絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(3)


筑波山神社の境内社(厳島神社・日枝神社本殿・春日神社本殿・日枝春日両社拝殿)の装飾彫刻の意味の読み解きにトライするシリーズ。

今までの記事

第1回: 厳島神社(前編・後編)
  豆電球絵解きに挑戦! 筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(前編)
  豆電球絵解きに挑戦!筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(後編)

第2回: 春日神社日枝神社両社拝殿 
  豆電球絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻2 ~春日神社日枝神社両社拝殿

第3回:日枝神社
  豆電球絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(1)
  豆電球絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(2)


日枝神社の彫刻の3回目は、脇障子と、水引虹梁の木鼻、そして向拝手挟(たばさみ)の彫刻を見ていきます。


(3)-3 日枝神社 脇障子

●向かって左の脇障子
と、梅・竹の彫刻


岩のような?うねった場所に尾を立てて立ち、向かって左、お社の方を向いています。
静かに立っていますが、立てた尾と見開いた大きな目に緊張感が・・・と言いたいのですが、目には愛嬌がありますし、口元は笑っているよう?
立てた尾は、ネコの場合は『ゴキゲンな気分』を表すそうですが、同じネコ科のトラはどうなのでしょう?

さて、虎の顔の方にある竹は葉を茂られせていて、彩色も比較的鮮やかに残っています。
『虎と竹』は古来から好まれた組み合わせですね。









彩色が剥げかかっていますが、黄色に黒いラインの虎の模様が分かります。










虎の背後の花は、色が剥げて黒くなってしまっていますが、花の中心部(蕊(しべ))の黄色が鮮やかです。
五弁の丸い花びらの形、、葉は描かれていないころ、そして枝とそれに付く蕾(つぼみ)の様子から、ではないかと思います。

紅梅だったのか白梅だったのか不明ですが、
虎の黄色と竹の緑色ときたら、梅は紅色の紅梅だと、より色が映えて華やかでは思いますハート




●向かって右の脇障子
の彫刻



は緑色の体をしていて、向かって右、お社の方を向いています。
体はうねり、手足は力強く開いていて、躍動感を感じますグッド

この龍の彫刻には、他の彫刻と違って植物らしいものを見当たりません。












龍の頭や上半身の周りには、まるで黒い花(茨城県のマークのバラのような渦巻(^^))がたくさんあるように見えますが、よく見ると渦巻く雲ではないかと思います。

こちらも色が剥げ落ちてしまっているので、白い雲だったか黒い雲だったかは不明です。
黒い雲だと凄みはありますが、ちょっと禍々しいので、多分白い雲だったのではないかと、勝手に想像しています(^^)。








また龍の足元は、緑色ですが、その形から、逆立つ波のようです。
いずれも風雨を司ると考えられている龍にふさわしい背景です。

反対側の脇障子の虎を『静』とすると、こちらの躍動感あふれる龍は『動』
静動のコントラストも面白いですちょき





さて、虎と龍の像は寺社彫刻では一般的のようで、どちらも吉祥文様の上、力強く神仏を守る聖なる獣だからと推察します。


でも!
・・・ということで、ここからは私の妄想になります(笑)ちょき

本シリーズ第1回の「厳島神社」
 → 絵解きに挑戦! 筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(前編)
の例を見てみます。

厳島神社は、方一間のお社で四方にある蟇股の全てに彫刻が施されています。
そして、本殿の背面の蟇股彫刻は『猪』でした。
私はこれは厳島神社の神使『蛇』(正面にある向拝の蟇股の彫刻=『蛇』)を、干支の『巳』に見立てて、『巳=蛇』を守る『裏干支』の『亥=猪』を彫ったのだと思っています。

日枝神社の神使『猿』を干支に見立てると『申』で、その裏干支は、奇しくも『寅=虎』!
そこで脇障子の一方は虎にして、『龍虎』という言葉もあるので対としてもう一方は『龍』にしたのか??

・・・でも、そらならどうして、(厳島神社のように)本殿背面の蟇股を作って、そこ虎を彫らないのか?
(ちなみに、先に見た 春日神社日枝神社両社拝殿 では拝殿の前面と背面に蟇股彫刻があります)
もしくは、脇障子の2つとも虎にしないのか?・・・という疑問は残ります(^^;)

本殿背面の蟇股がないことについては、この後で見ていく、双子のようにそっくりな造りのお隣 春日神社の神使は『鹿』で、干支の動物ではありません。
従って裏干支に該当する動物はいないため、そちらとの兼ね合いもあって、背面の蟇股は作らなかったのか??・・・とも思えますが。

・・・まあ、私の妄想はこのあたりで止めておきましょう♪


(3)-4 日枝神社 水引紅梁の木鼻



本殿 向かって左は、口を閉じた『吽形』











本殿 向かって右は、口を開けた『阿形』



長い鼻が特徴的です。

社寺彫刻で、このような鼻を持つ動物は、
』か『漠(ばく)』があります(文献1,2)

『象』はエレファントの象ですが、『漠』は想像上の生き物で悪夢を食べるとされ、吉祥文様として登場します。
どちらも長い鼻と牙を持つ動物として表現されます。

さて、『象』と『獏』の区別ですが、文献1によると、
『獏』は巻き毛を持ち、目は大きく眼光するどく、前足は獣の足の形とのこと。

ですが、この木鼻の彫刻は、

・巻き毛はない(毛の表現がない)
・垂れた大きな耳
・毛がない
・目が三日月状


以上の特徴は、同じく文献1より『象』の表現に当てはまるので、『』だと考えます。

ただし、こちらの彫刻には、『象』も『獏』も持つはずの 『』は見当たりません。


木鼻の彫刻の口元を見ると、2体とも口元に『牙』の根元らしきものがあるのが分かります。

牙を小さく表現しているのでしょうか?








それとも、もしかすると2体とも牙が折れてしまったのでしょうか??
でも、折れてしまったとしても、1本位残っていても良さそうですが。








(3)-5 日枝神社 向拝手挟(たばさみ)

向拝の庇(ひさし)の下にある、向拝手挟(たばさみ)という部分。
ここにも彫刻が施されています。


たくさんの花びらがある花の彫刻で、大変華やかです。

花は、牡丹か芙蓉か長春花(薔薇)のいづれかと思われます。

文献1より、葉の形と蕾の形から、長春花ではなさそうで、牡丹か芙蓉のようです。
同書では牡丹の葉は『深く三裂』、  
芙蓉の葉は『浅く五裂』となっています。

この日枝神社の手挟の彫刻では、葉は『深く三裂』にも『浅く五裂』にも見えます。
なので、葉だけでは牡丹か芙蓉か、もしくは両方ともあるのか、分りません。



そこで、花をもう一度よく観察すると・・・
蕊(しべ)が尖った円錐形をしています。

これは植物図鑑などで調べると良くわかりますが、芙蓉を含むムクゲ科の花の特徴です。
ボタン科の牡丹の花の蕊の形は全く異なります。

ということで、こちらの彫刻の花は、芙蓉だと考えます。
(豪華な八重咲きなので、酔芙蓉(スイフヨウ)かもしれません笑

でも、葉の形が芙蓉でないようなものも混ざっているのは、どうしてでしょう?

たまたま表現としてそうなったのか、彫師の人が混同していたのか?・・・なんて考えていたら、写真を見た家族から『葉が曲がって、五裂が三裂に見えているのでは?』と言われました。
よく見ると、確かそうかもしれません。
そうすると、葉の形も『浅く五裂』なので、やはり『芙蓉』だとして大丈夫でしょうちょき

3回に分けて日枝神社の装飾彫刻を見てきましたが、本シリーズの最初で見た厳島神社の装飾彫刻(前編後編)と比べると、かなり作風が違うのに気づきます。特に木鼻の彫刻など分かりやすい。

いろんな彫り師が関わっていたのが分かりますね豆電球

次回は、春日神社の彫刻を見ていきます。
 → 絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻4 ~春日神社(1)




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【参考文献】

1. 『図説 社寺建築の彫刻 東照宮に彫られた動植物』  高藤晴俊 著 東京美術

2. 『日光東照宮の謎』 高藤晴俊 著 講談社現代新書







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