絵解きに挑戦!筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(後編)


神社仏閣の建物を飾る装飾彫刻。
おめでたい意味を持つ吉祥文様や、大陸から伝わってきた古代中国の伝説、神仙、仏教説話題材を多く見かけます。

彫られる動物、植物、人物にはやはり意味があって選ばれているでしょうし、ストーリー仕立てになっているものもあったりで、それらを絵解きしてみるととても面白いのですキラキラ

筑波山神社の境内社(厳島神社・日枝神社本殿・春日神社本殿・日枝春日両社拝殿)の装飾彫刻の意味の読み解きにトライするシリーズ。

今回は、第1回 厳島神社の後編です。

 豆電球前編は→ 絵解きに挑戦! 筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(前編)

筑波山神社境内にある厳島神社は、江戸時代は『弁天堂』だったことを念頭に、お読みください。

後編は、社殿の左右にある『脇障子』の彫刻と、向拝の『木鼻』の彫刻についてです。


⑥ 母屋(もや)に向かって右の脇障子 :唐松の木と、男性像(後ろ姿)

『脇障子』とは、回廊の行き止まりにある板状の壁で、こちらにも装飾彫刻が多く見られます。
こちら厳島神社にも脇障子があり、人物と木の彫刻が彫られています。




向かって右の脇障子には、木と男性像。
この木は、緑色の『花』のようなものから、松の葉の集まりを丸くデザインして描かれる『唐松』かと思われます。

※ちなみに、これとは別に『大和松』と呼ばれる葉のデザインもあり、これは屏風など日本伝統絵画に描かれる松の木の葉のように、上に向かって扇のように広がるデザインで表わされるとのこと(文献1、2)。

男性は緑の岩のような場所に立っています。

また松の幹やこの『岩』のようなものには、どちらにも白く丸い模様がいくつも描かれており、これはいわゆる木の幹や岩に生える藻か苔か(特に地衣類っぽい?)を表わしているのではないかと思います。

男性像は、横向きで、自分の左手(本殿)の方を見ています。
手元にあるのはでしょうか。

仮にこちらの男性像を、男性像A とします。





⑦ 母屋(もや)に向かって左の脇障子 :梅の花木と、男性像と酒器らしいもの



この木は、赤い花と枝ぶりからも想像して、の木でしょう(文献1)。
 
酒器らしい細い首の壺と杯が傍らにあり、お酒を飲みながら梅の花を愛でているのでしょうか笑
 
立っている場所はAと同じように緑の岩のような場所。
梅の幹と『岩』のような場所には、⑥と同じく藻か苔か地衣類を表わすような模様があります。

しかしこちらの場合、よく見ると三か所ほど、同じ緑色ですが、植物の葉と花らしいものも彫られています。
文献1にある『笹』 の図像によく似ているので、を表わしているのではないかと思われます。


こちらの男性像は正面を向いていますが、視線は自分の左下(本殿の床)の方へ。
こちらの男性像を 男性像B とします。



⑥⑦のA、Bの男性像が意味するところは、浅学にして現時点では分かりませんが、硯や酒器があるので、
いわゆる昔の中国の文人墨客を表しているのでしょうか。


【脇障子の彫刻の図像の謎解きに挑戦!】

個人的に気になったのが、

男性像Aは横向きで、自分の左を見ている

本殿 もしくは、(向こう側にある)男性像Bを見ている?

男性像Bは正面向きだが、顔は自分のやや右下(本殿の床)を見ている

どこを見ているのか?


このなぞ解きはいかに?(または特に意味はないのか(笑))

・・・ここからは、想像力を超~たくましくして、考えてみました。


古来、文人墨客が好んだのは
詩、酒、琴』の『北窓三友』

そして、文人画で好まれる題材に
松、竹、梅』の『歳寒三友』。

こちらの厳島神社(弁天堂)の左右の脇障子に彫られているのは、どちらも文人らしい男性像とともに、
』 と 『 (→ 詩を書く)』、
』 と 『酒器 (→ お酒を飲む)』。

・・・こうくると、残りの『と『』も欲しくなりませんか?
  
男性像A with 松&硯(ぐるっと回って反対の位置にある)男性像Bを見て

男性像B with 梅&酒器視線をやや右、つまり本堂の方を見ている

本堂に祀られているのは、建立当時は弁才天

弁才天は楽曲の神様でもあり、(琴ではありませんが)琵琶を弾く姿は有名(琴も琵琶も弦楽器という意味では似ている)。

では、はどこに?

ここで、こちらの社の傍らの説明版の謂れ書きを思い出すと・・・。

創建当時、祀られた弁才天が分霊されてきたのは、琵琶湖の中に浮かぶ『竹生島
 
なんと、 琵琶(←→ 琴)』 と 『』 を表わすもの、それは 本堂に祀られている弁才天そのもの

なんて洒落っ気のあるデザイン!ハート
私はそんな風に謎解きしました♪グッド 

本当の意味を専門家に教えて頂くのが一番なのですが、
素人の謎解きの答えとしては、結構いいセン行ってるのではないかと悦に入ってます(^^)vちょき

※なお、向かって左の脇障子の『笹』らしい図像ですが、『笹』と『竹』は植物としては近い仲間ですが、図像としては意味が異なるようなので、『笹』の彫刻は『竹』を表すものではないと考えます。


⑧ 水引虹梁の木鼻: 『龍』か?『息』か? はたまた『猪』か??


社屋の正面のひさしがある部分『向拝)の屋根を支える左右の柱を、『向拝柱(こうはいはしら)』と呼び、
その左右の向拝柱の正面の上部を横に繋いでいる梁を、『水引虹梁(みずひきこうりょう)』と呼ぶそうです。

向拝柱を貫いて飛び出た水引虹梁の先を『木鼻』と呼び、ここにもよく装飾彫刻が見られます。






厳島神社の木鼻の彫刻は、龍の横顔のように見えますが、一般的に描かれる龍の長い2本のヒゲが、これにはない
そして、口の先端は、豚か猪のように上にめくれている

文献1、2によると、これは『龍』ではなく、『龍』に大変よく似た想像上の動物の、『』のようですが、同書にはまた『息』は巻き毛で、『龍』は直毛とも。

こちらの木鼻の彫刻には、顔の周りに『直毛』状の毛らしい模様が描かれてます。

う~ん、『息』というより『龍』でしょうか?
または、まさかの猪? ← 弁才天の神使である蛇(巳)の裏干支の猪(亥)。 詳細は 前編 ご参照下さいちょき

多分、一般的である『龍』なのかもしれませんね。

さて、この木鼻の『龍』(もしくは『息』?『猪』?)は、向かって右のものは口を開けていて『阿』型





左のものは口を閉じていて『吽』型です。


筑波山神社の境内社の厳島神社は小さなお社(お堂)ですが、装飾彫刻は華やかで、見どころが多いですちょき





このシリーズ、ぼちぼちと続きます笑
 → 絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻2 ~春日神社日枝神社両社拝殿




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【参考文献】

1. 『図説 社寺建築の彫刻 東照宮に彫られた動植物』  高藤晴俊 著 東京美術

2. 『日光東照宮の謎』 高藤晴俊 著 講談社現代新書

3. 『寺社の装飾彫刻ガイド 百龍めぐり 関東編』 若林 純 著 日貿出版社

4. 『寺社の装飾彫刻 宮彫り―壮麗なる超絶技巧を訪ねて』  若林 純 撮影 構成 日貿出版社

5. 『寺社の装飾彫刻 関東編(下) 千葉・栃木・茨城・神奈川』   若林 純 撮影 構成 日貿出版社









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