【つくば・茨城 プチ民俗学】 つくば近郊 だいだらぼっちの足跡を探して(2)

(初出:2012年3月24日 12時31分)

(2012年1月29日放送 ラヂオつくば「つくば井戸端レポーター」の放送内容を再構築しています。)

 ※だいだらぼっちは、だいだらぼう、でーだらぼう・・・といろんな呼び方がありますが、ここでは「だいだらぼっち」または「だいだらぼう」と書きます。


 めっぽうでっかい人が山や池を作った…と考えるのは、豪快で楽しい。古今東西の神話・伝説でもおなじみの題材です。

 またローカルなつくばのジョーク(?)で、

牛久大仏は有事の際、つくばエキスポセンターのロケットと、松見公園の栓抜きタワーを持って戦う

 というのを聞いたことがありますが、これも一種の「だいだらぼっち」タイプ伝説の変形とも言えるでしょう。

 そういったわけで、前回は 知られざるつくばでの「だいだらぼっち」伝説の地とそれに関わる周辺の地域を推理してみました。(→ 「【<つくば・茨城 プチ民俗学】 つくば近郊 だいだらぼっちの足跡を探して(1)

 さて、引き続き今回は、さらに、県南、県西地区のだいだらぼっち伝説の地を探索してみました。
 ※本文中の物語のパターンわけ(①②③)については前回をご参照ください


2.桜川市 岩瀬の「だいだらぼうが担いだ石」 (物語パターン③) 

旧岩瀬町(現 桜川市)の平沢地区の山の中腹に、「だいだらぼうが担いだ」と伝わる巨石があります。
 詳細は、既に昨年8月にこちらのブログで報告しておりますので、次のページをご覧ください。

 → 「【つくば、茨城 プチ民俗学】 茨城県内の巨石を訪ねて・・・ 知る人ぞ知る巨石を4つご紹介(後編)」 



つくば近郊 だいだらぼっちの足跡を探して(2)だいだらぼうの背負い石






つくば近郊 だいだらぼっちの足跡を探して(2)これが、だいだらぼうのつけた足跡だ!?
いずれも2011年8月撮影


 石には「だいだらぼうの足跡」と言われる窪みと、「かついだ時についた縄の跡」と言われる岩の模様があります。石の近くには、この石にまつわる伝説が書かれた石碑も建っています。

 こちらに伝わる話は、他の伝承とちょっとパターンが違い、

 ★ 「だいだらぼっちが背負ってきた石がここで、落ちて動かなくなり、動かそうとして足で蹴ったら、石に足跡がついた。なのでそのままここに置き去った。石には背負い綱の跡もある…

というあらすじです。


3.石岡 代田(だいだ)地区 (物語パターン②)

 文献1によると、だいだらぼっちがつけた足跡だという窪地(水田)があると言います。

 あらすじは

 ★ 「筑山と富士山の重さを比べるため、天秤棒の端と端にそれぞれ縄で結えて持ち上げたら、筑波山の方の縄が切れて筑波山が落ちてしまい、二つに割れてしまった。 
 だいだらぼうが歩いた時の足跡が、代田にあり、他の田より幾分低い、1反歩ほどの水田

 

 しかも、興味深いことに、この石岡市の代田(だいだ)地区は、「ダイダラボッチ」と呼ばれる大人形を辻に飾る風習で、知る人ぞ知るスポットです。
 この大人形については、ここも以前、ここのブログで紹介させて頂きましたでの、詳細はこちらをご覧ください。
→ 「つくばプチ民俗学 (茨城プチ民俗学) 辻に立つ大人形(人形道祖神)」
 




つくば近郊 だいだらぼっちの足跡を探して(2)辻に飾られた大人形「ダイダラボッチ」
撮影場所は「代田」に隣接した「井関」付近で撮影







つくば近郊 だいだらぼっちの足跡を探して(2)左の人形が飾られている付近の景色
いずれも2010年8月撮影

 このような人形を、「人形道祖神」と呼ばれ、道路の交差点、辻に置かれる一種の魔よけ人形だそうです(文献2、3、4、)。
 ワラや杉の葉、木の枝、野菜で作られています。代田地区では、毎年8月15日頃に作られて、地区の何箇所かに置かれているそうです。

 参考:石岡市HPより「代田の大人形 通称「ダイダラボッチ」」
http://www.city.ishioka.lg.jp/index.php?oid=904&dtype=1000&pid=228

 なお、別の土地では、このような大人形を「鹿島様」と呼ぶことが多いようです(文献2、3、4)。
 だいだらぼっちの足跡の伝承がある「代田」という地名の場所で、しかも「ダイダラボッチ」と呼ばれる大きな人形が魔よけで作られている! これは貴重な言い伝えと風習です 


4.守谷市 立沢地区 (物語パターン②)

 こちらでは、主人公はだいだらぼっちではなくて、弁慶としてパターン②のストーリーが伝わっています。(文献5)
 なお、だいだらぼっち伝承と弁慶伝承は重なる土地が多いとのこと(文献6)なので、今回訪ねてみました。

 あらすじは

 ★「武蔵坊弁慶がまだ義経の家来になる前、常陸坊海尊を訪ねて鹿島に行く途中、立沢の里で立ち止まって景色を見た。
 関東平野の彼方の富士山と、此方の筑波山に見惚れ、重さを比べようと天秤棒にそれぞれの山を括りつけた。すると筑波山の方が揺らぎ、山頂が二つに割れた。
 その時にふんばってついた足跡が、立沢にあるという


 というもの(文献5)。 「弁慶の足跡」と言われる湿地があると伝説は言います。

 ところが、地元の守谷の昔話の本(文献7)、や町史(文献8)では、該当する話は見あたりません。ただしこちらでも、地元でひっそりと伝わる伝承があるのかもしれませんが。

 場所は、アサヒビール守谷工場、守谷市役所、中央図書館の付近。
 昔の地図を見ると、この辺りは、もともと台地に谷津が多く入り込み、湿地が多い地域のようです。

 訪ねてみると、「守谷湿地」と呼ばれる場所(看板あり)があった。「立沢」の名前の元になった(文献9)、寺や香取神社前の田を撮影。




つくば近郊 だいだらぼっちの足跡を探して(2)「守谷湿地」付近






つくば近郊 だいだらぼっちの足跡を探して(2)香取神社付近


 外の土地で、「立沢にあるという」という形で語り継がれている話があって、当地ではあまり伝わっていない(?)パターンが面白いです。(もしかすると真壁も同じ?)


 さて、調べていくうちに、県南西部にはまだまだ「だいだらぼっち」伝説の地があるのが分かってきました。
 しかも、今までにないパターンもあります。

 次回に続きます! → だいだらぼっちの足跡を探して(3) 利根町、結城市、八千代町 

今回訪ねた場所の地図はこちら→  http://g.co/maps/d4t8k


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参考文献

1.「常陸の伝説」 藤田 稔 編著 第一法規
2.「目で見る民俗神 第三巻 境と辻の神」萩原秀三郎著 東京美術
3.「平穏を願う 東日本のわら人形<写真集>」 新里源治著 フォト民俗社
4.「あるく みる きく vol.144」pp.4-33 「わら人形を訪ねて」「人形道祖神さまざま」神野善治著 近畿日本ツーリスト発行
5. 「茨城の史跡と伝説」 茨城新聞社 編 暁印書館
6.「だいだらぼうの足跡」 柳田國男 (現代日本文学大系20 柳田國男集」) 筑摩書房 )
7.守谷の昔話の本、古老に聞いた守谷の昔の話 守谷市教育委員会生涯学習課/編 (守谷市教育委員会 出版)
8.守谷町史
9.「角川日本地名大辞典8 茨城県」 角川書店


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この記事へのコメント
石岡のだいだらぼっち、探しに行って4体見つけました。
http://stk1031.blogspot.jp/2014/10/blog-post_12.html

http://stk1031.blogspot.jp/
Posted by stk at 2017年08月24日 07:36
stkさま
コメントありがとうございます!
石岡(井関地区付近)のだいだら法師/大人形をご覧になられたことが、おありなんですね!いわゆる「人形道祖神」、最初見るとびっくりしますよね。いつまでも続いていてほしい風習だと思います(^^)
当ブログでもかなり以前、この石岡 井関地区付近の大人形(だいだら法師)について触れたので、良かったら♪ →『辻に立つ大人形(人形道祖神)』 http://cardamom.tsukuba.ch/e226544.html
Posted by かるだもんかるだもん at 2017年08月24日 21:25
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