った平馬が立ち寄る茶屋

落語『紋三郎稲荷』の話に戻りましょう。

とって(取手)から舟に乗り川を渡った平馬は、北風が病み上がりの身体に辛いために、ちょうど近づいてきた駕籠に乗ることにします。

落語『紋三郎稲荷』 の舞台を訪ねて (一)
写真は、茨城県側から利根川を渡った所にある、『小堀(おおほり)』地区付近(2024年1月撮影 以下同じ)。
先にも書いたように、茨城県取手市の飛び地です。

よく見ると、写真左奥に、利根川が蛇行していた時の名残の三日月湖である 『古利根沼』 が見えます。
小堀(おおほり)地区は、江戸時代後期は高瀬舟、明治初期は蒸気船通運丸の停泊する河岸として賑わったといいます(文献2)。

取手からの渡し船は複数あったそうです(文献2)。

この小堀(おおほり)地区は、江戸時代の頃はまだ川向こうではなかったので、平馬が渡ってきた場所候補にはなりません。
しかし今に残る渡し船でも行ける地ということで、訪れました。

さて平馬は、八つ時(午後2時)過ぎに取手に到着し、それから舟に乗って利根川を渡ったということで、午後3時過ぎに川向こうに到着し、それから駕籠に乗って出発したと想定。
当時、篭籠は一里(4km)を40~60分で走った走るといいますので、その平均で50分で走ったとして時速4.8kmくらいで走ったことにしましょう。

気前の良い平馬の様子に加え、防寒用の狐の毛皮の尻尾が見えることから、この籠屋が平馬を狐が化けている!!と思い込んでしまいます。

この駕籠屋と平馬のやりとりが、この落語の第一の山場?というか、面白いところちょき

水戸街道で江戸に向かう駕籠の中、駕籠かきの2人が自分をキツネだと勘違いしていることを知った平馬は、いたずら心豆電球を出します。

2人から訊かれるままに、笠間稲荷のお使いのキツネだと答え、途中に立ち寄った茶屋では稲荷寿司ばかり食べて、キツネのフリをします。

立ち寄った茶屋はどの辺りだと想定すると良さそうでしょうか。

当時、街道では、宿場町周辺はもちろんのこと沿道に茶屋があったといいます。

まず取手から我孫子までは(川も含めて?)、約7km。
我孫子宿から小金宿までは約8km。
小金宿から松戸宿までは、約9km。

落語では、どの辺りで茶屋に入ったかは触れられていませんが、まあ、我孫子宿から小金宿の間で茶屋に入ったとするのが自然でしょう。

落語『紋三郎稲荷』 の舞台を訪ねて (一)
我孫子宿の本陣跡。
JR常磐線 我孫子駅南口から南東へ500~600mあたり、道路に面したマンションの入り口付近に、本陣跡地の碑があります。








落語『紋三郎稲荷』 の舞台を訪ねて (一)
本陣跡からほど近い所に、我孫子宿の説明板がありました。

この辺りはほとんど宿場町の雰囲気は残っていないようで、この説明版で当時に想いを巡らすしかないのが残念泣





落語『紋三郎稲荷』 の舞台を訪ねて (一)想定より手前ですが、そこからほど近い交差点のコンビニ(現代の茶屋♪)で、稲荷寿司とお茶を購入して食べましたちょき

落語の主人公の平馬の気分をちょっぴり感じられた・・・かな?(笑)笑

さて、次回は、我孫子宿を出て、小宿宿から、話の終盤で最大の山場の松戸宿を訪ねます車

続きます。

落語『紋三郎稲荷』 の舞台を訪ねて (二)



*****************************
【参考文献】

1. 『古典落語大系 第五巻』 江國茂・大西信行・永井啓夫・矢野誠一・三田純一 編著
  三一書房
   p.156~ 『紋三郎稲荷』

2.『新編 旧水戸街道繁盛記』 山本鉱太郎 崙書房出版
 


【参考サイト】

● 取手市HP  小堀の渡し(おおほりのわたし) 
    https://www.city.toride.ibaraki.jp/mizutomidori/bunkakatsudo/kanko/kankomesho/ohorinowatashi.html

 ● 取手観光協会HP  小堀の渡し
   https://www.toride-kankou.net/page/page000009.html













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