2018年03月02日
シリーズ「筑波山名跡誌に書かれた場所を訪ねて」 (7) 橘川・迎来橋(前編)
シリーズ「筑波山名跡誌に書かれた場所を訪ねて」 (7) 橘川・迎来橋(前編)
江戸中期の”ガイドブック” 『筑波山名跡誌』(上生菴亮盛 著)(文献1)に書かれた名所・旧跡を訪ね、興味のおもむくまま♪ 関連する話題も調べるシリーズです。
(筑波山名跡誌に記載されている順ではありませんので、その点、ご了承ください)
今までのお話
→ シリーズ『筑波山名跡誌に書かれた場所を訪ねて』 (1)常陸帯宮(前編)
→ シリーズ『筑波山名跡誌に書かれた場所を訪ねて』 (1) 常陸帯宮(後編)
→ シリーズ「筑波山名跡誌に書かれた場所を訪ねて」 (2) 男女川(水源)
→ シリーズ「筑波山名跡誌に書かれた場所を訪ねて」 (3)夫女之原、夫女石
→ シリーズ「筑波山名跡誌に書かれた場所を訪ねて」 (4)亀之岳
→ シリーズ「筑波山名跡誌に書かれた場所を訪ねて」(5)観流庵(前編)
→ シリーズ「筑波山名跡誌に書かれた場所を訪ねて」 (5)観流庵(後編)
→ シリーズ「筑波山名跡誌に書かれた場所を訪ねて」 (6) 酒香川
第7回は、『橘川(たちばながわ)と 迎来橋(こうらいのはし)』を2回に分けて紹介します。
筑波山名跡誌では、『橘川 迎来橋』 と、二つで一つの項目で紹介されいてます。
前編の今回は『橘川』についてです。
【橘の香りがする橘川】
筑波山名跡誌の『橘川 迎来橋』の項には、
『筑波麓臼井村の耕地の用水川也。』
とあります。
当時から、橘川は、農業用水路だったようです。
同書では続いて、
『橘は此山の名物にて、水東谷より流れ落る。水気橘の匂あれば、土人橘川と号する也。』
とあります。
つまり、筑波山は橘が名産なので、山の東谷より流れる川の水には橘の香りがするので、土地の人は『橘川』と呼んでいたとのことなのです。
橘といえば、やはり、筑波山の名物の
ふくれみかん(福来みかん)
が浮かびますよね♪
ただし、橘の香りといっても、2種類あるかと思います。
1つは、『橘の実』の香り。つまり柑橘系の香り。
もう1つは、『橘の花』の香り。ジャスミンの花にも似た甘い香りです。
どちらも大好き♪
橘川の『橘』の香りは、どちらの香りだったのでしょう?
多分、季節によっても違いますよね
。
橘の花が香る初夏か、実が成る秋~冬か。
どちらも、良い香り

写真は2018年1月に撮影。
ふくれみかんを栽培する畑。

こちらは民家の庭に植えられていた柑橘類の実。
多分、大実のキンカンのように思われます。
美味しそう♪

こちらは初夏に咲く、ふくれみかん(福来みかん)の花。
2012年6月撮影。撮影場所は、臼井よりちょっと上の、清水~西山通り付近にて。
近くを歩くと、とても良い香りがします。
【橘川はどこを流れる?】
さて、その『橘川』、いったいどこを流れる川なのでしょうか?
筑波山名跡誌の記述より、
・場所は 臼井の集落近くらしい
・当時から農業用水路
ことだけわかります。
ここで『常陸国筑波山縁起』(国立公文書館所蔵)の絵図(文献2)を見てみると…
神郡・田井の集落から筑波山へ向かう、いわゆる『つくば道』(県道筑波山)は、
鴨居川(逆川、酒香川)を渡ります。
そして臼井の集落にさしかかるところに流れる細い川に、
『橘川』と書かれています。
同書の絵図では、橘川は、鴨居川(=逆川、酒香川※)の北部を、鴨居川と平行に流れる細い川として描かれています。
橘川の流れは、まず臼井村の東を流れ下り(千手川のようにも見えますが絵図なので詳細は不明)、臼井村の南側で向きを西に変え、山から流れ落ちる別の川(男女川か?)に合流するように描かれています。
ちなみに、鴨居川(逆川)も、この男女川らしい川に(橘川より南で)合流するように描かれています。
『常陸国筑波山縁起』の絵図は、イラストっぽいので、やや正確さに欠けるかもしれませんが、ひどく間違っていないないでしょう。
※
この鴨居川=逆川=酒香川 につきましては、前回の記事
→ シリーズ「筑波山名跡誌に書かれた場所を訪ねて」 (6) 酒香川

現地に行くと、今も細い用水路が流れています。
写真(2018年1月撮影)で、写真右にある、用水路と並行する道(手前から奥に向かう道)は、六所神社跡付近~旧筑波鉄道筑波駅跡付近をつなぐ道で、そこに交差する道(写真中央左から右に通る道)は、『つくば道』です。
写真は、六社神社跡方面を背に、旧筑波鉄道筑波駅跡方面を望んでいます。
この、道の脇を流れる細い用水路が、江戸時代の橘川に該当するように思います。
この用水路の上流は、筑波山麓フットパスマップ(文献5)を見ると、この地点より高い位置にある臼井の集落の中にあるようです。
なお、元禄七年(1694年)の筑波町沼田村と臼井村神郡村水論裁許絵図(文献3、4)は、その性格上、かなり流れを正確に描いたものと思われますが、フットパスマップ(文献5)を見ると、現在の川の流れや農業用水路は、当時と変わっているようです。
それにしても、古くからの名産 橘の香りがするからの名づけられた『橘川』
素敵な名前ですよね!
ただ残念なことに地元でも忘れ去られてしまったようで、ここを訪ねた時に、道におられた二人組の方に
『橘川というのがあるどうなのですが、どこでしょうか?』
と尋ねたら
、『ここで生まれ育ったのですが、橘川という名前は聞いたことありません…』
と言われてしまいました。
名産ふくれみかんの木は、現在も川の流れ沿いのあちこちの民家で見かけますし、是非、優雅な『橘川』という名前を復活
させて、看板に掲げたら良いのになぁと思います(^^)
後編に続きます
。
→ シリーズ「筑波山名跡誌に書かれた場所を訪ねて」 (7) 橘川・迎来橋(後編)
*************************************************************************
【参考文献】
1.『筑波山名跡誌 ―安永期の貴重な地誌再現―』 上生庵亮盛 著 桐原光明 解説 筑波書林
2.『平成24年度特別展 筑波山―神と仏の御座す山―』 茨城県立歴史館 編集・発行
p.90 『常陸国筑波山縁起 下巻 「筑波山南面の図」』
3.『いまに残る郷土の文化遺産 つくばの古絵図』
p.32-33 『筑波町沼田村と臼井村神郡村水論裁許絵図』
元禄七年(1694年)
4.『関東の名山 筑波山 筑波山神社案内記』
p.34-35 『筑波町沼田村と臼井村神郡村水論裁許絵図写』
元禄七年(1694年)原図の写し
5.『筑波山麓フットパス 神郡~六所~筑波』マップ つくば市 発行
江戸中期の”ガイドブック” 『筑波山名跡誌』(上生菴亮盛 著)(文献1)に書かれた名所・旧跡を訪ね、興味のおもむくまま♪ 関連する話題も調べるシリーズです。
(筑波山名跡誌に記載されている順ではありませんので、その点、ご了承ください)
今までのお話








第7回は、『橘川(たちばながわ)と 迎来橋(こうらいのはし)』を2回に分けて紹介します。
筑波山名跡誌では、『橘川 迎来橋』 と、二つで一つの項目で紹介されいてます。
前編の今回は『橘川』についてです。
【橘の香りがする橘川】
筑波山名跡誌の『橘川 迎来橋』の項には、
『筑波麓臼井村の耕地の用水川也。』
とあります。
当時から、橘川は、農業用水路だったようです。
同書では続いて、
『橘は此山の名物にて、水東谷より流れ落る。水気橘の匂あれば、土人橘川と号する也。』
とあります。
つまり、筑波山は橘が名産なので、山の東谷より流れる川の水には橘の香りがするので、土地の人は『橘川』と呼んでいたとのことなのです。
橘といえば、やはり、筑波山の名物の


ただし、橘の香りといっても、2種類あるかと思います。
1つは、『橘の実』の香り。つまり柑橘系の香り。
もう1つは、『橘の花』の香り。ジャスミンの花にも似た甘い香りです。
どちらも大好き♪

橘川の『橘』の香りは、どちらの香りだったのでしょう?

多分、季節によっても違いますよね

橘の花が香る初夏か、実が成る秋~冬か。
どちらも、良い香り


写真は2018年1月に撮影。
ふくれみかんを栽培する畑。

こちらは民家の庭に植えられていた柑橘類の実。
多分、大実のキンカンのように思われます。
美味しそう♪

こちらは初夏に咲く、ふくれみかん(福来みかん)の花。
2012年6月撮影。撮影場所は、臼井よりちょっと上の、清水~西山通り付近にて。
近くを歩くと、とても良い香りがします。
【橘川はどこを流れる?】
さて、その『橘川』、いったいどこを流れる川なのでしょうか?
筑波山名跡誌の記述より、
・場所は 臼井の集落近くらしい
・当時から農業用水路
ことだけわかります。
ここで『常陸国筑波山縁起』(国立公文書館所蔵)の絵図(文献2)を見てみると…
神郡・田井の集落から筑波山へ向かう、いわゆる『つくば道』(県道筑波山)は、
鴨居川(逆川、酒香川)を渡ります。
そして臼井の集落にさしかかるところに流れる細い川に、
『橘川』と書かれています。
同書の絵図では、橘川は、鴨居川(=逆川、酒香川※)の北部を、鴨居川と平行に流れる細い川として描かれています。
橘川の流れは、まず臼井村の東を流れ下り(千手川のようにも見えますが絵図なので詳細は不明)、臼井村の南側で向きを西に変え、山から流れ落ちる別の川(男女川か?)に合流するように描かれています。
ちなみに、鴨居川(逆川)も、この男女川らしい川に(橘川より南で)合流するように描かれています。
『常陸国筑波山縁起』の絵図は、イラストっぽいので、やや正確さに欠けるかもしれませんが、ひどく間違っていないないでしょう。
※

→ シリーズ「筑波山名跡誌に書かれた場所を訪ねて」 (6) 酒香川

現地に行くと、今も細い用水路が流れています。
写真(2018年1月撮影)で、写真右にある、用水路と並行する道(手前から奥に向かう道)は、六所神社跡付近~旧筑波鉄道筑波駅跡付近をつなぐ道で、そこに交差する道(写真中央左から右に通る道)は、『つくば道』です。
写真は、六社神社跡方面を背に、旧筑波鉄道筑波駅跡方面を望んでいます。
この、道の脇を流れる細い用水路が、江戸時代の橘川に該当するように思います。
この用水路の上流は、筑波山麓フットパスマップ(文献5)を見ると、この地点より高い位置にある臼井の集落の中にあるようです。
なお、元禄七年(1694年)の筑波町沼田村と臼井村神郡村水論裁許絵図(文献3、4)は、その性格上、かなり流れを正確に描いたものと思われますが、フットパスマップ(文献5)を見ると、現在の川の流れや農業用水路は、当時と変わっているようです。
それにしても、古くからの名産 橘の香りがするからの名づけられた『橘川』

素敵な名前ですよね!

ただ残念なことに地元でも忘れ去られてしまったようで、ここを訪ねた時に、道におられた二人組の方に
『橘川というのがあるどうなのですが、どこでしょうか?』
と尋ねたら
、『ここで生まれ育ったのですが、橘川という名前は聞いたことありません…』
と言われてしまいました。
名産ふくれみかんの木は、現在も川の流れ沿いのあちこちの民家で見かけますし、是非、優雅な『橘川』という名前を復活

後編に続きます

→ シリーズ「筑波山名跡誌に書かれた場所を訪ねて」 (7) 橘川・迎来橋(後編)
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【参考文献】
1.『筑波山名跡誌 ―安永期の貴重な地誌再現―』 上生庵亮盛 著 桐原光明 解説 筑波書林
2.『平成24年度特別展 筑波山―神と仏の御座す山―』 茨城県立歴史館 編集・発行
p.90 『常陸国筑波山縁起 下巻 「筑波山南面の図」』
3.『いまに残る郷土の文化遺産 つくばの古絵図』
p.32-33 『筑波町沼田村と臼井村神郡村水論裁許絵図』
元禄七年(1694年)
4.『関東の名山 筑波山 筑波山神社案内記』
p.34-35 『筑波町沼田村と臼井村神郡村水論裁許絵図写』
元禄七年(1694年)原図の写し
5.『筑波山麓フットパス 神郡~六所~筑波』マップ つくば市 発行
Posted by かるだ もん at 22:04│Comments(0)│茨城&つくば プチ民俗学・歴史
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