絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(2)


筑波山神社の境内社(厳島神社・日枝神社本殿・春日神社本殿・日枝春日両社拝殿)の装飾彫刻の意味の読み解きにトライするシリーズ。

今までの記事

第1回: 厳島神社(前編・後編)
  豆電球絵解きに挑戦! 筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(前編)

  豆電球絵解きに挑戦!筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(後編)

第2回: 春日神社日枝神社両社拝殿 
  豆電球>絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻2 ~春日神社日枝神社両社拝殿

第3回:日枝神社(1)
  豆電球絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(1)


前回に引き続き、日枝神社の彫刻です。
今回は、日枝神社の 母屋(もや)の蟇股彫刻を見ていきます。


(3) 日枝神社~その2~ 母屋正面にある3つの蟇股の彫刻

ひさしのように張り出す向拝の奥にあって見えにくいのですが、 母屋(もや)の正面にも蟇股が3つあります。

近づいて見られないので、遠くから、向拝の彫刻(透かし彫り)越しに見ることが出来ますが、私は目が悪いので、カメラのズームで写真を撮って確認しました。

母屋の3つの蟇股には、それぞれ一羽ずつ鳥と、その脇に花の彫刻が確認出来ます。
向拝の猿の彫刻と違って、直接風雨や日光に晒されていないためか色鮮やかで、遠目で見て傷みもあまりないように見えます。

鳥の彫刻は、体の表現の特徴として、

・冠羽はない。
・尾が長めで、先が細くなっている。
・体の色は、全体的に茶色~赤銅色

ということから、『山鳥』ではないかと思います(文献1)。

また鳥の脇に彫られた花は、

・花弁が五弁で、先が細くなっている
・ラッパ状の形
・濃い紅色の花
・花の中心の表現が2通り


という特徴があります。
何の花か後述していきます。


では、具体的に写真を見ていきましょう。

(1)向かって左の蟇股:


は体ごと、向かって右側(中央の方向)を向いています。
体の色は、茶色~赤銅色のほぼ一色。
これは後述する他の2つの蟇股の鳥と違っています。







この彫刻がある位置は、違う方向2か所から写真を撮ることが出来て、尾の羽の形は先がとがっているのが分かります。模様らしいものは見えません。








こう見ると、かなり立体的に彫られているのが分かります。
肢も、踏ん張るように力強く立っていますね。











足元の花は上記と同じ形状の五弁の花弁で濃い紅色。
花の中心は、小さく黄色っぽい点があります。
葉のエッジにギザギザはなく、楕円のような形で先が細くなるすっきりした形の葉。









同じ足元の花を、違う角度から撮った写真。









こちらは鳥の頭の近くにある花。


ラッパ状の形の花です。








(2)中央の蟇股:


中央の蟇股の鳥は、体は正面を向きながら、尾を少し広げて、首を大きく、向かって右の方向を向いています。

背や翼は茶色~赤銅色ですが、頭から首、胸にかけては濃紺から濃い紫色に見えます。





違う角度から撮った写真。
躍動感がある像ですね!











足元の花は、上記と同じラッパ状の花で五弁の濃い紅色の花弁。








花の中心にも同じく、小さく黄色っぽい(白っぽい)点があります。

 







(3)向かって右の蟇股:


こちらの鳥は、体全体を向かって左側(中央の方向)に向けています。

体は翼、背、尾は茶色。翼の先は白っぽい。
胸から腹にかけては(2)と同じく濃紺か濃い紫色に見えます。






さて花の彫刻ですが、こちらは尾の近くの花。
上記(1)(2)の2つの違って、花の中心には蕊(しべ)らしい表現がはっきり見えます。








こちらは頭の近くの花。
こうやってみると、この蟇股の花の彫刻は、他の2つよりも写実的なのが分かります。
明らかに作風というか表現が違います。

それとも違う花なのか、彫り師が違って表現が微妙に違うのか・・・どうなのでしょう?

3つの蟇股の花に共通の花の色、形状、葉の形、そして特にこの一番右の蟇股の花にある蕊(しべ)の表現から、作風は違いますが、どれもツツジではないかと思っています。

でも、どうして表現方法を統一しなかったのか?…妄想が勝手に膨らみます(^m^)


同様に鳥の形についても、色の表現や顔の表現を見ると、今度は一番左(1)の蟇股の鳥の作風が、色や顔の表情など、他の2つ(2)(3)とちょっと違うように感じます。

例えば分かりやすいのが、鳥の顔の比較で、


(1)向かって左の鳥
ピンぼけ写真で申し訳ありませんが、嘴は閉じているのが分かります。目の周りというか頭半分が白っぽいのは、彩色か、色が剥げ落ちているのかは不明。








(2)中央の鳥
目力が強いですね!
嘴はやや開き気味。








(3)向かって右の鳥
横顔で、写真はやや後方から撮ったものですが、こちらも目力は強い感じ。
嘴は開いています。





こう比較すると、(1)の鳥の顔つきは、(2)(3)よりも優しげな感じです。
(1)の鳥は色も地味で茶色~赤銅色の1色なのでで、(2)(3)は色も少なくとも2色で、顔も精悍な感じなので、なのかもしれません???。


なお文献1では、図像的な表現として、山鳥は『目の周りに「杏状」の隈取りがある』そう。この隈取りがどんなものなのか分からないのですが、上の3枚の顔写真では、目の周りの隈取りはよくわかりません。

また、よく似た鳥に雉(キジ)もいますが、同じく文献1によると、雉の場合、図像的には、特に雄は模様と彩色が鮮やかなのと、頭に『耳羽』があるので区別できるよう。

また山鳥の場合は、図像では『全体的に赤銅色で、背、胸、腹に白黒の斑点がある』とのことで、白黒の斑点らしいものも写真では確認出来ません。
しかし、体の形の特徴と、全体的に茶色〜赤銅色なので、私はこれらの鳥の彫刻は『山鳥』ではないかと考えます。


さて、上の写真でも分かるように、これらの3つの鳥の向きは

(1)向かって左の鳥()   (2)中央の鳥()   (3)向かって右の鳥(
(※矢印は顔の向き)

(1)メス・(2)オスの鳥は つがい で、近づいてきた(3)別のオス に対して、オス(2)が威嚇しているようにも見えせんか?
(だから、(2)(3)の目力が強く、嘴も鳴いているように開いている?)

・・・妄想が膨らみます♪(^m^)


日枝神社の祭神は大山咋神(オオヤマクイノカミ)。山の神様です。
神使は『猿』で、それは向拝の蟇股に彫られていています(前回の記事参照)。

母屋の蟇股の『鳥』と『花』が、『山鳥』と『山つつじ』だとしたら、やはりご祭神が山の神様だから『山』繋がりの組み合わせなのかなぁ?
・・・と、素人考えで思うのですが、どうなのでしょう??

細かいことですが、考えると興味がつきません♪


さて次回は、日枝神社の蟇股以外の彫刻についてです。


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【参考文献】

1. 『図説 社寺建築の彫刻 東照宮に彫られた動植物』  高藤晴俊 著 東京美術

2. 『日光東照宮の謎』 高藤晴俊 著 講談社現代新書








  

絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(1)


筑波山神社の境内社(厳島神社・日枝神社本殿・春日神社本殿・日枝春日両社拝殿)の装飾彫刻の意味の読み解きにトライするシリーズ。

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第1回: 厳島神社(前編・後編)
 豆電球絵解きに挑戦! 筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(前編)

 豆電球絵解きに挑戦!筑波山神社 境内社装飾彫刻1~厳島神社(後編)

第2回: 春日神社日枝神社両社拝殿 
  豆電球絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻2 ~春日神社日枝神社両社拝殿


さて、いよいよ春日神社本殿日枝神社本殿です。

双子のように同じ形のお社がなかよく並んでいる、日枝神社と春日神社笑
どちらも『三間社流造』 で、前回紹介した両社拝殿とともに、寛永十年(1633年)に建立されたもので、茨城県指定文化財です


この両拝殿は特に正面側に装飾彫刻が多いので、それぞれ数回に分けて考えていきます。


まずは 向かって右側の日枝神社からです。











(3) 日枝神社~その1~ 向拝の3つの蟇股の彫刻


本殿の正面に庇(ひさし)のように前に屋根が張り出す『向拝』があります。
この向拝の3つの『蟇股』には、それぞれ違う意匠の『猿』の彫刻が彫られています。

『猿』は古くから日枝神社の神様のお使いとされていますので、猿の彫刻があるのですね。
※このシリーズ最初のご紹介した厳島神社の神様のお使いが『蛇』ということで、やはり向拝の蟇股に蛇が彫られています。



① 向かって左の蟇股の『猿』

彫刻の劣化もありますが、加えてカメラの性能も私の腕も悪いので(透し彫りゆえ背後の木々にピントが合ってしまい)、画像が不鮮明なので汗分かりにくいのですが、
猿が一匹向かって左(中央の方向)を向いているようです。

お猿さんは、枝らしいものぶら下がっているようにも見え、躍動感が感じられる気も。

ただし、猿よりもその両側にある植物の方が目立ちますね(^^;)。

向かって右側(猿の左側)にあるのは、根元からウェーブがかった葉が何枚も繁っていて、そこから茎が一本すっと伸びた先に、黄色っぽい実らしいものが固まってついている様子から、『万年青(おもと)の花』(文献1)と思われます。

向かって左側(猿の右側)にある植物も実の様子が似ているので万年青のようにも見えますが、葉の付き方が根元から葉が繁っている右のものとは違って、枝らしいものに葉が付き、枝の先に実がなっています。
表現方法(文献1)から、枇杷(びわ)の実か、楊桃(やまもも)の実のように思うのですが。


-----(参考)-----

ちなみに、こちらは日光東照宮の神厩にある彫刻です。有名な三猿の彫刻の向かって左にある母子の猿の彫刻です(2015年12月撮影)。

背景は造形から唐松だと思いますが、猿の下に繁る実をつけた木は枇杷とのこと(文献2)。

枇杷の葉は、葉のエッジにギザギザ(鋸歯)が彫られるのだそうです(文献1)。
筑波山神社境内の日枝神社の方は、写真からは葉のエッジの形状はよくわかりません。
枝と葉と実の付き方は、日光東照宮・神厩の母子猿の像の植物とちょっと違うような?。

・・・専門家のご意見を伺いたいところです。
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②中央の蟇股の『猿』

猿が三匹、『見ざる、言わざる、聞かざる』の三猿の彫刻です。


向かって左の猿は、口を押さえている 『言わざる』。
中央の猿は、目を覆っている 『見ざる』。
向かって右の猿は、耳を覆っている 『聞かざる』。

左右の蟇股の彫刻と違って黒っぽいモノトーンなのは、もともとそうなのか、それとも退色が進んでいるせい?

植物らしいものは見当たりませんが、猿たちの後ろに二本、うねった枝のような彫刻が見えます。
何か木の枝のようにも見えますが、判別出来ないです・・・泣

雨風に日光に晒されやすいためか、向拝の蟇股の彫刻は傷みと退色が進んでいるのが素人目にも気になります泣
そして特にこの三猿は、この日枝神社の彫刻の代表にも関わらず、こうやってみると他の彫刻より傷みが進んでいるようで心配です汗


-----(参考)----

ちなみに、こちらは日光東照宮の神厩の三猿(2015年12月撮影)。
こうやってみると、三匹の猿の並びも違いますね。

建立された年は、こちらの日枝神社(そして、春日神社、厳島神社、神橋)の方が、日光東照宮より3年ほど早いものですが、どちらも江戸初期の建物。

日光東照宮は改修を何度もしているので、彫刻の色も鮮やかです。
やはり、手をかけないと、傷んでくるのですよね・・・。


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③向かって右の蟇股の『猿』


こちらはまた一匹の猿で、こちらは向かって左(中央の方向)を見ています。
向かって右の下の方には白っぽい丸い実が二つ見えます。








よく見ると実には縦の彫り線があるのが分かります。

実の特徴と、細長い葉の形から、実が成った桃の木だと思われます。
桃もまた、古来から吉祥の意味がある植物ですよね。

丸く湾曲した桃の枝を背に、猿が座っているようです。

また、枝の『丸い』湾曲にも、何か意味がありそうに思うのは、私の考えすぎでしょうかハート

日光東照宮の神厩の、『三猿』を含む8つある猿の彫刻は、それぞれ意味があり、8つそろって一つのストーリーがあるの読めるそうです(文献2)。
筑波山神社(明治以前は、筑波山知足院中禅寺)境内の日枝神社の3つの猿の彫刻も、何かストーリーがあるのでしょうか。
(個人的にはストーリーがあるように感じます・・・。いろいろ想像してみると面白いですね!)


次回は日枝神社の向拝の奥、本殿(正面)に彫られている3つの蟇股の彫刻についてです。
『猿』ではない動物が!
お楽しみに。

絵解きに挑戦!筑波山神社境内社の装飾彫刻3 ~日枝神社(2)



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【参考文献】

1. 『図説 社寺建築の彫刻 東照宮に彫られた動植物』  高藤晴俊 著 東京美術

2. 『日光東照宮の謎』 高藤晴俊 著 講談社現代新書















  

プロフィール
かるだ もん
かるだ もん
徒然なるままに、興味のあることを気ままに書いています。好きなことばは「中途半端も、たくさん集まればいっぱい!」(ドラマのセリフ)

地元つくばや茨城の話題を中心に、茨城の食材を使った家庭料理、民俗学もどき、国際交流、旅の話題など、趣味の記事を掲載中。

特に自分の勉強も兼ねて、
★民話・伝説紹介と、それにちなむ土地めぐり
★茨城を中心に、全国の郷土料理と食材(世界の料理も含む)の話題
の話題が多いです。

・ヒッポファミリークラブ(多言語自然習得活動と国際交流)
・観光ボランティア
・郷土食研究会うまかっぺ!茨城



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