2018年06月12日
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻4 ~春日神社(1)
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻4 ~春日神社(1)
筑波山神社の境内社(厳島神社・日枝神社本殿・春日神社本殿・日枝春日両社拝殿)の装飾彫刻の意味の読み解きにトライするシリーズ。
今までの記事
第1回: 厳島神社(前編・後編)
絵解きに挑戦! 筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(前編)
絵解きに挑戦!筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(後編)
第2回: 春日神社日枝神社両社拝殿
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻2 ~春日神社日枝神社両社拝殿
第3回:日枝神社(1)(2)(3)
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(1)
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(2)
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(3)
双子のように同じ形のお社がなかよく並んでいる、日枝神社と春日神社。
向かって右が日枝神社で、向かって左、筑波山神社拝殿に近い方が春日神社です。
春日神社本殿も日枝神社本殿同様に『三間社流造』 で、寛永十年(1633年)に建立されたもので、茨城県指定文化財です。
前回までの日枝神社同様、春日神社本殿の彫刻を、3回に分けて見ていきます。
今回は、春日神社本殿の向拝の蟇股彫刻についてです。
(4)-1 春日神社 向拝の3つの蟇股の彫刻
春日神社の向拝の3つの蟇股には、それぞれ『鹿』の彫刻があります。
『鹿』は、春日神社の神様の神使とされているため、選ばれたのでしょう。
これは、厳島神社の向拝蟇股の『蛇』や、お隣の日枝神社の向拝蟇股の『猿』と同じです。
① 向かって左の蟇股の『鹿』
紅葉(モミジ)=楓(カエデ)の葉と一緒に彫られています。
花札にもあるように、『鹿とモミジ(カエデ)』は定番の組み合わせ。
カエデの葉は赤いので、まさしく紅葉(もみじ)。
鹿は体ごと向かって右、中央の方を向いています。
ちなみにこちらの蟇股は、後ろ側からも見ることができます。
後ろ側は全面カエデの葉の彫刻。
② 中央の蟇股の『鹿』
こちらの鹿は体は向かって左の方を向いていますが、首を大きく曲げて、向かって右の方に向けています。
一緒に彫られているのは、やはりカエデ(モミジ)。
良く見ると、赤色以外にも、黄色や緑色だったらしい葉もあるように見えます。
彩色が残っていたら、赤・黄・緑と、あでやかな色遣いだったように思います。
③ 向かって右の蟇股の『鹿』
こちらの鹿は体ごと向かって左を向いています。
飛び跳ねているようで、躍動感を感じますね。
こちらも楓(かえで)/紅葉(もみじ)が一緒に彫られています。
赤っぽい葉に交じり、こちらも黄色か、もしかしたら緑色だったらしい葉もあるように見えます。
さて文献1によると、鹿の彫刻は一般には『角が生えた雄鹿』を彫るそうです。
さらに春日神社の総本社の奈良の春日大社には、春日の神は白い鹿に乗って常陸国の鹿島神宮からやってきた・・・という伝説が伝わり、大きな角を持った白い鹿に乗った神様の図『鹿島立ち神影図』が所有されています(文献3)。
大きな角があるのですから、大人の雄の鹿です。
しかし、こちらの春日神社の鹿の彫刻は、3体とも角らしいものは見当たりません。
雌の鹿か、角がまだ生えていない子鹿ということですよね。
神使の動物の図像としては、雄鹿だけか、つがい(雄鹿&雌鹿)だったり、日光の猿の彫刻のように母子だとまだ納得できるのですが、こちらの春日神社の彫刻では雄鹿ではなく、雌鹿だけもしくは子鹿だけというのは、何か意図があったのでしょうか?(← つい、深読みしてしまう(^^;))
他の社寺彫刻(特に『鹿』が神使である春日神社や鹿島神社と名付けられたお社)でも、雌鹿のみ、子鹿のみの例があるのでしょうか?
追々調べてみたいと思います。
さて、この三体の鹿の構図は、先に見た日枝神社の本殿の方の蟇股の山鳥の構図に似ています。
山鳥の方は、『つがいに近づく別のオス』みたいな印象がありましたが(←勝手に私がそう見ている^^;)、こちらは、3体とも雌鹿か子鹿なので、ちょっと違うストーリーがありそうな?
①の鹿: 腰を高くし、体の前半分は低くして、これからジャンプしそうな姿勢。
②の鹿: 左の鹿に近づこうした時、後ろから(右から)近づいてきた鹿に気づいて見る。(“ん?何?”という表情)
③の鹿: 跳ねながら近づいてくる。(何か伝えたそう?)
・・・またまた妄想がいろいろ浮かびます♪
次回は、春日神社の本殿の3体の鳥の蟇股彫刻を見ていきます。
→ 絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻4 ~春日神社(2)
***************************************************************************
【参考文献】
1. 『図説 社寺建築の彫刻 東照宮に彫られた動植物』 高藤晴俊 著 東京美術
2. 『日光東照宮の謎』 高藤晴俊 著 講談社現代新書
3. 『国宝 大神社展』 図録 東京国立博物館・九州国立博物館 編集 NHK・NHKプロモーション発行
筑波山神社の境内社(厳島神社・日枝神社本殿・春日神社本殿・日枝春日両社拝殿)の装飾彫刻の意味の読み解きにトライするシリーズ。
今までの記事
第1回: 厳島神社(前編・後編)
絵解きに挑戦! 筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(前編)
絵解きに挑戦!筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(後編)
第2回: 春日神社日枝神社両社拝殿
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻2 ~春日神社日枝神社両社拝殿
第3回:日枝神社(1)(2)(3)
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(1)
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(2)
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(3)
双子のように同じ形のお社がなかよく並んでいる、日枝神社と春日神社。
向かって右が日枝神社で、向かって左、筑波山神社拝殿に近い方が春日神社です。
春日神社本殿も日枝神社本殿同様に『三間社流造』 で、寛永十年(1633年)に建立されたもので、茨城県指定文化財です。
前回までの日枝神社同様、春日神社本殿の彫刻を、3回に分けて見ていきます。
今回は、春日神社本殿の向拝の蟇股彫刻についてです。
(4)-1 春日神社 向拝の3つの蟇股の彫刻
春日神社の向拝の3つの蟇股には、それぞれ『鹿』の彫刻があります。
『鹿』は、春日神社の神様の神使とされているため、選ばれたのでしょう。
これは、厳島神社の向拝蟇股の『蛇』や、お隣の日枝神社の向拝蟇股の『猿』と同じです。
① 向かって左の蟇股の『鹿』
紅葉(モミジ)=楓(カエデ)の葉と一緒に彫られています。
花札にもあるように、『鹿とモミジ(カエデ)』は定番の組み合わせ。
カエデの葉は赤いので、まさしく紅葉(もみじ)。
鹿は体ごと向かって右、中央の方を向いています。
ちなみにこちらの蟇股は、後ろ側からも見ることができます。
後ろ側は全面カエデの葉の彫刻。
② 中央の蟇股の『鹿』
こちらの鹿は体は向かって左の方を向いていますが、首を大きく曲げて、向かって右の方に向けています。
一緒に彫られているのは、やはりカエデ(モミジ)。
良く見ると、赤色以外にも、黄色や緑色だったらしい葉もあるように見えます。
彩色が残っていたら、赤・黄・緑と、あでやかな色遣いだったように思います。
③ 向かって右の蟇股の『鹿』
こちらの鹿は体ごと向かって左を向いています。
飛び跳ねているようで、躍動感を感じますね。
こちらも楓(かえで)/紅葉(もみじ)が一緒に彫られています。
赤っぽい葉に交じり、こちらも黄色か、もしかしたら緑色だったらしい葉もあるように見えます。
さて文献1によると、鹿の彫刻は一般には『角が生えた雄鹿』を彫るそうです。
さらに春日神社の総本社の奈良の春日大社には、春日の神は白い鹿に乗って常陸国の鹿島神宮からやってきた・・・という伝説が伝わり、大きな角を持った白い鹿に乗った神様の図『鹿島立ち神影図』が所有されています(文献3)。
大きな角があるのですから、大人の雄の鹿です。
しかし、こちらの春日神社の鹿の彫刻は、3体とも角らしいものは見当たりません。
雌の鹿か、角がまだ生えていない子鹿ということですよね。
神使の動物の図像としては、雄鹿だけか、つがい(雄鹿&雌鹿)だったり、日光の猿の彫刻のように母子だとまだ納得できるのですが、こちらの春日神社の彫刻では雄鹿ではなく、雌鹿だけもしくは子鹿だけというのは、何か意図があったのでしょうか?(← つい、深読みしてしまう(^^;))
他の社寺彫刻(特に『鹿』が神使である春日神社や鹿島神社と名付けられたお社)でも、雌鹿のみ、子鹿のみの例があるのでしょうか?
追々調べてみたいと思います。
さて、この三体の鹿の構図は、先に見た日枝神社の本殿の方の蟇股の山鳥の構図に似ています。
山鳥の方は、『つがいに近づく別のオス』みたいな印象がありましたが(←勝手に私がそう見ている^^;)、こちらは、3体とも雌鹿か子鹿なので、ちょっと違うストーリーがありそうな?
①の鹿: 腰を高くし、体の前半分は低くして、これからジャンプしそうな姿勢。
②の鹿: 左の鹿に近づこうした時、後ろから(右から)近づいてきた鹿に気づいて見る。(“ん?何?”という表情)
③の鹿: 跳ねながら近づいてくる。(何か伝えたそう?)
・・・またまた妄想がいろいろ浮かびます♪
次回は、春日神社の本殿の3体の鳥の蟇股彫刻を見ていきます。
→ 絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻4 ~春日神社(2)
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【参考文献】
1. 『図説 社寺建築の彫刻 東照宮に彫られた動植物』 高藤晴俊 著 東京美術
2. 『日光東照宮の謎』 高藤晴俊 著 講談社現代新書
3. 『国宝 大神社展』 図録 東京国立博物館・九州国立博物館 編集 NHK・NHKプロモーション発行
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