2015年12月21日
茨城由来の冬の季語『蓑和田の鯉取り』を探る(3)
茨城由来の冬の季語『蓑和田鯉の鯉取り』を探る(3)
(2015年12月4日に FM84.2MHZラヂオつくば『つくばね自由研究クラブ』で放送した内容の一部を抜粋、再構築しております)
今までのお話
→ 茨城由来の冬の季語『蓑和田鯉の鯉取り』を探る(1)
→ 茨城由来の冬の季語『蓑和田鯉の鯉取り』を探る(2)
(3)鯉取という漁法
『鯉取り』という言葉ですが、これは鯉を獲る漁法です。
特に『鯉抱き漁』という獲り方があって、これは、鯉を油断させて抱き上げて生け捕る漁とのこと。
この獲り方で獲った鯉が美味しいのだそうです。
蓮根を取るハス田の向こうに広がる霞ヶ浦。向こう岸には、牛久大仏も見えます(写真では小さいのですが)。
土浦市沖宿付近からの風景。
土浦市内で開業医を営む佐賀純一氏が、明治以降の霞ヶ浦で生活する庶民の姿を40数人の古老から聞き書きした、『霞ヶ浦風土記』 という名著があります(文献1)。
そこでは、冬に、水中で鯉やナマズを抱き上げて生け捕る名人がいた話が掲載されています。
また、浮島の蓑和田にも、非常にたくさんの鯉がいたという話も語られています。
鯉は冬は岩場などでじっとしていて動かないとのことで、名人はそこを近づいて生け捕るそう。
体が温まっていると鯉やなまずは察知して逃げるので、体を冷やして潜ると気付かれずに抱きかかえて捕まえられるられる・・・との話を名人から聞いた古老の語りが、著書の中で聞き書きされています。
ちなみに、この方はフンドシすらつけず、すっぽんぽんで潜って捕まえるそうで、「ふんどしをつけていると魚は逃げる」旨の理由を名人が語っていたそうです。
他にも、明治時代初期に刊行された『大日本物産図会』という書物に、『常州鯉ヲ抱取ル図』というのがあります。
それを見ると、ふんどし一丁の男たちが水に潜って、大きな鯉を抱き上げて獲っている様子が描かれています。
参考:『大日本物産図会』も、近代デジタルライブラリーで見られるよう(白黒)。
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/801498
『抱き取る』という漁方は、鯉を傷つけないので、より鮮度が保たれて美味しいのかもしれませんね。
もしかしたら、水に入れて生きたまま江戸に運ばれたのかもしれません。
それにしても厳冬の中、すごい漁があったものです。
霞ヶ浦の文化、歴史、科学が総合的に学べる、茨城県霞ヶ浦環境科学センター(土浦市沖宿)
(4)今も味わえる、美味しい鯉。そして、12月こそ食べてみたいびっくりの食べ方!
甘煮(うまに)、コイの洗い、鯉こく
・・・このあたりは、和食として一般的な食べ方ですね。
茨城県ならではとしては、行方のコイのハンバーガー『鯉ぱっくん』も外せません!
でも、鯉は日本以外でも食べられいるのです。
それもクリスマスのスペシャルメニューとして!
東ヨーロッパの国々で、特に チェコ、スロバキア、ポーランドでは、クリスマスの鯉料理はかかせないそうです。
その他、オーストリア、ロシアなど、内陸の地区でも名物料理があるようです。
たとえばチェコでは、鯉が売られるのは12月半ばと決まっていて、クリスマスイブから年末にかけて鯉料理が各家庭で食べられるそうです(文献2)
そしてお正月料理。
お正月料理としても、日本国内で鯉の甘露煮など食べる地域もあることでしょう。
また、中国でも、中国山東省では、春節(中国の旧正月)料理で『黄河鯉』のから揚げの甘酢あんかけを食べると聞いたことがあります。
鯉は繁栄の象徴。
またうろこを金貨に見立てて、お金持ちにあやかれる魚とも言われているそう。
写真のイタリアのワインの瓶は鯉を象ったものと聞いたことがあるのですが、詳しい方、教えてくださいませ。
今年のクリスマス料理やお正月料理に迷っている方、良いかもしれませんね
平安時代に詠われ、百人一首にもある 『筑波根の 峰より落つる みなの川 恋ぞつもりて淵となりぬる』(陽成院)
そして、
江戸時代前期のもじり歌 『筑波根の 水も落ちくる 箕輪田の 鯉ぞつもりて淵となりぬる』(文献3)
の舞台であり、
『蓑和田浦』(文献4)のあった霞ヶ浦の水上から、筑波山を望む。
鯉の生産量が、再び生産量日本一になりつつあるという茨城。
・・・そんなことに思いを馳せながら、冬が旬の鯉料理、いかがでしょう?
***********************************************
【参考文献】
1. 「霞ヶ浦風土記 新装版 風と波に生きた人々」 佐賀純一 著 常陽新聞社
2. 「国際理解教育に役立つ 世界の衣食住2 ヨーロッパの食べもの」 江上佳奈美 監修 星川妙子 文 小峰書房
3. 「江戸のパロディー もじり百人一首を読む」 武藤禎夫 著 東京堂出版
4. 和漢三才図会<10> (東洋文庫 456) 寺島良安 著 島田勇雄・竹島淳夫・樋口元巳 訳注
【参考ホームページ】
・霞ヶ浦環境科学センター
調査研究>霞ヶ浦への招待 Ⅳ 霞ケ浦と人とのかかわり より
http://www.kasumigaura.pref.ibaraki.jp/04_kenkyu/introduction/kahology_top.html
・(日本物産図会)
国立国会図書館 近代デジタルライブラリー 『大日本物産図会. 1』
『常州鯉ヲ抱取ル図』は、コマ26/33 にあり(モノクロで分かりにくいですが)
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/801497
・(毛吹草)
大学共同利用機関法人 人間文化研究機構国文学研究資料館HP
国文学研究資料館トップ > 電子資料館 >古事類苑データベース
http://base1.nijl.ac.jp/~kojiruien/tibu1/frame/f001147.html
(古事類苑>地部十四>常陸國>人口 第 2 巻 1147 頁) より
・(吾吟我集)
大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 国文学研究資料館
http://base1.nijl.ac.jp/iview/Frame.jsp?DB_ID=G0003917KTM&C_CODE=0214-16902
(2015年12月4日に FM84.2MHZラヂオつくば『つくばね自由研究クラブ』で放送した内容の一部を抜粋、再構築しております)
今までのお話
→ 茨城由来の冬の季語『蓑和田鯉の鯉取り』を探る(1)
→ 茨城由来の冬の季語『蓑和田鯉の鯉取り』を探る(2)
(3)鯉取という漁法
『鯉取り』という言葉ですが、これは鯉を獲る漁法です。
特に『鯉抱き漁』という獲り方があって、これは、鯉を油断させて抱き上げて生け捕る漁とのこと。
この獲り方で獲った鯉が美味しいのだそうです。
蓮根を取るハス田の向こうに広がる霞ヶ浦。向こう岸には、牛久大仏も見えます(写真では小さいのですが)。
土浦市沖宿付近からの風景。
土浦市内で開業医を営む佐賀純一氏が、明治以降の霞ヶ浦で生活する庶民の姿を40数人の古老から聞き書きした、『霞ヶ浦風土記』 という名著があります(文献1)。
そこでは、冬に、水中で鯉やナマズを抱き上げて生け捕る名人がいた話が掲載されています。
また、浮島の蓑和田にも、非常にたくさんの鯉がいたという話も語られています。
鯉は冬は岩場などでじっとしていて動かないとのことで、名人はそこを近づいて生け捕るそう。
体が温まっていると鯉やなまずは察知して逃げるので、体を冷やして潜ると気付かれずに抱きかかえて捕まえられるられる・・・との話を名人から聞いた古老の語りが、著書の中で聞き書きされています。
ちなみに、この方はフンドシすらつけず、すっぽんぽんで潜って捕まえるそうで、「ふんどしをつけていると魚は逃げる」旨の理由を名人が語っていたそうです。
他にも、明治時代初期に刊行された『大日本物産図会』という書物に、『常州鯉ヲ抱取ル図』というのがあります。
それを見ると、ふんどし一丁の男たちが水に潜って、大きな鯉を抱き上げて獲っている様子が描かれています。
参考:『大日本物産図会』も、近代デジタルライブラリーで見られるよう(白黒)。
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/801498
『抱き取る』という漁方は、鯉を傷つけないので、より鮮度が保たれて美味しいのかもしれませんね。
もしかしたら、水に入れて生きたまま江戸に運ばれたのかもしれません。
それにしても厳冬の中、すごい漁があったものです。
霞ヶ浦の文化、歴史、科学が総合的に学べる、茨城県霞ヶ浦環境科学センター(土浦市沖宿)
(4)今も味わえる、美味しい鯉。そして、12月こそ食べてみたいびっくりの食べ方!
甘煮(うまに)、コイの洗い、鯉こく
・・・このあたりは、和食として一般的な食べ方ですね。
茨城県ならではとしては、行方のコイのハンバーガー『鯉ぱっくん』も外せません!
でも、鯉は日本以外でも食べられいるのです。
それもクリスマスのスペシャルメニューとして!
東ヨーロッパの国々で、特に チェコ、スロバキア、ポーランドでは、クリスマスの鯉料理はかかせないそうです。
その他、オーストリア、ロシアなど、内陸の地区でも名物料理があるようです。
たとえばチェコでは、鯉が売られるのは12月半ばと決まっていて、クリスマスイブから年末にかけて鯉料理が各家庭で食べられるそうです(文献2)
そしてお正月料理。
お正月料理としても、日本国内で鯉の甘露煮など食べる地域もあることでしょう。
また、中国でも、中国山東省では、春節(中国の旧正月)料理で『黄河鯉』のから揚げの甘酢あんかけを食べると聞いたことがあります。
鯉は繁栄の象徴。
またうろこを金貨に見立てて、お金持ちにあやかれる魚とも言われているそう。
写真のイタリアのワインの瓶は鯉を象ったものと聞いたことがあるのですが、詳しい方、教えてくださいませ。
今年のクリスマス料理やお正月料理に迷っている方、良いかもしれませんね
平安時代に詠われ、百人一首にもある 『筑波根の 峰より落つる みなの川 恋ぞつもりて淵となりぬる』(陽成院)
そして、
江戸時代前期のもじり歌 『筑波根の 水も落ちくる 箕輪田の 鯉ぞつもりて淵となりぬる』(文献3)
の舞台であり、
『蓑和田浦』(文献4)のあった霞ヶ浦の水上から、筑波山を望む。
鯉の生産量が、再び生産量日本一になりつつあるという茨城。
・・・そんなことに思いを馳せながら、冬が旬の鯉料理、いかがでしょう?
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【参考文献】
1. 「霞ヶ浦風土記 新装版 風と波に生きた人々」 佐賀純一 著 常陽新聞社
2. 「国際理解教育に役立つ 世界の衣食住2 ヨーロッパの食べもの」 江上佳奈美 監修 星川妙子 文 小峰書房
3. 「江戸のパロディー もじり百人一首を読む」 武藤禎夫 著 東京堂出版
4. 和漢三才図会<10> (東洋文庫 456) 寺島良安 著 島田勇雄・竹島淳夫・樋口元巳 訳注
【参考ホームページ】
・霞ヶ浦環境科学センター
調査研究>霞ヶ浦への招待 Ⅳ 霞ケ浦と人とのかかわり より
http://www.kasumigaura.pref.ibaraki.jp/04_kenkyu/introduction/kahology_top.html
・(日本物産図会)
国立国会図書館 近代デジタルライブラリー 『大日本物産図会. 1』
『常州鯉ヲ抱取ル図』は、コマ26/33 にあり(モノクロで分かりにくいですが)
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/801497
・(毛吹草)
大学共同利用機関法人 人間文化研究機構国文学研究資料館HP
国文学研究資料館トップ > 電子資料館 >古事類苑データベース
http://base1.nijl.ac.jp/~kojiruien/tibu1/frame/f001147.html
(古事類苑>地部十四>常陸國>人口 第 2 巻 1147 頁) より
・(吾吟我集)
大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 国文学研究資料館
http://base1.nijl.ac.jp/iview/Frame.jsp?DB_ID=G0003917KTM&C_CODE=0214-16902
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