2018年06月28日
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻4 ~春日神社(3)
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻4 ~春日神社(3)
洗練され、ちょっとスノッブな仏像とは対照的に、吉祥文様を『これでもか』とちりばめた社寺彫刻は、見れば見るほど面白い!
・・・ということで、
筑波山神社の境内社(厳島神社・日枝神社本殿・春日神社本殿・日枝春日両社拝殿)の装飾彫刻の読み解きにトライしているシリーズです。
今までの記事
第1回: 厳島神社(前編・後編)
絵解きに挑戦! 筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(前編)
絵解きに挑戦!筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(後編)
第2回: 春日神社日枝神社両社拝殿
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻2 ~春日神社日枝神社両社拝殿
第3回:日枝神社(1)(2)(3)
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(1)
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(2)
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(3)
第4回:春日神社(1)(2)
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻4 ~春日神社(1)
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻4 ~春日神社(2)
春日神社の彫刻の3回目は、脇障子、水引紅梁の木鼻 そして向拝の手挟(たばさみ)の彫刻を見ていきます。
(4)-3 春日神社 脇障子
●向かって右の脇障子
鳥は体形から鶴のようです。
全体的に白もしくは灰白色で、翼の先、尾羽、そして脚の中ほどが黒いです。
また目から頬にかけて、細く一文字に黒いラインが描かれています。
体の色も薄めなのもあり、まだ若い鶴のように感じるのですが、どうなのでしょう?
さて、一緒に彫られている木は松で、葉の様式から、『大和松』と呼ばれる松の表現。
『鶴と松』は定番の組み合わせです(文献2)。
さてこちらの脇障子には、もう1種類、花を咲かせた植物があるのにお気づきでしょうか。
ちょうど、鶴の翼の辺りに松と違う葉があり、尾のそばに多弁の花があります。
葉は一部しか見えないのですが、切り込みが深い三裂の葉、そして多弁の花は、牡丹だと思われます(文献1)。
花の様子は、次に紹介するもう一方の脇障子のものが分かりやすいので、そちらを見てましょう。
●向かって左の脇障子
やはり鶴らしい鳥が彫られています。
鶴は体を大きく下に向けており、手前にある欄干の陰に隠れて首から頭が見えなくなっています。
(もしかすると首から頭は無くなっているのかもしれません・・・)
上方の雲らしい模様の青色が鮮やかです。
木は松(『大和松』)なのは、上記の脇障子と同じです。
さて、こちらの脇障子で非常に目立つのが、大きな珠のような花のつぼみ。
そして咲き始めらしい多弁の花。
前回でも見たように、このつぼみの形から、そしてもう一枚の脇障子に彫られた葉の形から、牡丹だと分かります。
松の濃い緑色と、牡丹の葉の黄緑色も鮮やかですね。
でも、この大きな牡丹のつぼみは目を惹きます。
この大きな牡丹のつぼみも一緒に彫っていることといい、鶴はやっぱりまだ若い鶴を表しているのではないのかなぁ~?と妄想します。
なぜ若い鶴を?・・・という疑問は置いといて(笑)。
(4)-4 春日神社 水引紅梁の木鼻
向拝の水引紅梁の木鼻の彫刻の動物を見ていきます。
●向かって左側の木鼻
まずは向かって左側の木鼻。
口を閉じている吽形です。
ぱっちりと大きな目が目立ちますね。目の上には太い眉。
鼻は象ほど長くありませんが、ちょっと長めで上に向いています。
口元には牙も見えます。
耳はなく、くるくる巻き毛です。
そして首から胸にかけては、蛇のような蛇腹。
前足は獣のよう。
文献1より、これらの特徴から、想像上の生き物の、『獏(ばく)』だと思われます。
獏は、『悪い夢を食べる』という霊獣です。
龍や象と同じように木鼻に彫刻されることが多いそう。
ちょっと違う角度から。
文献1によると、獏の眉は太くて、上部は上の方向いたトゲ状の場合と、毛がカールしてる場合とがあるようです。
こちらの獏の眉毛は、2枚の写真を比べると、角度によってちょっとツンツンした毛の眉にもカールした毛の眉にも見えますね。
彫刻の獏は、象の間違えられる位、鼻が長いものが多いようですが(参考:お隣の日枝神社の木鼻の彫刻)、こちらの彫刻は鼻は短め。
でも、その外の特徴から、やはり『獏』だと考えます。
●向かって右側の木鼻
こちらは向かって右側の木鼻。
口を開けている阿形です。
こちらの写真では、眉の毛はカールしていますね。
目が大きくて、開いた口元が笑っているように見えて、更に舌も出ているので、ちょっとワンコっぽい
別の角度から。
正面から見ると、彫刻が縦に大きくひび割れているのが気になります
でも目がとっても大きくてチャーミング
・・・蛇腹を見ないで顔と前脚だけ見ていると、やっぱり 『伏せ』 して待っているワンコに見えてしまう~(^m^)
もしくは、映画『ネバーエンディングストーリー』のファルコン! ← 古い
(4)-5 春日神社 向拝手挟(たばさみ)
葉と花の形から、菊として間違いないでしょう。
花弁が沢山の菊の花と切れ込みの多い葉が、手挟全体に散りばめられていて、とても豪華。
見ていると、菊の芳しい香りが漂ってきそうです。
別の角度から。
この角度から見ると、側面の大きな赤い花と対になるようにデザインされた黄色い花が鮮やかで、全体を引き締めるアクセントのようにになっていますね
ひさしのような向拝の下にあるので、直射日光や風雨にひどく晒されないためか、手挟の彫刻も色鮮やかに残っていますね。
このシリーズ、何回かに分けて、筑波山神社境内社の装飾彫刻を見てきました。
日枝神社の向拝の中央の蟇股の『三猿』と、春日神社の向拝中央の蟇股の『鹿』は、それぞれ『神使』ということで、時折紹介される以外は、外の彫刻はほとんど知られていません。
県の指定文化財の彫刻なのに、残念・・・。
本来ならば筑波山神社の方か、つくば市の方で小冊子の形で、専門家の説明つきで解説書を出して欲しいなぁと思うのですが。
・・・まあ、無いのなら、素人ながら私が調べて読み解いてみようと思い、このシリーズを書いてみました。
調べているうちに、寺社彫刻(『大工彫刻』とも呼ばれるようです)の面白さにはまりつつあります。
この次は、追々、これらの彫刻が彫られた背景など、考えてみたいと思ってます。
***************************************************************************
【参考文献】
1. 『図説 社寺建築の彫刻 東照宮に彫られた動植物』 高藤晴俊 著 東京美術
2. 『日光東照宮の謎』 高藤晴俊 著 講談社現代新書
洗練され、ちょっとスノッブな仏像とは対照的に、吉祥文様を『これでもか』とちりばめた社寺彫刻は、見れば見るほど面白い!
・・・ということで、
筑波山神社の境内社(厳島神社・日枝神社本殿・春日神社本殿・日枝春日両社拝殿)の装飾彫刻の読み解きにトライしているシリーズです。
今までの記事
第1回: 厳島神社(前編・後編)
絵解きに挑戦! 筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(前編)
絵解きに挑戦!筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(後編)
第2回: 春日神社日枝神社両社拝殿
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻2 ~春日神社日枝神社両社拝殿
第3回:日枝神社(1)(2)(3)
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(1)
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(2)
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(3)
第4回:春日神社(1)(2)
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻4 ~春日神社(1)
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻4 ~春日神社(2)
春日神社の彫刻の3回目は、脇障子、水引紅梁の木鼻 そして向拝の手挟(たばさみ)の彫刻を見ていきます。
(4)-3 春日神社 脇障子
●向かって右の脇障子
鳥は体形から鶴のようです。
全体的に白もしくは灰白色で、翼の先、尾羽、そして脚の中ほどが黒いです。
また目から頬にかけて、細く一文字に黒いラインが描かれています。
体の色も薄めなのもあり、まだ若い鶴のように感じるのですが、どうなのでしょう?
さて、一緒に彫られている木は松で、葉の様式から、『大和松』と呼ばれる松の表現。
『鶴と松』は定番の組み合わせです(文献2)。
さてこちらの脇障子には、もう1種類、花を咲かせた植物があるのにお気づきでしょうか。
ちょうど、鶴の翼の辺りに松と違う葉があり、尾のそばに多弁の花があります。
葉は一部しか見えないのですが、切り込みが深い三裂の葉、そして多弁の花は、牡丹だと思われます(文献1)。
花の様子は、次に紹介するもう一方の脇障子のものが分かりやすいので、そちらを見てましょう。
●向かって左の脇障子
やはり鶴らしい鳥が彫られています。
鶴は体を大きく下に向けており、手前にある欄干の陰に隠れて首から頭が見えなくなっています。
(もしかすると首から頭は無くなっているのかもしれません・・・)
上方の雲らしい模様の青色が鮮やかです。
木は松(『大和松』)なのは、上記の脇障子と同じです。
さて、こちらの脇障子で非常に目立つのが、大きな珠のような花のつぼみ。
そして咲き始めらしい多弁の花。
前回でも見たように、このつぼみの形から、そしてもう一枚の脇障子に彫られた葉の形から、牡丹だと分かります。
松の濃い緑色と、牡丹の葉の黄緑色も鮮やかですね。
でも、この大きな牡丹のつぼみは目を惹きます。
この大きな牡丹のつぼみも一緒に彫っていることといい、鶴はやっぱりまだ若い鶴を表しているのではないのかなぁ~?と妄想します。
なぜ若い鶴を?・・・という疑問は置いといて(笑)。
(4)-4 春日神社 水引紅梁の木鼻
向拝の水引紅梁の木鼻の彫刻の動物を見ていきます。
●向かって左側の木鼻
まずは向かって左側の木鼻。
口を閉じている吽形です。
ぱっちりと大きな目が目立ちますね。目の上には太い眉。
鼻は象ほど長くありませんが、ちょっと長めで上に向いています。
口元には牙も見えます。
耳はなく、くるくる巻き毛です。
そして首から胸にかけては、蛇のような蛇腹。
前足は獣のよう。
文献1より、これらの特徴から、想像上の生き物の、『獏(ばく)』だと思われます。
獏は、『悪い夢を食べる』という霊獣です。
龍や象と同じように木鼻に彫刻されることが多いそう。
ちょっと違う角度から。
文献1によると、獏の眉は太くて、上部は上の方向いたトゲ状の場合と、毛がカールしてる場合とがあるようです。
こちらの獏の眉毛は、2枚の写真を比べると、角度によってちょっとツンツンした毛の眉にもカールした毛の眉にも見えますね。
彫刻の獏は、象の間違えられる位、鼻が長いものが多いようですが(参考:お隣の日枝神社の木鼻の彫刻)、こちらの彫刻は鼻は短め。
でも、その外の特徴から、やはり『獏』だと考えます。
●向かって右側の木鼻
こちらは向かって右側の木鼻。
口を開けている阿形です。
こちらの写真では、眉の毛はカールしていますね。
目が大きくて、開いた口元が笑っているように見えて、更に舌も出ているので、ちょっとワンコっぽい
別の角度から。
正面から見ると、彫刻が縦に大きくひび割れているのが気になります
でも目がとっても大きくてチャーミング
・・・蛇腹を見ないで顔と前脚だけ見ていると、やっぱり 『伏せ』 して待っているワンコに見えてしまう~(^m^)
もしくは、映画『ネバーエンディングストーリー』のファルコン! ← 古い
(4)-5 春日神社 向拝手挟(たばさみ)
葉と花の形から、菊として間違いないでしょう。
花弁が沢山の菊の花と切れ込みの多い葉が、手挟全体に散りばめられていて、とても豪華。
見ていると、菊の芳しい香りが漂ってきそうです。
別の角度から。
この角度から見ると、側面の大きな赤い花と対になるようにデザインされた黄色い花が鮮やかで、全体を引き締めるアクセントのようにになっていますね
ひさしのような向拝の下にあるので、直射日光や風雨にひどく晒されないためか、手挟の彫刻も色鮮やかに残っていますね。
このシリーズ、何回かに分けて、筑波山神社境内社の装飾彫刻を見てきました。
日枝神社の向拝の中央の蟇股の『三猿』と、春日神社の向拝中央の蟇股の『鹿』は、それぞれ『神使』ということで、時折紹介される以外は、外の彫刻はほとんど知られていません。
県の指定文化財の彫刻なのに、残念・・・。
本来ならば筑波山神社の方か、つくば市の方で小冊子の形で、専門家の説明つきで解説書を出して欲しいなぁと思うのですが。
・・・まあ、無いのなら、素人ながら私が調べて読み解いてみようと思い、このシリーズを書いてみました。
調べているうちに、寺社彫刻(『大工彫刻』とも呼ばれるようです)の面白さにはまりつつあります。
この次は、追々、これらの彫刻が彫られた背景など、考えてみたいと思ってます。
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【参考文献】
1. 『図説 社寺建築の彫刻 東照宮に彫られた動植物』 高藤晴俊 著 東京美術
2. 『日光東照宮の謎』 高藤晴俊 著 講談社現代新書
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