2017年03月29日
茨城の古刹の三重塔~前編~早春の椎尾山薬王院を訪ねて
茨城の古刹の三重塔~前編~ 早春の椎尾山薬王院を訪ねて
茨城県内には3か所の寺院に、三重塔があります。
①つくばみらい市 板橋不動尊(不動院)
三重の塔は、茨城県指定文化財
②桜川市 椎尾山薬王院
三重塔は、茨城県指定文化財
③桜川市 富谷観音(小山寺)
三重塔は国指定重要文化財
しかも関東以北最古級の三重塔とのこと。
板橋不動尊は以前、別の記事で紹介させて頂きました(三重塔以外の話題です)。
ご参考 → 春の布施街道(千葉・柏(布施)~茨城・つくば(谷田部))を行く(2)
そこで、今回は桜川にある二つの三重塔を見るのも含めて、早春の椎尾山薬王院と小山寺(富谷観音)へ参拝に行ってきました。
その前編 椎尾山です。
1200年以上の歴史を持つ古刹。
782年(延暦元年)最仙が開基と伝えます。
※この頃、筑波山系では、徳一と最仙がお寺の『開基』合戦(?)をしていたような・・・。
薬王院には数々の指定文化財があります(文献1、参考ホームページ1、2)
境内から筑波山男体山を望む。
筑波山を四方向から守るという、『筑波四面観音』の一つ、『筑波北面観音』でもある、椎尾山薬王院(文献2)。
山門の脇には、交通安全祈願の巨大な草履と下駄。
山門の表の仁王像は修復中とのことで、この時(2017年3月)は留守中。
一体が修復完了のお知らせが。
山門の裏手には、風神・雷神の木造が安置されていました。
珍しいですよね?!
たまたま、別の参拝者の方に、お寺の若い僧侶の方が説明されている場に出会い、一緒に建築物の説明など訊くことが出来ました。
いろんなことを大変詳しく説明されていて、とても興味深いお話をたくさん聞きました。
薬王院への想いが伝わってくる熱心なご説明。
思わず聞く方も一生懸命になります
その僧侶の方は、東日本大震災の時、最初の揺れで塔を見に行き、二度目の強い揺れ(茨城では2度目の方が強かった)で、「もうこれでこの塔の見納めか・・・」と思うぐらい、三重塔は大きくしなって揺れていたそうです。
しかし見事に持ちこたえ、現在に至っています。
東京スカイツリーの建築にも使われている伝統的な耐震(免振?)構造は、本当にすごいです。
3月中旬に行きましたが、山影で気温が低いためか、咲き始めの紅梅と、三重塔。
1703年(宝永元年)建造。
この塔を建立した 棟梁 桜井瀬左ヱ門安信は、その8年後、成田山新勝寺の三重塔を完成させたとのこと(桜川市教育委員会の説明板より)。
三重塔の彫刻の数々。
お寺の方の説明があると、見どころやその素晴らしさ、面白さがダイレクトに分かります。
説明頂いて、『そうなんだ!』『なるほど!』と勉強になることの多いこと。
たとえば塔の中間階の四面それぞれに彫られている赤い彩色の邪鬼の彫刻。
邪鬼は、よく四天王像なので、脚で踏まれていたりする鬼です。
その彫刻が塔の中段に四面とも彫られていて、しかも4面とも違うデザインと表情なのです!
建物の中段で建物を支える『苦役』を強いられている邪鬼達ですが、その表情はちょっとユーモラス。
震災の大きな揺れを、この邪鬼達も堪えて塔を支えたのですね
県指定文化財の三重塔はもちろん、桜川市指定文化財の本堂と、その中の彩色画の数々も迫力あります
本堂の建物の外を飾る、精緻な彫刻群。
仏教の説話や中国の説話を元にしてるのかな?
屋根の庇を支える部位にも精緻な彫刻が。
本尊は薬師如来なので、古くから病気平癒・健康祈願の信仰が厚い薬王院。
本堂の中は時を経た絵画が迎えてくれます。
特に天井の龍の絵は、日光東照宮の有名な鳴き龍を彷彿させる力強さ。
年代を感じさせる大きな奉納絵馬もたくさん。
後で知ったのですが、算額も2枚あるとのこと。気付かなかった
本堂の中には、こんな巨大な眼鏡も。
ここをくぐって、眼病平癒祈願
・・・最近、益々目が悪くなってきていますから、結構真剣にくぐります。
鐘も突けます。
山間に響く鐘の音がまたしみじみと良い!
現在の筑波山神社の敷地にあった、知足院中禅寺の建物の数々は、明治の廃仏毀釈で多くが壊され、現在はご神橋、隋神門、厳島神社、春日神社、日枝神社の建物を残すのみです。
※なお鐘楼は、北条の慶龍寺(泉の子育観音)に移築され現在に至っています。
それに比べ、こちらの椎尾山薬王院は、幸いにも、三重塔を始め本堂も残っていて、今も深山の雰囲気の中で、凛とした佇まいで建っています。
私は一般的な日本人で神社でもお寺でも(教会に行ったら教会でも)手を合わす人間ですが、現代の私たちから見ても、明治の廃仏毀釈は愚かなことだったとつくづく思います。
壊されなかったからこそ、後世まで文化財として、歴史と文化・芸術を伝えられるのですから。
筑波山の男体山の北側にある椎尾山。
ここに素晴らしい聖地があると感じました。
また来たいです。
特に紅葉の時は素晴らしいと聞きますので、今度は是非とも秋に訪れたいです♪
もっと知られて良い古刹ですが、道路が狭いのが難点でしょうか・・・。
ご神木。
スダジイでしょうか。
後編に続きます。
→ 茨城の古刹の三重塔~後篇~ 早春の富谷観音(小山寺)を訪ねて
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【参考文献】
1.『茨城県の歴史散歩』 茨城県地域史研究会編 山川出版社(2006年発行)
2.茨城県立歴史館 企画展図録『特別展 筑波山―神と仏の御座す山―』
【参考ホームページ】
1.桜川市ホームページ
http://www.city.sakuragawa.lg.jp/page/page000452.html
2.桜川市観光協会ホームページ
http://www.kankou-sakuragawa.jp/page/page000063.html
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茨城県内には3か所の寺院に、三重塔があります。
①つくばみらい市 板橋不動尊(不動院)
三重の塔は、茨城県指定文化財
②桜川市 椎尾山薬王院
三重塔は、茨城県指定文化財
③桜川市 富谷観音(小山寺)
三重塔は国指定重要文化財
しかも関東以北最古級の三重塔とのこと。
板橋不動尊は以前、別の記事で紹介させて頂きました(三重塔以外の話題です)。
ご参考 → 春の布施街道(千葉・柏(布施)~茨城・つくば(谷田部))を行く(2)
そこで、今回は桜川にある二つの三重塔を見るのも含めて、早春の椎尾山薬王院と小山寺(富谷観音)へ参拝に行ってきました。
その前編 椎尾山です。
1200年以上の歴史を持つ古刹。
782年(延暦元年)最仙が開基と伝えます。
※この頃、筑波山系では、徳一と最仙がお寺の『開基』合戦(?)をしていたような・・・。
薬王院には数々の指定文化財があります(文献1、参考ホームページ1、2)
境内から筑波山男体山を望む。
筑波山を四方向から守るという、『筑波四面観音』の一つ、『筑波北面観音』でもある、椎尾山薬王院(文献2)。
山門の脇には、交通安全祈願の巨大な草履と下駄。
山門の表の仁王像は修復中とのことで、この時(2017年3月)は留守中。
一体が修復完了のお知らせが。
山門の裏手には、風神・雷神の木造が安置されていました。
珍しいですよね?!
たまたま、別の参拝者の方に、お寺の若い僧侶の方が説明されている場に出会い、一緒に建築物の説明など訊くことが出来ました。
いろんなことを大変詳しく説明されていて、とても興味深いお話をたくさん聞きました。
薬王院への想いが伝わってくる熱心なご説明。
思わず聞く方も一生懸命になります
その僧侶の方は、東日本大震災の時、最初の揺れで塔を見に行き、二度目の強い揺れ(茨城では2度目の方が強かった)で、「もうこれでこの塔の見納めか・・・」と思うぐらい、三重塔は大きくしなって揺れていたそうです。
しかし見事に持ちこたえ、現在に至っています。
東京スカイツリーの建築にも使われている伝統的な耐震(免振?)構造は、本当にすごいです。
3月中旬に行きましたが、山影で気温が低いためか、咲き始めの紅梅と、三重塔。
1703年(宝永元年)建造。
この塔を建立した 棟梁 桜井瀬左ヱ門安信は、その8年後、成田山新勝寺の三重塔を完成させたとのこと(桜川市教育委員会の説明板より)。
三重塔の彫刻の数々。
お寺の方の説明があると、見どころやその素晴らしさ、面白さがダイレクトに分かります。
説明頂いて、『そうなんだ!』『なるほど!』と勉強になることの多いこと。
たとえば塔の中間階の四面それぞれに彫られている赤い彩色の邪鬼の彫刻。
邪鬼は、よく四天王像なので、脚で踏まれていたりする鬼です。
その彫刻が塔の中段に四面とも彫られていて、しかも4面とも違うデザインと表情なのです!
建物の中段で建物を支える『苦役』を強いられている邪鬼達ですが、その表情はちょっとユーモラス。
震災の大きな揺れを、この邪鬼達も堪えて塔を支えたのですね
県指定文化財の三重塔はもちろん、桜川市指定文化財の本堂と、その中の彩色画の数々も迫力あります
本堂の建物の外を飾る、精緻な彫刻群。
仏教の説話や中国の説話を元にしてるのかな?
屋根の庇を支える部位にも精緻な彫刻が。
本尊は薬師如来なので、古くから病気平癒・健康祈願の信仰が厚い薬王院。
本堂の中は時を経た絵画が迎えてくれます。
特に天井の龍の絵は、日光東照宮の有名な鳴き龍を彷彿させる力強さ。
年代を感じさせる大きな奉納絵馬もたくさん。
後で知ったのですが、算額も2枚あるとのこと。気付かなかった
本堂の中には、こんな巨大な眼鏡も。
ここをくぐって、眼病平癒祈願
・・・最近、益々目が悪くなってきていますから、結構真剣にくぐります。
鐘も突けます。
山間に響く鐘の音がまたしみじみと良い!
現在の筑波山神社の敷地にあった、知足院中禅寺の建物の数々は、明治の廃仏毀釈で多くが壊され、現在はご神橋、隋神門、厳島神社、春日神社、日枝神社の建物を残すのみです。
※なお鐘楼は、北条の慶龍寺(泉の子育観音)に移築され現在に至っています。
それに比べ、こちらの椎尾山薬王院は、幸いにも、三重塔を始め本堂も残っていて、今も深山の雰囲気の中で、凛とした佇まいで建っています。
私は一般的な日本人で神社でもお寺でも(教会に行ったら教会でも)手を合わす人間ですが、現代の私たちから見ても、明治の廃仏毀釈は愚かなことだったとつくづく思います。
壊されなかったからこそ、後世まで文化財として、歴史と文化・芸術を伝えられるのですから。
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また来たいです。
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【参考文献】
1.『茨城県の歴史散歩』 茨城県地域史研究会編 山川出版社(2006年発行)
2.茨城県立歴史館 企画展図録『特別展 筑波山―神と仏の御座す山―』
【参考ホームページ】
1.桜川市ホームページ
http://www.city.sakuragawa.lg.jp/page/page000452.html
2.桜川市観光協会ホームページ
http://www.kankou-sakuragawa.jp/page/page000063.html
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Posted by かるだ もん at 20:06│Comments(0)│地域・お出かけ
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