2018年05月19日
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(1)
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(1)
筑波山神社の境内社(厳島神社・日枝神社本殿・春日神社本殿・日枝春日両社拝殿)の装飾彫刻の意味の読み解きにトライするシリーズ。
今までの記事
第1回: 厳島神社(前編・後編)
絵解きに挑戦! 筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(前編)
絵解きに挑戦!筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(後編)
第2回: 春日神社日枝神社両社拝殿
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻2 ~春日神社日枝神社両社拝殿
さて、いよいよ春日神社本殿と日枝神社本殿です。
双子のように同じ形のお社がなかよく並んでいる、日枝神社と春日神社。
どちらも『三間社流造』 で、前回紹介した両社拝殿とともに、寛永十年(1633年)に建立されたもので、茨城県指定文化財です
。
この両拝殿は特に正面側に装飾彫刻が多いので、それぞれ数回に分けて考えていきます。
まずは 向かって右側の日枝神社からです。
(3)-1 日枝神社 向拝の3つの蟇股の彫刻
本殿の正面に庇(ひさし)のように前に屋根が張り出す『向拝』があります。
この向拝の3つの『蟇股』には、それぞれ違う意匠の『猿』の彫刻が彫られています。
『猿』は古くから日枝神社の神様のお使いとされていますので、猿の彫刻があるのですね。
※このシリーズ最初のご紹介した厳島神社の神様のお使いが『蛇』ということで、やはり向拝の蟇股に蛇が彫られています。
① 向かって左の蟇股の『猿』
彫刻の劣化もありますが、加えてカメラの性能も私の腕も悪いので(透し彫りゆえ背後の木々にピントが合ってしまい)、画像が不鮮明なので分かりにくいのですが、
猿が一匹、向かって左(中央の方向)を向いているようです。
お猿さんは、枝らしいものぶら下がっているようにも見え、躍動感が感じられる気も。
ただし、猿よりもその両側にある植物の方が目立ちますね(^^;)。
向かって右側(猿の左側)にあるのは、根元からウェーブがかった葉が何枚も繁っていて、そこから茎が一本すっと伸びた先に、黄色っぽい実らしいものが固まってついている様子から、『万年青(おもと)の花』(文献1)と思われます。
向かって左側(猿の右側)にある植物も実の様子が似ているので万年青のようにも見えますが、葉の付き方が根元から葉が繁っている右のものとは違って、枝らしいものに葉が付き、枝の先に実がなっています。
表現方法(文献1)から、枇杷(びわ)の実か、楊桃(やまもも)の実のように思うのですが。
-----(参考)-----
ちなみに、こちらは日光東照宮の神厩にある彫刻です。有名な三猿の彫刻の向かって左にある母子の猿の彫刻です(2015年12月撮影)。
背景は造形から唐松だと思いますが、猿の下に繁る実をつけた木は枇杷とのこと(文献2)。
枇杷の葉は、葉のエッジにギザギザ(鋸歯)が彫られるのだそうです(文献1)。
筑波山神社境内の日枝神社の方は、写真からは葉のエッジの形状はよくわかりません。
枝と葉と実の付き方は、日光東照宮・神厩の母子猿の像の植物とちょっと違うような?。
・・・専門家のご意見を伺いたいところです。
--------------------------------
②中央の蟇股の『猿』
猿が三匹、『見ざる、言わざる、聞かざる』の三猿の彫刻です。
向かって左の猿は、口を押さえている 『言わざる』。
中央の猿は、目を覆っている 『見ざる』。
向かって右の猿は、耳を覆っている 『聞かざる』。
左右の蟇股の彫刻と違って黒っぽいモノトーンなのは、もともとそうなのか、それとも退色が進んでいるせい?
植物らしいものは見当たりませんが、猿たちの後ろに二本、うねった枝のような彫刻が見えます。
何か木の枝のようにも見えますが、判別出来ないです・・・。
雨風に日光に晒されやすいためか、向拝の蟇股の彫刻は傷みと退色が進んでいるのが素人目にも気になります。
そして特にこの三猿は、この日枝神社の彫刻の代表にも関わらず、こうやってみると他の彫刻より傷みが進んでいるようで心配です
-----(参考)----
ちなみに、こちらは日光東照宮の神厩の三猿(2015年12月撮影)。
こうやってみると、三匹の猿の並びも違いますね。
建立された年は、こちらの日枝神社(そして、春日神社、厳島神社、神橋)の方が、日光東照宮より3年ほど早いものですが、どちらも江戸初期の建物。
日光東照宮は改修を何度もしているので、彫刻の色も鮮やかです。
やはり、手をかけないと、傷んでくるのですよね・・・。
--------------------------------
③向かって右の蟇股の『猿』
こちらはまた一匹の猿で、こちらは向かって左(中央の方向)を見ています。
向かって右の下の方には白っぽい丸い実が二つ見えます。
よく見ると実には縦の彫り線があるのが分かります。
実の特徴と、細長い葉の形から、実が成った桃の木だと思われます。
桃もまた、古来から吉祥の意味がある植物ですよね。
丸く湾曲した桃の枝を背に、猿が座っているようです。
また、枝の『丸い』湾曲にも、何か意味がありそうに思うのは、私の考えすぎでしょうか
日光東照宮の神厩の、『三猿』を含む8つある猿の彫刻は、それぞれ意味があり、8つそろって一つのストーリーがあるの読めるそうです(文献2)。
筑波山神社(明治以前は、筑波山知足院中禅寺)境内の日枝神社の3つの猿の彫刻も、何かストーリーがあるのでしょうか。
(個人的にはストーリーがあるように感じます・・・。いろいろ想像してみると面白いですね!)
次回は日枝神社の向拝の奥、本殿(正面)に彫られている3つの蟇股の彫刻についてです。
『猿』ではない動物が!
お楽しみに。
→ 絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(2)
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【参考文献】
1. 『図説 社寺建築の彫刻 東照宮に彫られた動植物』 高藤晴俊 著 東京美術
2. 『日光東照宮の謎』 高藤晴俊 著 講談社現代新書
筑波山神社の境内社(厳島神社・日枝神社本殿・春日神社本殿・日枝春日両社拝殿)の装飾彫刻の意味の読み解きにトライするシリーズ。
今までの記事
第1回: 厳島神社(前編・後編)
絵解きに挑戦! 筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(前編)
絵解きに挑戦!筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(後編)
第2回: 春日神社日枝神社両社拝殿
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻2 ~春日神社日枝神社両社拝殿
さて、いよいよ春日神社本殿と日枝神社本殿です。
双子のように同じ形のお社がなかよく並んでいる、日枝神社と春日神社。
どちらも『三間社流造』 で、前回紹介した両社拝殿とともに、寛永十年(1633年)に建立されたもので、茨城県指定文化財です
。
この両拝殿は特に正面側に装飾彫刻が多いので、それぞれ数回に分けて考えていきます。
まずは 向かって右側の日枝神社からです。
(3)-1 日枝神社 向拝の3つの蟇股の彫刻
本殿の正面に庇(ひさし)のように前に屋根が張り出す『向拝』があります。
この向拝の3つの『蟇股』には、それぞれ違う意匠の『猿』の彫刻が彫られています。
『猿』は古くから日枝神社の神様のお使いとされていますので、猿の彫刻があるのですね。
※このシリーズ最初のご紹介した厳島神社の神様のお使いが『蛇』ということで、やはり向拝の蟇股に蛇が彫られています。
① 向かって左の蟇股の『猿』
彫刻の劣化もありますが、加えてカメラの性能も私の腕も悪いので(透し彫りゆえ背後の木々にピントが合ってしまい)、画像が不鮮明なので分かりにくいのですが、
猿が一匹、向かって左(中央の方向)を向いているようです。
お猿さんは、枝らしいものぶら下がっているようにも見え、躍動感が感じられる気も。
ただし、猿よりもその両側にある植物の方が目立ちますね(^^;)。
向かって右側(猿の左側)にあるのは、根元からウェーブがかった葉が何枚も繁っていて、そこから茎が一本すっと伸びた先に、黄色っぽい実らしいものが固まってついている様子から、『万年青(おもと)の花』(文献1)と思われます。
向かって左側(猿の右側)にある植物も実の様子が似ているので万年青のようにも見えますが、葉の付き方が根元から葉が繁っている右のものとは違って、枝らしいものに葉が付き、枝の先に実がなっています。
表現方法(文献1)から、枇杷(びわ)の実か、楊桃(やまもも)の実のように思うのですが。
-----(参考)-----
ちなみに、こちらは日光東照宮の神厩にある彫刻です。有名な三猿の彫刻の向かって左にある母子の猿の彫刻です(2015年12月撮影)。
背景は造形から唐松だと思いますが、猿の下に繁る実をつけた木は枇杷とのこと(文献2)。
枇杷の葉は、葉のエッジにギザギザ(鋸歯)が彫られるのだそうです(文献1)。
筑波山神社境内の日枝神社の方は、写真からは葉のエッジの形状はよくわかりません。
枝と葉と実の付き方は、日光東照宮・神厩の母子猿の像の植物とちょっと違うような?。
・・・専門家のご意見を伺いたいところです。
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②中央の蟇股の『猿』
猿が三匹、『見ざる、言わざる、聞かざる』の三猿の彫刻です。
向かって左の猿は、口を押さえている 『言わざる』。
中央の猿は、目を覆っている 『見ざる』。
向かって右の猿は、耳を覆っている 『聞かざる』。
左右の蟇股の彫刻と違って黒っぽいモノトーンなのは、もともとそうなのか、それとも退色が進んでいるせい?
植物らしいものは見当たりませんが、猿たちの後ろに二本、うねった枝のような彫刻が見えます。
何か木の枝のようにも見えますが、判別出来ないです・・・。
雨風に日光に晒されやすいためか、向拝の蟇股の彫刻は傷みと退色が進んでいるのが素人目にも気になります。
そして特にこの三猿は、この日枝神社の彫刻の代表にも関わらず、こうやってみると他の彫刻より傷みが進んでいるようで心配です
-----(参考)----
ちなみに、こちらは日光東照宮の神厩の三猿(2015年12月撮影)。
こうやってみると、三匹の猿の並びも違いますね。
建立された年は、こちらの日枝神社(そして、春日神社、厳島神社、神橋)の方が、日光東照宮より3年ほど早いものですが、どちらも江戸初期の建物。
日光東照宮は改修を何度もしているので、彫刻の色も鮮やかです。
やはり、手をかけないと、傷んでくるのですよね・・・。
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③向かって右の蟇股の『猿』
こちらはまた一匹の猿で、こちらは向かって左(中央の方向)を見ています。
向かって右の下の方には白っぽい丸い実が二つ見えます。
よく見ると実には縦の彫り線があるのが分かります。
実の特徴と、細長い葉の形から、実が成った桃の木だと思われます。
桃もまた、古来から吉祥の意味がある植物ですよね。
丸く湾曲した桃の枝を背に、猿が座っているようです。
また、枝の『丸い』湾曲にも、何か意味がありそうに思うのは、私の考えすぎでしょうか
日光東照宮の神厩の、『三猿』を含む8つある猿の彫刻は、それぞれ意味があり、8つそろって一つのストーリーがあるの読めるそうです(文献2)。
筑波山神社(明治以前は、筑波山知足院中禅寺)境内の日枝神社の3つの猿の彫刻も、何かストーリーがあるのでしょうか。
(個人的にはストーリーがあるように感じます・・・。いろいろ想像してみると面白いですね!)
次回は日枝神社の向拝の奥、本殿(正面)に彫られている3つの蟇股の彫刻についてです。
『猿』ではない動物が!
お楽しみに。
→ 絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(2)
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【参考文献】
1. 『図説 社寺建築の彫刻 東照宮に彫られた動植物』 高藤晴俊 著 東京美術
2. 『日光東照宮の謎』 高藤晴俊 著 講談社現代新書
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