2018年05月23日
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(2)
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(2)
筑波山神社の境内社(厳島神社・日枝神社本殿・春日神社本殿・日枝春日両社拝殿)の装飾彫刻の意味の読み解きにトライするシリーズ。
今までの記事
第1回: 厳島神社(前編・後編)
絵解きに挑戦! 筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(前編)
絵解きに挑戦!筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(後編)
第2回: 春日神社日枝神社両社拝殿
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻2 ~春日神社日枝神社両社拝殿
第3回:日枝神社
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(1)
前回に引き続き、日枝神社の彫刻です。
今回は、日枝神社の 母屋(もや)の蟇股彫刻を見ていきます。
(3)-2 日枝神社 母屋正面にある3つの蟇股の彫刻
ひさしのように張り出す向拝の奥にあって見えにくいのですが、 母屋(もや)の正面にも蟇股が3つあります。
近づいて見られないので、遠くから、向拝の彫刻(透かし彫り)越しに見ることが出来ますが、私は目が悪いので、カメラのズームで写真を撮って確認しました。
母屋の3つの蟇股には、それぞれ一羽ずつ鳥と、その脇に花の彫刻が確認出来ます。
向拝の猿の彫刻と違って、直接風雨や日光に晒されていないためか色鮮やかで、遠目で見て傷みもあまりないように見えます。
鳥の彫刻は、体の表現の特徴として、
・冠羽はない。
・尾が長めで、先が細くなっている。
・体の色は、全体的に茶色~赤銅色
ということから、『山鳥』ではないかと思います(文献1)。
また鳥の脇に彫られた花は、
・花弁が五弁で、先が細くなっている
・ラッパ状の形
・濃い紅色の花
・花の中心の表現が2通り
という特徴があります。
何の花か後述していきます。
では、具体的に写真を見ていきましょう。
①向かって左の蟇股:
鳥
は体ごと、向かって右側(中央の方向)を向いています。
体の色は、茶色~赤銅色のほぼ一色。
これは後述する他の2つの蟇股の鳥と違っています。
この彫刻がある位置は、違う方向2か所から写真を撮ることが出来て、尾の羽の形は先がとがっているのが分かります。模様らしいものは見えません。
こう見ると、かなり立体的に彫られているのが分かります。
肢も、踏ん張るように力強く立っていますね。
足元の花は上記と同じ形状の五弁の花弁で濃い紅色。
花の中心は、小さく黄色っぽい点があります。
葉のエッジにギザギザはなく、楕円のような形で先が細くなるすっきりした形の葉。
同じ足元の花を、違う角度から撮った写真。
こちらは鳥の頭の近くにある花。
ラッパ状の形の花です。
②中央の蟇股:
中央の蟇股の鳥は、体は正面を向きながら、尾を少し広げて、首を大きく、向かって右の方向を向いています。
背や翼は茶色~赤銅色ですが、頭から首、胸にかけては濃紺から濃い紫色に見えます。
違う角度から撮った写真。
躍動感がある像ですね!
足元の花は、上記と同じラッパ状の花で五弁の濃い紅色の花弁。
花の中心にも同じく、小さく黄色っぽい(白っぽい)点があります。
③向かって右の蟇股:
こちらの鳥は、体全体を向かって左側(中央の方向)に向けています。
体は翼、背、尾は茶色。翼の先は白っぽい。
胸から腹にかけては②と同じく濃紺か濃い紫色に見えます。
さて花の彫刻ですが、こちらは尾の近くの花。
上記①②の2つの違って、花の中心には蕊(しべ)らしい表現がはっきり見えます。
こちらは頭の近くの花。
こうやってみると、この蟇股の花の彫刻は、他の2つよりも写実的なのが分かります。
明らかに作風というか表現が違います。
それとも違う花なのか、彫り師が違って表現が微妙に違うのか・・・どうなのでしょう?
3つの蟇股の花に共通の花の色、形状、葉の形、そして特にこの一番右の蟇股の花にある蕊(しべ)の表現から、作風は違いますが、どれもツツジではないかと思っています。
でも、どうして表現方法を統一しなかったのか?…妄想が勝手に膨らみます(^m^)
同様に鳥の形についても、色の表現や顔の表現を見ると、今度は一番左①の蟇股の鳥の作風が、色や顔の表情など、他の2つ②③とちょっと違うように感じます。
例えば分かりやすいのが、鳥の顔の比較で、
①向かって左の鳥
ピンぼけ写真で申し訳ありませんが、嘴は閉じているのが分かります。目の周りというか頭半分が白っぽいのは、彩色か、色が剥げ落ちているのかは不明。
②中央の鳥
目力が強いですね!
嘴はやや開き気味。
③向かって右の鳥
横顔で、写真はやや後方から撮ったものですが、こちらも目力は強い感じ。
嘴は開いています。
こう比較すると、①の鳥の顔つきは、②③よりも優しげな感じです。
①の鳥は色も地味で茶色~赤銅色の1色なので雌で、②③は色も少なくとも2色で、顔も精悍な感じなので、雄なのかもしれません???。
なお文献1では、図像的な表現として、山鳥は『目の周りに「杏状」の隈取りがある』そう。この隈取りがどんなものなのか分からないのですが、上の3枚の顔写真では、目の周りの隈取りはよくわかりません。
また、よく似た鳥に雉(キジ)もいますが、同じく文献1によると、雉の場合、図像的には、特に雄は模様と彩色が鮮やかなのと、頭に『耳羽』があるので区別できるよう。
また山鳥の場合は、図像では『全体的に赤銅色で、背、胸、腹に白黒の斑点がある』とのことで、白黒の斑点らしいものも写真では確認出来ません。
しかし、体の形の特徴と、全体的に茶色〜赤銅色なので、私はこれらの鳥の彫刻は『山鳥』ではないかと考えます。
さて、上の写真でも分かるように、これらの3つの鳥の向きは
①向かって左の鳥(→) ②中央の鳥(→) ③向かって右の鳥(←)
(※矢印は顔の向き)
①メス・②オスの鳥は つがい で、近づいてきた③別のオス に対して、オス(2)が威嚇しているようにも見えせんか?
(だから、②と③の目力が強く、嘴も鳴いているように開いている?)
・・・妄想が膨らみます♪(^m^)
日枝神社の祭神は大山咋神(オオヤマクイノカミ)。山の神様です。
神使は『猿』で、それは向拝の蟇股に彫られていています(前回の記事参照)。
母屋の蟇股の『鳥』と『花』が、『山鳥』と『山つつじ』だとしたら、やはりご祭神が山の神様だから『山』繋がりの組み合わせなのかなぁ?
・・・と、素人考えで思うのですが、どうなのでしょう??
細かいことですが、考えると興味がつきません♪
さて次回は、日枝神社の蟇股以外の彫刻についてです。
→ 絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(3)
***************************************************************************
【参考文献】
1. 『図説 社寺建築の彫刻 東照宮に彫られた動植物』 高藤晴俊 著 東京美術
2. 『日光東照宮の謎』 高藤晴俊 著 講談社現代新書
筑波山神社の境内社(厳島神社・日枝神社本殿・春日神社本殿・日枝春日両社拝殿)の装飾彫刻の意味の読み解きにトライするシリーズ。
今までの記事
第1回: 厳島神社(前編・後編)
絵解きに挑戦! 筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(前編)
絵解きに挑戦!筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(後編)
第2回: 春日神社日枝神社両社拝殿
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻2 ~春日神社日枝神社両社拝殿
第3回:日枝神社
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(1)
前回に引き続き、日枝神社の彫刻です。
今回は、日枝神社の 母屋(もや)の蟇股彫刻を見ていきます。
(3)-2 日枝神社 母屋正面にある3つの蟇股の彫刻
ひさしのように張り出す向拝の奥にあって見えにくいのですが、 母屋(もや)の正面にも蟇股が3つあります。
近づいて見られないので、遠くから、向拝の彫刻(透かし彫り)越しに見ることが出来ますが、私は目が悪いので、カメラのズームで写真を撮って確認しました。
母屋の3つの蟇股には、それぞれ一羽ずつ鳥と、その脇に花の彫刻が確認出来ます。
向拝の猿の彫刻と違って、直接風雨や日光に晒されていないためか色鮮やかで、遠目で見て傷みもあまりないように見えます。
鳥の彫刻は、体の表現の特徴として、
・冠羽はない。
・尾が長めで、先が細くなっている。
・体の色は、全体的に茶色~赤銅色
ということから、『山鳥』ではないかと思います(文献1)。
また鳥の脇に彫られた花は、
・花弁が五弁で、先が細くなっている
・ラッパ状の形
・濃い紅色の花
・花の中心の表現が2通り
という特徴があります。
何の花か後述していきます。
では、具体的に写真を見ていきましょう。
①向かって左の蟇股:
鳥
は体ごと、向かって右側(中央の方向)を向いています。
体の色は、茶色~赤銅色のほぼ一色。
これは後述する他の2つの蟇股の鳥と違っています。
この彫刻がある位置は、違う方向2か所から写真を撮ることが出来て、尾の羽の形は先がとがっているのが分かります。模様らしいものは見えません。
こう見ると、かなり立体的に彫られているのが分かります。
肢も、踏ん張るように力強く立っていますね。
足元の花は上記と同じ形状の五弁の花弁で濃い紅色。
花の中心は、小さく黄色っぽい点があります。
葉のエッジにギザギザはなく、楕円のような形で先が細くなるすっきりした形の葉。
同じ足元の花を、違う角度から撮った写真。
こちらは鳥の頭の近くにある花。
ラッパ状の形の花です。
②中央の蟇股:
中央の蟇股の鳥は、体は正面を向きながら、尾を少し広げて、首を大きく、向かって右の方向を向いています。
背や翼は茶色~赤銅色ですが、頭から首、胸にかけては濃紺から濃い紫色に見えます。
違う角度から撮った写真。
躍動感がある像ですね!
足元の花は、上記と同じラッパ状の花で五弁の濃い紅色の花弁。
花の中心にも同じく、小さく黄色っぽい(白っぽい)点があります。
③向かって右の蟇股:
こちらの鳥は、体全体を向かって左側(中央の方向)に向けています。
体は翼、背、尾は茶色。翼の先は白っぽい。
胸から腹にかけては②と同じく濃紺か濃い紫色に見えます。
さて花の彫刻ですが、こちらは尾の近くの花。
上記①②の2つの違って、花の中心には蕊(しべ)らしい表現がはっきり見えます。
こちらは頭の近くの花。
こうやってみると、この蟇股の花の彫刻は、他の2つよりも写実的なのが分かります。
明らかに作風というか表現が違います。
それとも違う花なのか、彫り師が違って表現が微妙に違うのか・・・どうなのでしょう?
3つの蟇股の花に共通の花の色、形状、葉の形、そして特にこの一番右の蟇股の花にある蕊(しべ)の表現から、作風は違いますが、どれもツツジではないかと思っています。
でも、どうして表現方法を統一しなかったのか?…妄想が勝手に膨らみます(^m^)
同様に鳥の形についても、色の表現や顔の表現を見ると、今度は一番左①の蟇股の鳥の作風が、色や顔の表情など、他の2つ②③とちょっと違うように感じます。
例えば分かりやすいのが、鳥の顔の比較で、
①向かって左の鳥
ピンぼけ写真で申し訳ありませんが、嘴は閉じているのが分かります。目の周りというか頭半分が白っぽいのは、彩色か、色が剥げ落ちているのかは不明。
②中央の鳥
目力が強いですね!
嘴はやや開き気味。
③向かって右の鳥
横顔で、写真はやや後方から撮ったものですが、こちらも目力は強い感じ。
嘴は開いています。
こう比較すると、①の鳥の顔つきは、②③よりも優しげな感じです。
①の鳥は色も地味で茶色~赤銅色の1色なので雌で、②③は色も少なくとも2色で、顔も精悍な感じなので、雄なのかもしれません???。
なお文献1では、図像的な表現として、山鳥は『目の周りに「杏状」の隈取りがある』そう。この隈取りがどんなものなのか分からないのですが、上の3枚の顔写真では、目の周りの隈取りはよくわかりません。
また、よく似た鳥に雉(キジ)もいますが、同じく文献1によると、雉の場合、図像的には、特に雄は模様と彩色が鮮やかなのと、頭に『耳羽』があるので区別できるよう。
また山鳥の場合は、図像では『全体的に赤銅色で、背、胸、腹に白黒の斑点がある』とのことで、白黒の斑点らしいものも写真では確認出来ません。
しかし、体の形の特徴と、全体的に茶色〜赤銅色なので、私はこれらの鳥の彫刻は『山鳥』ではないかと考えます。
さて、上の写真でも分かるように、これらの3つの鳥の向きは
①向かって左の鳥(→) ②中央の鳥(→) ③向かって右の鳥(←)
(※矢印は顔の向き)
①メス・②オスの鳥は つがい で、近づいてきた③別のオス に対して、オス(2)が威嚇しているようにも見えせんか?
(だから、②と③の目力が強く、嘴も鳴いているように開いている?)
・・・妄想が膨らみます♪(^m^)
日枝神社の祭神は大山咋神(オオヤマクイノカミ)。山の神様です。
神使は『猿』で、それは向拝の蟇股に彫られていています(前回の記事参照)。
母屋の蟇股の『鳥』と『花』が、『山鳥』と『山つつじ』だとしたら、やはりご祭神が山の神様だから『山』繋がりの組み合わせなのかなぁ?
・・・と、素人考えで思うのですが、どうなのでしょう??
細かいことですが、考えると興味がつきません♪
さて次回は、日枝神社の蟇股以外の彫刻についてです。
→ 絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(3)
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【参考文献】
1. 『図説 社寺建築の彫刻 東照宮に彫られた動植物』 高藤晴俊 著 東京美術
2. 『日光東照宮の謎』 高藤晴俊 著 講談社現代新書
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