2016年07月07日
信仰とジオの意外な関係(1) ~つくばみらい 石饅頭~
信仰とジオの意外な関係(1) ~つくばみらい 石饅頭~
※FM84.2MHzラヂオつくば「つくばね自由研究クラブ」(毎週金曜夜21:30-45放送)で、
2016年6月17日放送 した内容を再構成しております。
筑波山地域もジオパーク選定に向けて、リベンジの夏です。
そこで、筑波山地域ジオパーク構想 勝手に応援企画!
皆さんのお住まいの近所の神社やお寺に、不思議なお供えや「宝物(ほうもつ)」はありませんか?
そんな不思議なお供え、「宝物(ほうもつ)」と、
人が住む以前の土地の様子との、面白い関係
「ジオ」と「昔からの信仰」の意外な関係
について、3回に分けて、探っていこうと思います。
ジオ的視点で見ると、お住まいの場所の景色が、ちょっと変わって見えてくるかもしれません♪
(1) つくばみらい(旧伊奈町) 石饅頭
※つくばみらい市は、筑波山系に隣接していないので、正確には筑波山地域ジオパーク構想に関わる自治体ではないようですが、
筑波山~霞ヶ浦一帯の土地ということでは同じだと考え、
また大変興味深い伝承が伝わるので、最初に取り上げました。
●足高(あだか)の観音様と呼ばれる、足高地区の千住院付近に伝わるお話です。
(千住院は、常陸西国三十三観音の、第十九番札所)
先日「日本伝説集」(文献1)という本を古本で見つけて、買って読んでいたら、
いきなり次の一文が目に飛び込んできました。
足高の石饅頭
上記の本はオリジナルは大正時代に編纂された書籍で、当時の東京朝日新聞で投稿を募集して集まった全国の伝説集です。
そこでは「茨城県筑波郡久賀村大字足高」にある「観音様」となっています。
現在のつくばみらい市(旧 伊奈町)足高の千住院かと思います。
その足高では、近くの崖から出土する
『石饅頭』
をお供えする風習があるとの記事。
そして、その『石饅頭』は、モナカの様に薄くて壊れやすく、崖の土の中から出てくるという謎のものらしい。
何なのでしょう、それは!
まずはここの足高に伝わる、今も出てくるという、謎の「石饅頭」のお話です。
【大まかなあらすじ】
昔、強欲な饅頭屋のおじいさんが、足高の観音様の門先で饅頭を売っていました。
通りがかった旅の僧が饅頭を1つ所望しましたが、このおじいさんは「これは石の饅頭なので食べられない」と渡さなかったそうです。
そこでその旅の僧は「それなら本当に石の饅頭にしてやろう」と言って立ち去ったところ、そのおじいさんが作る饅頭は全部石になってしまい、饅頭屋はつぶれてしまいました。
その旅の僧は弘法大師でした。
そして、今 地面から出てくるのは、その石になった饅頭なので、それを近くの観音様にお供えしています。
全国に分布する、いわゆる『石芋』伝説と呼ばれる、弘法大師伝説の類型の1つです。
こちらでは、『石芋』の代わりに『石饅頭』として、話が伝わっているようです。
そして、足高の観音様付近の崖からは、その『石饅頭』なるものが出てくると、昔話では語られています。
●本当に、『石饅頭』はあるのか!? あるとしたら、どんなものなのか!?
で、実際に行って、「石饅頭」がお供えされているのが見られたらラッキーということで、
実際に行ってみました。
つくばみらい市 千住院(常陸西国三十三観音の 十九番札所)
朱塗りの本殿が綺麗なお寺さんです。
残念ながら、「石饅頭」らしいお供えは見られず。
もう出てこないのか、そういった風習は廃れてしまったのか・・・。
残念・・・。
でもただでは起きないぞっと。
●この「石饅頭」、正体は?
※FM84.2MHzラヂオつくば「つくばね自由研究クラブ」(毎週金曜夜21:30-45放送)で、
2016年6月17日放送 した内容を再構成しております。
筑波山地域もジオパーク選定に向けて、リベンジの夏です。
そこで、筑波山地域ジオパーク構想 勝手に応援企画!
皆さんのお住まいの近所の神社やお寺に、不思議なお供えや「宝物(ほうもつ)」はありませんか?
そんな不思議なお供え、「宝物(ほうもつ)」と、
人が住む以前の土地の様子との、面白い関係
「ジオ」と「昔からの信仰」の意外な関係
について、3回に分けて、探っていこうと思います。
ジオ的視点で見ると、お住まいの場所の景色が、ちょっと変わって見えてくるかもしれません♪
(1) つくばみらい(旧伊奈町) 石饅頭
※つくばみらい市は、筑波山系に隣接していないので、正確には筑波山地域ジオパーク構想に関わる自治体ではないようですが、
筑波山~霞ヶ浦一帯の土地ということでは同じだと考え、
また大変興味深い伝承が伝わるので、最初に取り上げました。
●足高(あだか)の観音様と呼ばれる、足高地区の千住院付近に伝わるお話です。
(千住院は、常陸西国三十三観音の、第十九番札所)
先日「日本伝説集」(文献1)という本を古本で見つけて、買って読んでいたら、
いきなり次の一文が目に飛び込んできました。
足高の石饅頭
上記の本はオリジナルは大正時代に編纂された書籍で、当時の東京朝日新聞で投稿を募集して集まった全国の伝説集です。
そこでは「茨城県筑波郡久賀村大字足高」にある「観音様」となっています。
現在のつくばみらい市(旧 伊奈町)足高の千住院かと思います。
その足高では、近くの崖から出土する
『石饅頭』
をお供えする風習があるとの記事。
そして、その『石饅頭』は、モナカの様に薄くて壊れやすく、崖の土の中から出てくるという謎のものらしい。
何なのでしょう、それは!
まずはここの足高に伝わる、今も出てくるという、謎の「石饅頭」のお話です。
【大まかなあらすじ】
昔、強欲な饅頭屋のおじいさんが、足高の観音様の門先で饅頭を売っていました。
通りがかった旅の僧が饅頭を1つ所望しましたが、このおじいさんは「これは石の饅頭なので食べられない」と渡さなかったそうです。
そこでその旅の僧は「それなら本当に石の饅頭にしてやろう」と言って立ち去ったところ、そのおじいさんが作る饅頭は全部石になってしまい、饅頭屋はつぶれてしまいました。
その旅の僧は弘法大師でした。
そして、今 地面から出てくるのは、その石になった饅頭なので、それを近くの観音様にお供えしています。
全国に分布する、いわゆる『石芋』伝説と呼ばれる、弘法大師伝説の類型の1つです。
こちらでは、『石芋』の代わりに『石饅頭』として、話が伝わっているようです。
そして、足高の観音様付近の崖からは、その『石饅頭』なるものが出てくると、昔話では語られています。
●本当に、『石饅頭』はあるのか!? あるとしたら、どんなものなのか!?
で、実際に行って、「石饅頭」がお供えされているのが見られたらラッキーということで、
実際に行ってみました。
つくばみらい市 千住院(常陸西国三十三観音の 十九番札所)
朱塗りの本殿が綺麗なお寺さんです。
残念ながら、「石饅頭」らしいお供えは見られず。
もう出てこないのか、そういった風習は廃れてしまったのか・・・。
残念・・・。
でもただでは起きないぞっと。
●この「石饅頭」、正体は?
文献2(伊奈の歴史第十号(終刊号))を図書館で読んだところ、なんと「石饅頭」の話題が。
その名も「カシパンウニ」と呼ばれるウニの仲間の化石だそうです。
(参考文献:伊奈の歴史第十号(終刊号))
近くの神社の崖で採取したカシパンウニの化石の写真もありました。
カシパンウニとは、ウニの仲間なのですが、寿司ネタなどの食用になるタイプと違い、外側に短い棘が生えていて、平べったく薄い殻をもつウニです。
タコノマクラと呼ばれるウニも同じ仲間のようです。
図鑑を見ると、殻の厚さは薄くて、殻の上には、5枚の花弁のような模様があります。
確かに『饅頭』の形。
そして化石になると『モナカのように壊れやすい』のですね。
納得!
●なぜ、海から遠いつくばみらいの崖に?
では、なぜ海から離れたつくばみらい市で、ウニの化石が見つかるのでしょうか?
今から12万年~13万年前は、関東平野の広い部分は、浅い海だったそうです。
この時代に堆積した泥や砂の層が、「木下(きおろし)層」と呼ばれる地層で、
バカガイなどの二枚貝やカシパンウニの化石が多いそうなのです。(参考:千葉県HPより)
この木下層が見える崖は、茨城県下にもいくつかあるようで、
行方市やかすみがうら市などの霞ヶ浦沿岸や、内陸の稲敷台地、鹿島台地、常総台地の端の崖でも見られる場所があるそうです。
つくばみらい市の「石饅頭」も、そういった木下層が路頭していて、化石がすぐに取れる場所なのでしょう。
文献2で「カシパンウニ」が採取出来たとういう、
千住院の近くの八幡神社にも行ってみました。
八幡神社でもそれらしいものはありませんでしたが、千住院も八幡神社も、小高い所にあります。
この辺り一帯の微小高地の崖から、石饅頭=カシパンウニ類の化石 が出てくるのでしょう。
写真は八幡神社の参道から参道脇の崖を望む。
このあたりの崖を作っている地層(の一部?)が、木下層なのでしょうか。
古代は海の底だった場所も、今は田んぼの稲が青々と♪
小高い丘も、大昔は貝やウニがたくさん住んでいた海の底だったのですね。
●カシパンウニの化石を見たい時は、茨城県自然博物館へGO!
茨城県自然博物館で、阿見町で採取されたカシパンウニの化石が展示されているとの情報を、同館の方からご教示頂きました。
(ここでの掲載はしませんが、化石のお写真もメールで添付して下さいました!ありがとうございました)
観たい方は、是非、茨城県自然博物館へ行ってご覧になって下さい♪
もちろん、カシパンウニ以外の化石もたくさんありますよ!
ミュージアムパーク 茨城県自然博物館
https://www.nat.museum.ibk.ed.jp/
とうことで、第1回は、つくばみらい市に伝わる謎の
「石饅頭」
に迫りました。
次回に続きます。
→ 信仰とジオの意外な関係(2) ~土浦 カシャ(雷神)の爪・龍の爪~
----------------------------------------------------------------------------------------
【参考文献】
1.『日本伝説集』 高木敏雄 著 ちくま学芸文庫
2.伊奈の歴史第十号(終刊号)
3.『伊奈町の歴史散歩』 伊奈町社会教育講座・歴史教室編 筑波書林
4.『ヤマケイポケットガイド16 海辺の生き物』 小林安雅著 山と渓谷社
【参考サイト】
千葉県/千葉県教育委員会HP 『木下貝層』
https://www.pref.chiba.lg.jp/kyouiku/bunkazai/bunkazai/n431-019.html
その名も「カシパンウニ」と呼ばれるウニの仲間の化石だそうです。
(参考文献:伊奈の歴史第十号(終刊号))
近くの神社の崖で採取したカシパンウニの化石の写真もありました。
カシパンウニとは、ウニの仲間なのですが、寿司ネタなどの食用になるタイプと違い、外側に短い棘が生えていて、平べったく薄い殻をもつウニです。
タコノマクラと呼ばれるウニも同じ仲間のようです。
図鑑を見ると、殻の厚さは薄くて、殻の上には、5枚の花弁のような模様があります。
確かに『饅頭』の形。
そして化石になると『モナカのように壊れやすい』のですね。
納得!
●なぜ、海から遠いつくばみらいの崖に?
では、なぜ海から離れたつくばみらい市で、ウニの化石が見つかるのでしょうか?
今から12万年~13万年前は、関東平野の広い部分は、浅い海だったそうです。
この時代に堆積した泥や砂の層が、「木下(きおろし)層」と呼ばれる地層で、
バカガイなどの二枚貝やカシパンウニの化石が多いそうなのです。(参考:千葉県HPより)
この木下層が見える崖は、茨城県下にもいくつかあるようで、
行方市やかすみがうら市などの霞ヶ浦沿岸や、内陸の稲敷台地、鹿島台地、常総台地の端の崖でも見られる場所があるそうです。
つくばみらい市の「石饅頭」も、そういった木下層が路頭していて、化石がすぐに取れる場所なのでしょう。
文献2で「カシパンウニ」が採取出来たとういう、
千住院の近くの八幡神社にも行ってみました。
八幡神社でもそれらしいものはありませんでしたが、千住院も八幡神社も、小高い所にあります。
この辺り一帯の微小高地の崖から、石饅頭=カシパンウニ類の化石 が出てくるのでしょう。
写真は八幡神社の参道から参道脇の崖を望む。
このあたりの崖を作っている地層(の一部?)が、木下層なのでしょうか。
古代は海の底だった場所も、今は田んぼの稲が青々と♪
小高い丘も、大昔は貝やウニがたくさん住んでいた海の底だったのですね。
●カシパンウニの化石を見たい時は、茨城県自然博物館へGO!
茨城県自然博物館で、阿見町で採取されたカシパンウニの化石が展示されているとの情報を、同館の方からご教示頂きました。
(ここでの掲載はしませんが、化石のお写真もメールで添付して下さいました!ありがとうございました)
観たい方は、是非、茨城県自然博物館へ行ってご覧になって下さい♪
もちろん、カシパンウニ以外の化石もたくさんありますよ!
ミュージアムパーク 茨城県自然博物館
https://www.nat.museum.ibk.ed.jp/
とうことで、第1回は、つくばみらい市に伝わる謎の
「石饅頭」
に迫りました。
次回に続きます。
→ 信仰とジオの意外な関係(2) ~土浦 カシャ(雷神)の爪・龍の爪~
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【参考文献】
1.『日本伝説集』 高木敏雄 著 ちくま学芸文庫
2.伊奈の歴史第十号(終刊号)
3.『伊奈町の歴史散歩』 伊奈町社会教育講座・歴史教室編 筑波書林
4.『ヤマケイポケットガイド16 海辺の生き物』 小林安雅著 山と渓谷社
【参考サイト】
千葉県/千葉県教育委員会HP 『木下貝層』
https://www.pref.chiba.lg.jp/kyouiku/bunkazai/bunkazai/n431-019.html
落語『紋三郎稲荷』 の舞台を訪ねて (三)
落語『紋三郎稲荷』 の舞台を訪ねて (二)
落語『紋三郎稲荷』 の舞台を訪ねて (一)
茨城3つの養蚕信仰の聖地について(9) 地元の方から教えて頂いた神栖に伝わるお話
国立歴史民俗博物館 企画展 『陰陽師とは何者か』 を見て
映画『石岡タロー』
落語『紋三郎稲荷』 の舞台を訪ねて (二)
落語『紋三郎稲荷』 の舞台を訪ねて (一)
茨城3つの養蚕信仰の聖地について(9) 地元の方から教えて頂いた神栖に伝わるお話
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