2018年02月08日
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻2 ~春日神社日枝神社両社拝殿
絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻2 ~春日神社日枝神社両社拝殿
筑波山神社の境内社(厳島神社・日枝神社本殿・春日神社本殿・日枝春日両社拝殿)の装飾彫刻の意味の読み解きにトライするシリーズ。
今までの記事
第1回: 厳島神社(前編・後編)
絵解きに挑戦! 筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(前編)
絵解きに挑戦!筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(後編)
2回目の今回は、春日神社日枝神社両社拝殿の装飾彫刻です。
(2) 春日神社日枝神社両社拝殿
筑波山神社拝殿に向かって右手、東に位置する場所に、春日神社・日枝神社が並んであります。
その手前に春日神社日枝神社両社拝殿があります。
(ちなみに、筑波山神社と両社拝殿の間に、マルバクスの木があります)
こちらの拝殿で、春日神社も日枝神社も一緒に参拝出来るシステム(?)なわけです。
『常陸七福神』の恵比寿像が筑波山神社に祀られているため、赤地に白抜きの字で『奉納 えびす神』と書かれたのぼり旗が奉納されている時もありますね。
---- (3/4追記) -----
表に恵比寿さんのご朱印の案内が置かれている、左側の間に恵比寿像らしい像が安置されています。
暗くて見えにくいのですが・・・。
その隣(奥)には太鼓が置かれていましす。
ちなみに向かって右の間(日枝神社のの前)には、お神輿と、壁には大きな天狗のお面があります。
(左右の間は暗いこともあり、注意して見たことがなかったので、今回あらためて確認しました)
------------------------
で、本来は、その後ろに並ぶ春日神社と日枝神社の両社の拝殿です。
中央の間に御幣が置かれ、左右には部屋があるようなので、それぞれの部屋でそれぞれの神社の神事を行っているのではないかと想像します。
さて、春日・日枝両社拝殿も、寛永十年(1633年)、三代将軍 徳川家光が寄進したもので、茨城県指定文化財です。
全体的にシンプルなデザインですが、一か所だけ、建物の正面上部の蟇股(かえるまた)に、装飾彫刻があります。
★前面の蟇股: おしどりの雄 と 水葵
下から見上げると、鰐口(わにぐち)の陰になって見えにくいのですが、水鳥らしい鳥 と 植物の彫刻。
水鳥は、特徴的な銀杏の葉のような形の飾り羽から、おしどりの雄かと思われます。
ちなみにこの飾り羽は、『思い羽(おもいば)』と呼ぶそうです。
一般に水鳥の装飾は、火を防ぐおまじないの意味があるようです。
おしどりも水鳥。
なので、こちらの両社拝殿に加え、春日神社本殿及び日枝神社本殿の火伏せ(防火)を祈願しているのかもしれません。
また水鳥の彫刻は水辺の植物がセットになっていることが多いようで、こちらの彫刻の植物は、葉の形から水葵(みずあおい)のようです。白い花と共に黄緑色のハート型の葉と、水面の波が彫られています。
寄進者が三代将軍徳川家光なのを考えると、徳川家の葵の御紋の『葵』に葉の形が似た『水葵』を使ったのかな?とも思えますが、真相はいかに?
さて、寺社の装飾彫刻では、おしどりはつがいで二羽一緒に彫られていることが多いようですが、こちらは雄一羽ですね。
『おしどり』は漢字で書くと『鴛鴦』(エンオウ)ですが、『鴛』(エン)は雄のおしどり、『鴦』(オウ)は雌のおしどりを指すそうです。どちらも訓読みは『おしどり』または『おし』。
するとこちらの彫刻は、雄のみなので『鴛』の彫刻ですね。
------- (3/4 訂正と追記) -------
以前書いたものには『おしどりの雌の彫刻がない』旨を書きましたが、後日、確認に行ったところ、背面の蟇股におしどりの雌のらしい彫刻があるのを確認しました。
以前の記事を修正削除し、以下の記事を追記しました。
★背面の蟇股: おしどりの雌 と 水葵
『つがい』で彫られるのが一般的な、おしどり(鴛鴦(エンオウ))。
では、雌のおしどり『鴦』(オウ)の彫刻はどこに?
実は、両社拝殿の背面の蟇股に、同じく水鳥の彫刻があります。
写真は日枝神社(左手)・春日神社(右手)の裏から、両社拝殿の背面を望む。
屋根の下に蟇股があり、彫刻が彫られています。
銀杏の葉のような『思い羽』がないので、おそらく、雌のおしどりでしょう。
前面の雄の彫刻と同じく、水葵と波が彫られています。
波は、雄のものより荒い波なのは、何か意味があるのかな?(← どうも妙に深読みする性格で)
こちらの両社拝殿は、
前面の蟇股の『おしどりの雄』の彫刻と、背面の蟇股の『おしどりの雌』の彫刻とで
挟んで、しっかり防火の御守としているのかもしれませんね♪
--------------------------------------------------------
さて写真の右に、脇障子が写っています。
このように建物左右に脇障子はありますが、建物側面と同じような黒い格子の壁だけで、装飾彫刻はありません。
※なお、写真中央の地面にある、中央に窪のがる平たい石3つは、江戸時代の中禅寺の建物の礎石の跡だと思われます。
(江戸時代の絵図では、両社拝殿と、春日神社・日枝神社を囲うように社殿・拝殿と同じ赤い塀があります。その塀の礎石だったのかもしれません・・・)
なお同じような形の礎石は、十年程前までは、筑波山拝殿や社務所の前(手すりの近く)にもあったのを記憶しています(その後、撤去した模様)。
このシリーズ、ぼちぼち続きます。
→ 絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(1)
【おまけ】
こちらの両社拝殿では、お賽銭箱と階段の下の門に注目。
あんぱんで有名な、『木村屋總本店』の銘入り。
それについては、以前書いた記事もご参照下さい♪
→ 筑波山神社 夏越大祓の茅の輪2007 & あの『あんぱん』
***************************************************************************
【参考文献】
1. 『図説 社寺建築の彫刻 東照宮に彫られた動植物』 高藤晴俊 著 東京美術
2. 『日光東照宮の謎』 高藤晴俊 著 講談社現代新書
3. 『寺社の装飾彫刻ガイド 百龍めぐり 関東編』 若林 純 著 日貿出版社
4. 『寺社の装飾彫刻 宮彫り―壮麗なる超絶技巧を訪ねて』 若林 純 撮影 構成 日貿出版社
5. 『寺社の装飾彫刻 関東編(下) 千葉・栃木・茨城・神奈川』 若林 純 撮影 構成 日貿出版社
筑波山神社の境内社(厳島神社・日枝神社本殿・春日神社本殿・日枝春日両社拝殿)の装飾彫刻の意味の読み解きにトライするシリーズ。
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第1回: 厳島神社(前編・後編)
絵解きに挑戦! 筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(前編)
絵解きに挑戦!筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(後編)
2回目の今回は、春日神社日枝神社両社拝殿の装飾彫刻です。
(2) 春日神社日枝神社両社拝殿
筑波山神社拝殿に向かって右手、東に位置する場所に、春日神社・日枝神社が並んであります。
その手前に春日神社日枝神社両社拝殿があります。
(ちなみに、筑波山神社と両社拝殿の間に、マルバクスの木があります)
こちらの拝殿で、春日神社も日枝神社も一緒に参拝出来るシステム(?)なわけです。
『常陸七福神』の恵比寿像が筑波山神社に祀られているため、赤地に白抜きの字で『奉納 えびす神』と書かれたのぼり旗が奉納されている時もありますね。
---- (3/4追記) -----
表に恵比寿さんのご朱印の案内が置かれている、左側の間に恵比寿像らしい像が安置されています。
暗くて見えにくいのですが・・・。
その隣(奥)には太鼓が置かれていましす。
ちなみに向かって右の間(日枝神社のの前)には、お神輿と、壁には大きな天狗のお面があります。
(左右の間は暗いこともあり、注意して見たことがなかったので、今回あらためて確認しました)
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で、本来は、その後ろに並ぶ春日神社と日枝神社の両社の拝殿です。
中央の間に御幣が置かれ、左右には部屋があるようなので、それぞれの部屋でそれぞれの神社の神事を行っているのではないかと想像します。
さて、春日・日枝両社拝殿も、寛永十年(1633年)、三代将軍 徳川家光が寄進したもので、茨城県指定文化財です。
全体的にシンプルなデザインですが、一か所だけ、建物の正面上部の蟇股(かえるまた)に、装飾彫刻があります。
★前面の蟇股: おしどりの雄 と 水葵
下から見上げると、鰐口(わにぐち)の陰になって見えにくいのですが、水鳥らしい鳥 と 植物の彫刻。
水鳥は、特徴的な銀杏の葉のような形の飾り羽から、おしどりの雄かと思われます。
ちなみにこの飾り羽は、『思い羽(おもいば)』と呼ぶそうです。
一般に水鳥の装飾は、火を防ぐおまじないの意味があるようです。
おしどりも水鳥。
なので、こちらの両社拝殿に加え、春日神社本殿及び日枝神社本殿の火伏せ(防火)を祈願しているのかもしれません。
また水鳥の彫刻は水辺の植物がセットになっていることが多いようで、こちらの彫刻の植物は、葉の形から水葵(みずあおい)のようです。白い花と共に黄緑色のハート型の葉と、水面の波が彫られています。
寄進者が三代将軍徳川家光なのを考えると、徳川家の葵の御紋の『葵』に葉の形が似た『水葵』を使ったのかな?とも思えますが、真相はいかに?
さて、寺社の装飾彫刻では、おしどりはつがいで二羽一緒に彫られていることが多いようですが、こちらは雄一羽ですね。
『おしどり』は漢字で書くと『鴛鴦』(エンオウ)ですが、『鴛』(エン)は雄のおしどり、『鴦』(オウ)は雌のおしどりを指すそうです。どちらも訓読みは『おしどり』または『おし』。
するとこちらの彫刻は、雄のみなので『鴛』の彫刻ですね。
------- (3/4 訂正と追記) -------
以前書いたものには『おしどりの雌の彫刻がない』旨を書きましたが、後日、確認に行ったところ、背面の蟇股におしどりの雌のらしい彫刻があるのを確認しました。
以前の記事を修正削除し、以下の記事を追記しました。
★背面の蟇股: おしどりの雌 と 水葵
『つがい』で彫られるのが一般的な、おしどり(鴛鴦(エンオウ))。
では、雌のおしどり『鴦』(オウ)の彫刻はどこに?
実は、両社拝殿の背面の蟇股に、同じく水鳥の彫刻があります。
写真は日枝神社(左手)・春日神社(右手)の裏から、両社拝殿の背面を望む。
屋根の下に蟇股があり、彫刻が彫られています。
銀杏の葉のような『思い羽』がないので、おそらく、雌のおしどりでしょう。
前面の雄の彫刻と同じく、水葵と波が彫られています。
波は、雄のものより荒い波なのは、何か意味があるのかな?(← どうも妙に深読みする性格で)
こちらの両社拝殿は、
前面の蟇股の『おしどりの雄』の彫刻と、背面の蟇股の『おしどりの雌』の彫刻とで
挟んで、しっかり防火の御守としているのかもしれませんね♪
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さて写真の右に、脇障子が写っています。
このように建物左右に脇障子はありますが、建物側面と同じような黒い格子の壁だけで、装飾彫刻はありません。
※なお、写真中央の地面にある、中央に窪のがる平たい石3つは、江戸時代の中禅寺の建物の礎石の跡だと思われます。
(江戸時代の絵図では、両社拝殿と、春日神社・日枝神社を囲うように社殿・拝殿と同じ赤い塀があります。その塀の礎石だったのかもしれません・・・)
なお同じような形の礎石は、十年程前までは、筑波山拝殿や社務所の前(手すりの近く)にもあったのを記憶しています(その後、撤去した模様)。
このシリーズ、ぼちぼち続きます。
→ 絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(1)
【おまけ】
こちらの両社拝殿では、お賽銭箱と階段の下の門に注目。
あんぱんで有名な、『木村屋總本店』の銘入り。
それについては、以前書いた記事もご参照下さい♪
→ 筑波山神社 夏越大祓の茅の輪2007 & あの『あんぱん』
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【参考文献】
1. 『図説 社寺建築の彫刻 東照宮に彫られた動植物』 高藤晴俊 著 東京美術
2. 『日光東照宮の謎』 高藤晴俊 著 講談社現代新書
3. 『寺社の装飾彫刻ガイド 百龍めぐり 関東編』 若林 純 著 日貿出版社
4. 『寺社の装飾彫刻 宮彫り―壮麗なる超絶技巧を訪ねて』 若林 純 撮影 構成 日貿出版社
5. 『寺社の装飾彫刻 関東編(下) 千葉・栃木・茨城・神奈川』 若林 純 撮影 構成 日貿出版社
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