筑波山を中心とした「太陽の道」を探る(5) 冬至に筑波山から日が昇るライン ― 古墳・遺跡と、古代太陽祭祀の香り?
(初出:つくば市民レポーターサイト 2012年1月14日 17時10分)


筑波山を中心とした「太陽の道」 (春分、秋分、冬至、夏至に、筑波山に日の出、日の入りが見られる、信仰の地、遺跡を繋いだライン)を、探訪する旅の5回目、
いよいよ3つめのライン、冬至の頃、筑波山から日の出/日の入りが見られるラインです。今回はぞの前半、筑波山から日の出が見られるライン探訪です。

前回までの話は、

筑波山を中心とした「太陽の道」を探る(1) 筑波山の真東ライン ― 夫婦神の山から望む日の出の地「子生」
筑波山を中心とした「太陽の道」を探る(2) 筑波山の真西ライン ― ライン東端と西端に共通する聖地?
筑波山を中心とした「太陽の道」を探る(3) 夏至に筑波山から日が昇るライン― 子授けの聖地ラインの予感?
筑波山を中心とした「太陽の道」を探る(4)―夏至ラインに筑波山頂日の入り 鹿島―筑波山ラインに乗る錚々たる神社・遺跡群!

をご参照下さい。

(※2011年10月30日に放送したラヂオつくば「つくば井戸端レポーター」の内容に情報追加、再構築しています)


5.冬至に筑波山から日が昇るライン

 重要な遺跡が乗ること、また修験道のお寺が乗ること。


(1)筑西市(旧下館市) 葦間山古墳

 筑波山の方から県道14号で、下館方面に向かって走っていくと、小貝川のすぐ手前付近で左手に集落の中にこんもりした山が見えてきます。これが葦間山古墳です。 
 (ここは放送後に調べて分かった場所なので、放送では話していません)  
 


筑波山を中心とした「太陽の道」を探る(5)2012年1月撮影。
かなり削り取られて小さくなっているようですが、1990年筑波大学の調査によると、復原全長141mの前方後円墳とのこと [文献1] 。
 この近くには、大畑古墳、灯火山古墳(いずれも旧明野町)もあり、「当地域一帯を支配した豪族の存在を伺うことができる」そうです[文献1」。





筑波山を中心とした「太陽の道」を探る(5)さらに、「葦間山古墳は、古代新治国内では最大の規模を有することから、 一説には新治国造の祖《比奈良珠命(ひならすのみこと)》の墓」とも伝えられています」とのこと [文献1]。

写真中央の白い木の標識「葦間山古墳」。

墳丘頂上には、神社の祠がありました。神社としての参拝道は写真向かって左の方で鳥居もあります。




筑波山を中心とした「太陽の道」を探る(5)神社の前から、木々の向こうに、筑波山山頂が見えます。
Google Earthで見ると、冬至の頃、山頂付近から日が昇ってくるのが見られるようです。
ご近所の方、見られるようでしたらご一報頂けると幸いですにこにこ






筑波山を中心とした「太陽の道」を探る(5)葦間山古墳すぐ近くの小貝川堤防から、日光男体山がよく見えます。(写真では小さいですが、肉眼ではかなり大きく見えます)

筑波山から冬至の日の出を迎え、交通の要所、小貝川のそばで、日光男体山も望めるこの地、古代のこの土地の首長にふさわしい場所に感じます。








(2)栃木県小山市 国指定史跡 寺野東遺跡

 茨城と栃木の県境付近に位置します。結城から車で15分位北上したところに、「寺野東遺跡」があります。

 「西の吉野ケ里、東の寺野東」というそうです…知らなかった 。

 田川沿いの丘陵地帯にあり、現在は「おやま縄文まつりの広場」として、資料館もある大きな公園となっています。
(詳細: 小山市ホームページの「おやま縄文まつりの広場」


筑波山を中心とした「太陽の道」を探る(5)2011年10月撮影
復元された環状盛土遺構の一部。 広大な遺跡の一部を、公園として復元。
資料館も含め、見ごたえあります。

 旧石器時代~平安時代にかけてのムラ、墓地があったとのこと [文献2]。

 特に有名なのが、土を大きく環状に盛り上げて作った「環状盛土遺構」と、小川の水をムラに引いてきて生活用水として利用した「水場遺構」だそうです。 [文献2]

盛土量は、大型ダンプ1500台分に相当するそう[文献2]。すごい。


筑波山を中心とした「太陽の道」を探る(5)また、資料館の説明によると、大きな祭祀跡も特徴とのこと。発掘された大量の土偶や祭祀に使われたらしい道具が、資料館展示されていました。


この2枚の写真は、環状土塁の中心付近にある、石をまばらに敷いた「石敷台状遺構」。何が行われた場所なのでしょうか。




筑波山を中心とした「太陽の道」を探る(5)写真中央の人の向いている方向に筑波山があります。

 この日はうす曇りで、筑波山は見られませんでしたが、「ここは、正月前後、筑波山から昇る朝日の写真を撮るスポットで有名です」との、資料館の方のお話でした!


実際、「ダイヤモンド筑波(筑波山頂に輝く太陽)」の美しい写真が資料館廊下に飾られていましたちょき

古代の集落で、冬至の頃、日が昇る筑波山に向かって、衰えいく太陽の復活を祈る祭りと祈りが行われたのではないか・・・と、やっぱり考えたくなります。

 
(3)参考:栃木県平井町 太平山神社

 まだ、行っていないのですが、地図を見て、大変気になる場所に「太平山神社」があります。
 冬至ライン上よりやや南に位置します。

 Google Eeathで見ると、

  冬至のころ筑波山塊南端(宝篋山か?)から日が昇り、
  春分・秋分は、岩瀬・笠間方面から、
  夏至は、益子の山々と、八溝山系の中間付近方向から日が昇るようです。

 太平山神社のHPによると、「日、月、星を祭る神社」とのこと!

 上述したように、年間の日の出の位置の移動が、地理的特徴から印象的であり、暦の目安が分かりやすい土地であるのは事実です。 
 また同じく同神社HPより、太平山では古代祭祀の遺跡が出土しているとのこと。

 大昔から、太陽そして、月・星の動きを読んで占ったり、神として祀ったり等が行われた場所なのかもしれません。想像は膨らむ~

 ちなみに幕末の天狗党は、筑波山、太平山にこもっています。

 近いうちに、こちらにも行ってみたいと考えています。


今回の地図↓↓
http://g.co/maps/93vjv


さて、次回はこのシリーズ最終回、冬至に筑波山に日が沈むライン。これもかなり興味深いものが乗ってきます。古代からの常陸の国の信仰史が立ち上ってくる気がします。

→ 筑波山を中心とした「太陽の道」を探る(6) 冬至に筑波山頂きに日の入りライン ― 常陸国古代からの歴史変遷・信仰変遷が伺えるライン?
お楽しみに。






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参考文献

1. 「茨城の考古学散歩」 茨城県考古学協会

2. 「全国訪ねてみたい 古代遺跡100 日本古代遺跡観察図鑑」 岡村道雄監修 成美堂出版




掲載当時頂いたコメント

 古墳は30年ほど前に群馬県太田市の大きな前方後円墳を見ました。
かるだもんさんはすでにご存知とはおもいますが
茨城県でも土浦から霞が浦大橋が見えてから左にまがると
富士見?古墳があります。
資料館があり公園になっていました。10年以上前の記憶ですが。

 埼玉には大規模な古墳群があり見学しましたがこれもずっと以前に
見ました。埼玉を中心に関東には沢山の古墳があったのでしょう。
茨城県でも削ったりしないで、保存して欲しいものです。
 子供の時50年以上前に世田谷等々力で円墳を見ました。
なんだろう?これはと思いました。まだ残っているといいのだけれど。
              ポップコーン
by ポップコーン at 1月16日 10時47分


ポップコーンさま
 ありがとうござます。群馬の古墳はまだ見たことなので行ってみたいです。
 霞ヶ浦近くの富士見塚古墳は、実は前回の「筑波山を中心とした「太陽の道」を探る(4)」で紹介させて頂きました。良かったご覧下さい(^^)。
埼玉の古墳群は本当にすごいですね!去年たまたま行ってみてびっくりしました。
 世田谷等々力の古墳、まだあるようです。妹が近くに住んでいてうちの子供達を連れて行ってくれたことがるので。
 ポップコーンさんも、古墳お好きなんですね♪また情報がありましたら、是非ご教示ください!
by かるだもん at 1月18日 19時04分




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