2018年06月20日
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻4 ~春日神社(2)
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻4 ~春日神社(2)
この度の大阪北部震源の地震により被災された皆様にお見舞い申し上げます。
これ以上大きな余震が無いことを、そして一日も早く平穏な日が戻る事を心よりお祈りいたします。
神社やお寺の外側に施された社寺彫刻。
人々の祈りと願いが、様々な吉祥文様で表わされ、込められているように感じます。
洗練され、ちょっとスノッブな仏像とは対照的に、吉祥文様を『これでもか』とちりばめた社寺彫刻は、見れば見るほど面白い・・・ということで、
筑波山神社の境内社(厳島神社・日枝神社本殿・春日神社本殿・日枝春日両社拝殿)の装飾彫刻の意味の読み解きにトライするシリーズです。
今までの記事
第1回: 厳島神社(前編・後編)
絵解きに挑戦! 筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(前編)
絵解きに挑戦!筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(後編)
第2回: 春日神社日枝神社両社拝殿
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻2 ~春日神社日枝神社両社拝殿
第3回:日枝神社(1)(2)(3)
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(1)
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(2)
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(3)
第4回:春日神社
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻4 ~春日神社(1)
春日神社の2回目。
今回は、春日神社母屋(もや)の蟇股彫刻についてです。
(4)-2 春日神社 本殿の3つの蟇股の彫刻
こちらも日枝神社同様、ひさしのように張り出す向拝の奥にあって見えにくいのですが、 母屋の正面にも蟇股が3つあります。
カメラのズームで写真を撮って確認しました。
春日神社の母屋の蟇股の彫刻も、日枝神社同様、鳥の彫刻ですが、日枝神社とは違う種類と鳥と花であるのが確認出来ます。
やはり、向拝の彫刻と異なり、直接風雨や日光に晒されていないためか色鮮やかです。
彫られている鳥の彫刻には、
・冠羽(一重)がある。
・尾が長くで、先が細くなっている。尾羽は帯状で波打つ。
・体の色は、首から背中が緑色、翼(風切り羽)が青。腹と尾は茶色?
の特徴が見られます。
これらの特徴で彫られる鳥は、『山鵲(さんじゃく)』、『錦鶏(きんけい)』、そして『鸞(らん)』
が考えられます(文献1,2)。いずれも瑞鳥、霊鳥とされています。
この中で3つ目の『鸞(らん)』は、『鳳凰』にかなり似いているそうで、非常に華やかな色彩と装飾的な尾羽などを持つようです。
が、こちらの春日神社のものは素人目に見てもそこまで華やかではないので、『鸞(らん)』は外して良いと思います。
また鳥の脇に彫られた花は、
・花弁が多弁。
・葉に深い切れ込みがある
という特徴で、前回の日枝神社(3)で見た、芙蓉か牡丹に似ています。
具体的に何の鳥と花が彫られているのか、具体的に写真を見ながら考えていきましょう。
①向かって左の蟇股:
鮮やかに色が残っていますね。
翼の風切り羽が一部青く彩色されているようです。
首~背と翼の大部分は、茶色か緑色のように見えますが、写真からでは判別ができません・・・。
長い尾は、ゆるくウェーブがかかっています。
候補の1つ『錦鶏』の尾は、まっすぐで剣のように表現されるとのことなので、
春日神社の鳥の彫刻は、どうも『錦鶏』ではなさそうです。
残るは『山鵲』ですが、
『山鵲』の尾の表現の特徴は、
・ウェーブがかかった長い尾
・他の数本よりも長い尾羽が2本ある
・尾羽の先にしずく型の模様があることが多い
とのこと(文献1、2)。
他のものよりやや長めの尾羽が2本あります。
※1本極端に短いものは、傷んで折れてしまったものようです。
ただし、『尾羽の先のしずく型の模様』は確認できず。
さて、一緒に彫られている花を見ていきましょう。
花のアップ。
花の蕊(しべ)が表現されていないのと、葉を正面から描いていないので、牡丹か芙蓉か、よくわからないですね・・・。
蕾(つぼみ)のアップ。
文献1によると、牡丹も芙蓉も蕾は丸いのですが、牡丹の場合は『広く短い萼(がく)が蕾を乗せている』のに対し、芙蓉の場合は『細く長い萼が1~3本ほど縦に蕾に張りついている』とのこと。
そうすると、この花は『牡丹』として良さそうです。
※ ちなみに前々回紹介した、日枝神社の向拝手挟の彫刻は芙蓉ですが、写真右に見える 上を向いた咲きかけの花のガクは、確かに『細くて長く縦に張りついて』います。
参照→ 絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(3)
②真ん中の蟇股:
この真ん中の像が一番色鮮やかです。
首から背中が緑色、翼(風切り羽)が青。腹と尾は茶色らしいのが分かります。
腹と尾の『茶色』は、元は『赤色』だった可能性もありますね。
尾は①よりはやや直線的な表現です。
違う角度から。
手前にある向拝の柱がややじゃまをしていますが、長い尾羽があるのが分かります。
翼と尾羽の造形が綺麗ですね
筑波山神社境内の彫刻の中で、私が一番好きな彫刻です
③向かって右の蟇股:
建物に近づけず、決まった角度からのズームアップ写真しかとれないのが残念。
でも左の翼など、鮮やかな青色が目を引きます。
また、立体的な造形と、鳥の表情もよくわかります。
なんとなく少々緊迫した表情のような気も?・・・。
尾羽の先の模様は確認出来ませんが、他の特徴から、春日神社の母屋の蟇股の鳥は、やはり山鵲(さんじゃく)として良いのではないでしょうか。
また文献2によると、山鵲は牡丹の花の組み合わせが目立つそうなので、それからしても、鳥は山鵲として良さそうです。
それにしても、日枝神社・春日神社の両社殿の動物の彫刻の中で、色彩が一番美しく残っており、また造形が優美なのが、これら春日神社母屋の3つの蟇股の彫刻だと思います(*^^*)
鳥の翼と長い尾羽のラインと、フリル感たっぷりの多弁の牡丹の花の組み合わせも華やかで素敵です
さて、日枝神社、春日神社の蟇股の彫刻を見てきて気付いたのが、
・向かって左の像:中央(自分の左)を向く
・中央の像:大きく首や体を曲げて、自分の左を向く
・向かって右の像:中央(自分の右)を向く
のパターンでほぼ統一されていることです。
しかし唯一の例外が、日枝神社の向拝中央の蟇股の『三猿』。
ここに『三猿』に特別の意味があるように思えてなりません(←つい 深読み^^;)
・・・が、これについては、またの機会に考えてみたいです。
次回は、春日神社の脇障子と、水引虹梁の木鼻、そして向拝手挟の彫刻についてです。
→ 絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻4 ~春日神社(3)
***************************************************************************
【参考文献】
1. 『図説 社寺建築の彫刻 東照宮に彫られた動植物』 高藤晴俊 著 東京美術
2. 『日光東照宮の謎』 高藤晴俊 著 講談社現代新書
この度の大阪北部震源の地震により被災された皆様にお見舞い申し上げます。
これ以上大きな余震が無いことを、そして一日も早く平穏な日が戻る事を心よりお祈りいたします。
神社やお寺の外側に施された社寺彫刻。
人々の祈りと願いが、様々な吉祥文様で表わされ、込められているように感じます。
洗練され、ちょっとスノッブな仏像とは対照的に、吉祥文様を『これでもか』とちりばめた社寺彫刻は、見れば見るほど面白い・・・ということで、
筑波山神社の境内社(厳島神社・日枝神社本殿・春日神社本殿・日枝春日両社拝殿)の装飾彫刻の意味の読み解きにトライするシリーズです。
今までの記事
第1回: 厳島神社(前編・後編)
絵解きに挑戦! 筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(前編)
絵解きに挑戦!筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(後編)
第2回: 春日神社日枝神社両社拝殿
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻2 ~春日神社日枝神社両社拝殿
第3回:日枝神社(1)(2)(3)
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(1)
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(2)
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(3)
第4回:春日神社
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻4 ~春日神社(1)
春日神社の2回目。
今回は、春日神社母屋(もや)の蟇股彫刻についてです。
(4)-2 春日神社 本殿の3つの蟇股の彫刻
こちらも日枝神社同様、ひさしのように張り出す向拝の奥にあって見えにくいのですが、 母屋の正面にも蟇股が3つあります。
カメラのズームで写真を撮って確認しました。
春日神社の母屋の蟇股の彫刻も、日枝神社同様、鳥の彫刻ですが、日枝神社とは違う種類と鳥と花であるのが確認出来ます。
やはり、向拝の彫刻と異なり、直接風雨や日光に晒されていないためか色鮮やかです。
彫られている鳥の彫刻には、
・冠羽(一重)がある。
・尾が長くで、先が細くなっている。尾羽は帯状で波打つ。
・体の色は、首から背中が緑色、翼(風切り羽)が青。腹と尾は茶色?
の特徴が見られます。
これらの特徴で彫られる鳥は、『山鵲(さんじゃく)』、『錦鶏(きんけい)』、そして『鸞(らん)』
が考えられます(文献1,2)。いずれも瑞鳥、霊鳥とされています。
この中で3つ目の『鸞(らん)』は、『鳳凰』にかなり似いているそうで、非常に華やかな色彩と装飾的な尾羽などを持つようです。
が、こちらの春日神社のものは素人目に見てもそこまで華やかではないので、『鸞(らん)』は外して良いと思います。
また鳥の脇に彫られた花は、
・花弁が多弁。
・葉に深い切れ込みがある
という特徴で、前回の日枝神社(3)で見た、芙蓉か牡丹に似ています。
具体的に何の鳥と花が彫られているのか、具体的に写真を見ながら考えていきましょう。
①向かって左の蟇股:
鮮やかに色が残っていますね。
翼の風切り羽が一部青く彩色されているようです。
首~背と翼の大部分は、茶色か緑色のように見えますが、写真からでは判別ができません・・・。
長い尾は、ゆるくウェーブがかかっています。
候補の1つ『錦鶏』の尾は、まっすぐで剣のように表現されるとのことなので、
春日神社の鳥の彫刻は、どうも『錦鶏』ではなさそうです。
残るは『山鵲』ですが、
『山鵲』の尾の表現の特徴は、
・ウェーブがかかった長い尾
・他の数本よりも長い尾羽が2本ある
・尾羽の先にしずく型の模様があることが多い
とのこと(文献1、2)。
他のものよりやや長めの尾羽が2本あります。
※1本極端に短いものは、傷んで折れてしまったものようです。
ただし、『尾羽の先のしずく型の模様』は確認できず。
さて、一緒に彫られている花を見ていきましょう。
花のアップ。
花の蕊(しべ)が表現されていないのと、葉を正面から描いていないので、牡丹か芙蓉か、よくわからないですね・・・。
蕾(つぼみ)のアップ。
文献1によると、牡丹も芙蓉も蕾は丸いのですが、牡丹の場合は『広く短い萼(がく)が蕾を乗せている』のに対し、芙蓉の場合は『細く長い萼が1~3本ほど縦に蕾に張りついている』とのこと。
そうすると、この花は『牡丹』として良さそうです。
※ ちなみに前々回紹介した、日枝神社の向拝手挟の彫刻は芙蓉ですが、写真右に見える 上を向いた咲きかけの花のガクは、確かに『細くて長く縦に張りついて』います。
参照→ 絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(3)
②真ん中の蟇股:
この真ん中の像が一番色鮮やかです。
首から背中が緑色、翼(風切り羽)が青。腹と尾は茶色らしいのが分かります。
腹と尾の『茶色』は、元は『赤色』だった可能性もありますね。
尾は①よりはやや直線的な表現です。
違う角度から。
手前にある向拝の柱がややじゃまをしていますが、長い尾羽があるのが分かります。
翼と尾羽の造形が綺麗ですね
筑波山神社境内の彫刻の中で、私が一番好きな彫刻です
③向かって右の蟇股:
建物に近づけず、決まった角度からのズームアップ写真しかとれないのが残念。
でも左の翼など、鮮やかな青色が目を引きます。
また、立体的な造形と、鳥の表情もよくわかります。
なんとなく少々緊迫した表情のような気も?・・・。
尾羽の先の模様は確認出来ませんが、他の特徴から、春日神社の母屋の蟇股の鳥は、やはり山鵲(さんじゃく)として良いのではないでしょうか。
また文献2によると、山鵲は牡丹の花の組み合わせが目立つそうなので、それからしても、鳥は山鵲として良さそうです。
それにしても、日枝神社・春日神社の両社殿の動物の彫刻の中で、色彩が一番美しく残っており、また造形が優美なのが、これら春日神社母屋の3つの蟇股の彫刻だと思います(*^^*)
鳥の翼と長い尾羽のラインと、フリル感たっぷりの多弁の牡丹の花の組み合わせも華やかで素敵です
さて、日枝神社、春日神社の蟇股の彫刻を見てきて気付いたのが、
・向かって左の像:中央(自分の左)を向く
・中央の像:大きく首や体を曲げて、自分の左を向く
・向かって右の像:中央(自分の右)を向く
のパターンでほぼ統一されていることです。
しかし唯一の例外が、日枝神社の向拝中央の蟇股の『三猿』。
ここに『三猿』に特別の意味があるように思えてなりません(←つい 深読み^^;)
・・・が、これについては、またの機会に考えてみたいです。
次回は、春日神社の脇障子と、水引虹梁の木鼻、そして向拝手挟の彫刻についてです。
→ 絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻4 ~春日神社(3)
***************************************************************************
【参考文献】
1. 『図説 社寺建築の彫刻 東照宮に彫られた動植物』 高藤晴俊 著 東京美術
2. 『日光東照宮の謎』 高藤晴俊 著 講談社現代新書
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