2022年08月25日
幻の繭の形のお菓子 と 現代の繭の形のお菓子
幻の繭の形のお菓子 と 現代の繭の形のお菓子
先に、『茨城3つの養蚕信仰の聖地について』というシリーズで、考察を書いてきました (最新記事:茨城3つの養蚕信仰の聖地について(8) 誰が語り伝えてきたのか:中世神話としての金色姫譚)。
そんな目で見ると、養蚕にちなんだお菓子があることに気がつきました。
それはもう作られなくなってしまった『幻の味』 もありますし、現在 販売されているお菓子・和菓子もあります。
特に、白くて綺麗な形の『繭』をモチーフにしたお菓子も見かけます。
今回は、茨城県内で見つけた 『繭』にちなんだお菓子についてです
。
『幻の味』 と 『現代の味』 の2つに分けてみてきましょう。
(1) 『幻の味』 編
筑波山南麓、現在のつくば市に昔あったという、養蚕にちなんだお菓子です。
文献(筑波山麓地域情報誌 すそみろく 第4号 平成19年6月30日発行)によると、
その昔、蚕影山神社に参詣者が多かったころ、繭をかたどったお菓子や、蚕の食べ物の桑の葉をかたどった
お菓子が作られ、売られていたそうです。
一つは、蚕影山神社入り口の春喜屋さんで売られていた、『繭の形のお菓子』。
もう一つは、神郡の桜井菓子店さんで作られていた、『桑の葉模様のお菓子』。
とのこと。
以下、同誌による平成19年の時の情報です。
① 春喜屋さんの、繭の形のお菓子
春喜屋さんには、そのお菓子を焼くための銅製の方が残っているとのことで、写真も載っています。
いわゆる『やっとこ』のような柄の先の両方が長方形の形になっているのが見えます。
多分この長方形の内側が、繭の形になっていて、その中に材料を入れて、両側を合わせて、炭火でじっくり手作業で焼いたのでしょう。
今の器具で言えば、ワッフルやホットサンドを一つ一つ作る、鉄製のメーカーに近いです。
ただ、形が『繭型』という特殊な形。
作り方は同文献によると、
『もち米を原料に、あるもの(企業秘密)を混ぜて、この型に入れて炭火で焼く』
そうです。
そうすると『ふんわりふっくら繭の形になり』『砂糖をまぶして出来上がり』。
そして、気になるお味は『ほんのり甘くさくさくした味』
とのこと。
美味しそうです!
そして、企業秘密の『あるもの』とは?! 何だろう?
当時は下館の専門職人さんが焼いて、オートバイで卸に来られたそうですが、その職人さんも亡くなり、作れる人がいなくなってしまったとのこと。
熟練の職人技で焼き上げたお菓子だったのでしょう
。
残念・・・
。
② 桜井菓子店さんの、桑の葉模様のお菓子
あんドーナッツで有名な神郡の桜井菓子店さんがその昔に製造していたのが 『桑の葉模様のお菓子』だそうです。
こちらは、『もち米を粉にしたみじん粉に、砂糖と水飴を入れてかため、型で焼いたお菓子』で、
『白いお菓子ですが、桑の葉の部分のみ、緑に彩色したそうです』
とのこと。
それを作った木製の型の写真もあって、丸い形が4つ並ぶ型と、長方形の型が4つ並ぶ型の2つが並んでいます。
同記事では、『型で焼いた』とありますが、木製の型なので、おそらく、もち米の粉を砂糖と水飴で固めて、
その木製の木型でかたどりしたものを焼いて、彩色したのかなと想像します。
『もち米の粉を砂糖と水飴で固めて』ということは、いわゆる求肥 か 大福の生地のようなもの型に入れて、
形を作り、それを軽く焼いた感じでしょうか。
しかし、焼くと『白いお菓子』にはならないと思うので、私は『型で焼いた』ではなくて、『蒸した』か、もしくは『型で抜いた』のではないか?と想像します。
いわゆる『練り切り』みたいなものではないかと。
練り切りは、果物や花をかたどったりして色鮮やかな和菓子
。
木製の型で丸い方は、繭をあらわす練り切りで、四角い方は、桑の葉が浮き彫りになる形で、これを緑に彩色したのではないかと、これまた想像します
。
白一色の丸い練り切り と 緑に彩色された桑の形の練り切りのセット。
爽やかな上に、蚕影山神社の御利益を感じられそうな、養蚕農家さんのハート
をがっちりつかむお土産だったのではないでしょうか
。
でも、どちらも、もう今では食べられない、幻の味。
本当はどんなお菓子だったのか、興味津々。
可能なら、現代に技術をよみがえらせて、また販売されると良いなぁ
と思いますが、なかなか難しいでしょうか…。
でも少なくともイベントなどで是非、幻の味を再現して販売して欲しいです
(2) 現代で楽しめる味
さて、世の中には、現代も繭をイメージするお菓子はあります。

① まずは、以前、当ブログ(茨城3つの養蚕信仰の聖地について(1))でも紹介した、群馬県 富岡名物 『まゆこもり 富岡産シルク入り』
シルクの入った葛湯の素です。
見た目が真っ白い繭の形。
お湯に溶かして頂きますが、干菓子としてこのまま頂いても美味しかったです
。

② 茨城県内では、筑西市の和菓子屋(湖月庵)さんで作られている 『きぬのまゆ玉』
黄身餡をホワイトチョコレートでコーティィングした、ちいさなお饅頭
第27回全国菓子博覧会で、農林水産大臣賞受賞とのこと。

可愛らしい、白いおまんじゅう。
渋いお茶や濃いコーヒーに合うお味。
③ 結城市の和菓子屋(菓子舗 なか川)さんの 『まゆの里』
こちらは、私はまだ購入したことがないのですが、同店のサイトによると、
白あんをホワイトチョコレートでコーティングしているおまんじゅう とのこと。
(おまけ)
なお、結城には、『ゆでまんじゅう』という郷土菓子もあります♪
かなり以前に書いた記事もご参考までに
→ 大人の♪いばらきおとぎ話3~酒にまつわる茨城昔話その2-(2)仏像も思わず飲んでしまう、茨城のお酒!?
④ 桑の実のジャム、ジュース
養蚕に欠かせないのが、蚕が食べる桑ですが、その桑の実は、マルベリーとも呼ばれ、甘酸っぱくて美味しい
。
桑の実は、ポリフェノール、ビタミンC、カルシウム、カリウムが豊富だそうで、加熱加工するジャムや濃縮ジュースだとビタミンCは壊れちゃって期待できませんが、ポリフェノール、カルシウム、カリウム期待できるそうかな♪
養蚕が盛んだった地域は桑が豊富なので、その甘い桑の実を使ったジャムやジュースも作られています。
探すと意外に身近にあると思います
例えば、私は、結城で桑の実のジャムも購入したことがありまし、
桑の実ジュースで作ったサイダーを、長野県上田市の道の駅で購入したことがあります。
・・・ということで、今回は養蚕にちなむお菓子について紹介してみましたが、
私は個人的には、やはり 幻の味
となってしまった、つくば市・蚕影山神社のそばの春喜屋さんで売られていたというお菓子がすごく気になっています。
私は米のお菓子が好きですし、なんといっても、
『ふんわりふっくらして、サクサクした』
お味だったとのこと
。
食べたい!
ところで、職人さんが生地に混ぜてたという、企業秘密の『あるもの』ってなんだろう?と気になります。
(素人考えては、多分、重曹とかじゃないのかなぁ…なんて思うのですが)
餅米粉を使った生地を焼い手作ったようなので、多分、サクサク軽い歯触りの、大きめのあられのようなものではないかな・・・と妄想
。
お餅をワッフル型で焼いた『モッフル』が、外がサクサクで、持ち帰りも出来そうなタイプなので、
蚕の繭をかたどったようなワッフル型みたいなものに、餅を入れて焼くと、そんな感じになりそうでしょうか。
でも1つ1つ手焼きは、手間がかかる上に大変そう
でもそれこそ、職人技のお味だったのでしょうね
。
職人技にはかなわないですが、なんとか家庭用たこ焼きで、近いものは作れないかなぁ?
妄想はふくらみます(^^)
------------------------------
【参考文献】
『筑波山麓地域情報誌 すそみろく 第4号』 平成19年6月30日発行
※ 『筑波山麓地域情報誌 すそみろく』のバックナンバーは
NPOつくば環境フォーラムさんの下記のページで読めます。
https://tef298.sakura.ne.jp/action/pg433.html
先に、『茨城3つの養蚕信仰の聖地について』というシリーズで、考察を書いてきました (最新記事:茨城3つの養蚕信仰の聖地について(8) 誰が語り伝えてきたのか:中世神話としての金色姫譚)。
そんな目で見ると、養蚕にちなんだお菓子があることに気がつきました。
それはもう作られなくなってしまった『幻の味』 もありますし、現在 販売されているお菓子・和菓子もあります。
特に、白くて綺麗な形の『繭』をモチーフにしたお菓子も見かけます。
今回は、茨城県内で見つけた 『繭』にちなんだお菓子についてです

『幻の味』 と 『現代の味』 の2つに分けてみてきましょう。
(1) 『幻の味』 編
筑波山南麓、現在のつくば市に昔あったという、養蚕にちなんだお菓子です。
文献(筑波山麓地域情報誌 すそみろく 第4号 平成19年6月30日発行)によると、
その昔、蚕影山神社に参詣者が多かったころ、繭をかたどったお菓子や、蚕の食べ物の桑の葉をかたどった
お菓子が作られ、売られていたそうです。
一つは、蚕影山神社入り口の春喜屋さんで売られていた、『繭の形のお菓子』。
もう一つは、神郡の桜井菓子店さんで作られていた、『桑の葉模様のお菓子』。
とのこと。
以下、同誌による平成19年の時の情報です。
① 春喜屋さんの、繭の形のお菓子
春喜屋さんには、そのお菓子を焼くための銅製の方が残っているとのことで、写真も載っています。
いわゆる『やっとこ』のような柄の先の両方が長方形の形になっているのが見えます。
多分この長方形の内側が、繭の形になっていて、その中に材料を入れて、両側を合わせて、炭火でじっくり手作業で焼いたのでしょう。
今の器具で言えば、ワッフルやホットサンドを一つ一つ作る、鉄製のメーカーに近いです。
ただ、形が『繭型』という特殊な形。
作り方は同文献によると、
『もち米を原料に、あるもの(企業秘密)を混ぜて、この型に入れて炭火で焼く』
そうです。
そうすると『ふんわりふっくら繭の形になり』『砂糖をまぶして出来上がり』。
そして、気になるお味は『ほんのり甘くさくさくした味』
とのこと。
美味しそうです!

そして、企業秘密の『あるもの』とは?! 何だろう?

当時は下館の専門職人さんが焼いて、オートバイで卸に来られたそうですが、その職人さんも亡くなり、作れる人がいなくなってしまったとのこと。
熟練の職人技で焼き上げたお菓子だったのでしょう

残念・・・

② 桜井菓子店さんの、桑の葉模様のお菓子
あんドーナッツで有名な神郡の桜井菓子店さんがその昔に製造していたのが 『桑の葉模様のお菓子』だそうです。
こちらは、『もち米を粉にしたみじん粉に、砂糖と水飴を入れてかため、型で焼いたお菓子』で、
『白いお菓子ですが、桑の葉の部分のみ、緑に彩色したそうです』
とのこと。
それを作った木製の型の写真もあって、丸い形が4つ並ぶ型と、長方形の型が4つ並ぶ型の2つが並んでいます。
同記事では、『型で焼いた』とありますが、木製の型なので、おそらく、もち米の粉を砂糖と水飴で固めて、
その木製の木型でかたどりしたものを焼いて、彩色したのかなと想像します。
『もち米の粉を砂糖と水飴で固めて』ということは、いわゆる求肥 か 大福の生地のようなもの型に入れて、
形を作り、それを軽く焼いた感じでしょうか。
しかし、焼くと『白いお菓子』にはならないと思うので、私は『型で焼いた』ではなくて、『蒸した』か、もしくは『型で抜いた』のではないか?と想像します。
いわゆる『練り切り』みたいなものではないかと。
練り切りは、果物や花をかたどったりして色鮮やかな和菓子

木製の型で丸い方は、繭をあらわす練り切りで、四角い方は、桑の葉が浮き彫りになる形で、これを緑に彩色したのではないかと、これまた想像します

白一色の丸い練り切り と 緑に彩色された桑の形の練り切りのセット。
爽やかな上に、蚕影山神社の御利益を感じられそうな、養蚕農家さんのハート


でも、どちらも、もう今では食べられない、幻の味。

本当はどんなお菓子だったのか、興味津々。
可能なら、現代に技術をよみがえらせて、また販売されると良いなぁ

でも少なくともイベントなどで是非、幻の味を再現して販売して欲しいです

(2) 現代で楽しめる味
さて、世の中には、現代も繭をイメージするお菓子はあります。

① まずは、以前、当ブログ(茨城3つの養蚕信仰の聖地について(1))でも紹介した、群馬県 富岡名物 『まゆこもり 富岡産シルク入り』
シルクの入った葛湯の素です。
見た目が真っ白い繭の形。
お湯に溶かして頂きますが、干菓子としてこのまま頂いても美味しかったです


② 茨城県内では、筑西市の和菓子屋(湖月庵)さんで作られている 『きぬのまゆ玉』
黄身餡をホワイトチョコレートでコーティィングした、ちいさなお饅頭
第27回全国菓子博覧会で、農林水産大臣賞受賞とのこと。

可愛らしい、白いおまんじゅう。
渋いお茶や濃いコーヒーに合うお味。
③ 結城市の和菓子屋(菓子舗 なか川)さんの 『まゆの里』
こちらは、私はまだ購入したことがないのですが、同店のサイトによると、
白あんをホワイトチョコレートでコーティングしているおまんじゅう とのこと。
(おまけ)
なお、結城には、『ゆでまんじゅう』という郷土菓子もあります♪
かなり以前に書いた記事もご参考までに

→ 大人の♪いばらきおとぎ話3~酒にまつわる茨城昔話その2-(2)仏像も思わず飲んでしまう、茨城のお酒!?
④ 桑の実のジャム、ジュース
養蚕に欠かせないのが、蚕が食べる桑ですが、その桑の実は、マルベリーとも呼ばれ、甘酸っぱくて美味しい

桑の実は、ポリフェノール、ビタミンC、カルシウム、カリウムが豊富だそうで、加熱加工するジャムや濃縮ジュースだとビタミンCは壊れちゃって期待できませんが、ポリフェノール、カルシウム、カリウム期待できるそうかな♪

養蚕が盛んだった地域は桑が豊富なので、その甘い桑の実を使ったジャムやジュースも作られています。
探すと意外に身近にあると思います

例えば、私は、結城で桑の実のジャムも購入したことがありまし、
桑の実ジュースで作ったサイダーを、長野県上田市の道の駅で購入したことがあります。
・・・ということで、今回は養蚕にちなむお菓子について紹介してみましたが、
私は個人的には、やはり 幻の味

私は米のお菓子が好きですし、なんといっても、
『ふんわりふっくらして、サクサクした』
お味だったとのこと

食べたい!

ところで、職人さんが生地に混ぜてたという、企業秘密の『あるもの』ってなんだろう?と気になります。
(素人考えては、多分、重曹とかじゃないのかなぁ…なんて思うのですが)
餅米粉を使った生地を焼い手作ったようなので、多分、サクサク軽い歯触りの、大きめのあられのようなものではないかな・・・と妄想

お餅をワッフル型で焼いた『モッフル』が、外がサクサクで、持ち帰りも出来そうなタイプなので、
蚕の繭をかたどったようなワッフル型みたいなものに、餅を入れて焼くと、そんな感じになりそうでしょうか。
でも1つ1つ手焼きは、手間がかかる上に大変そう

でもそれこそ、職人技のお味だったのでしょうね

職人技にはかなわないですが、なんとか家庭用たこ焼きで、近いものは作れないかなぁ?
妄想はふくらみます(^^)
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【参考文献】
『筑波山麓地域情報誌 すそみろく 第4号』 平成19年6月30日発行
※ 『筑波山麓地域情報誌 すそみろく』のバックナンバーは
NPOつくば環境フォーラムさんの下記のページで読めます。
https://tef298.sakura.ne.jp/action/pg433.html
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